君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第二章「正真」

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 神近くんは「信じなくても良いんで、とにかくお姉さんは霊に取り憑かれています」と単刀直入に述べる。

「うーん。俄かには信じ難いし、朔矢の友達だから同類なのかしら」

 姉は困惑しつつ、腕を組む。突然そんなことを言われても、ハイそうですかとはならないだろう。ましてや姉は、僕のオカルト趣味をよくは思っていない。

「先輩と一緒にしないでください。こんなに間抜けで、馬鹿じゃありませんから。詳しいことは先輩から聞いてください」

 散々僕を卑下した神近くんは、早く済ませましょうと付け足すと姉を椅子に座らせる。

 そこで僕はハッとして「神近くん、浮気にならないの?」と慌てて聞く。

「うるさいから、黙っててください」

 神近くんはそう言って僕を牽制すると、姉に「僕をみてください」と言って始めてしまう。

 僕は神近くんとキスする姉を見たくない。自分の姉のキスシーンを見たいと思う弟がいるのだとしたら、それは特殊な人間だろう。

 神近くんが姉の背後に回ると、背を叩き始める。確か僕も背中を叩かれた後にキスをされたのだ。それならば次はキスをする流れとなる。

 僕は居心地悪げに、視線を彷徨わせていく。見ちゃいけないし、見たくもない。心臓が痛いぐらい鳴り響き、僕は思わずテーブルに寄りかかった。

「はい。終わりです。早くここから離れましょう」

 神近くんは姉と僕を促すと、そそくさと視聴覚室の扉を開く。


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