君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第三章「訪問」

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 神近くんは整頓されたキッチンで、段取り良く料理を始めていく。何もできないからと言って、それでも上げ膳据え膳でいるほど、僕は常識がない人間ではない。

 僕は神近くんに指示を仰ぎつつ、有り合せには見えないような夕飯を食卓に運んでいく。

 余り物の野菜を使った野菜炒めに、綺麗に形作られている卵焼き。白いご飯に、豆腐の味噌汁まである。

 一人暮らしをしている人間とはこうも差がつくのかと、甘え切っている生活の自分が恥ずかしくなった。

 食事を終えると、神近くんが着替えを貸してくれる。下着も新しいストックがあるからと言って、コンビニに買いに行こうかと考えていた僕を引き留める。

「今日は外には出ない方がいいです。俺がいるからって、そう何度も憑りつかれても困るんで」

 神近くんはそう言って、僕に着替えを押し付けたのだった。

 僕は先にお風呂を借りて出てくると、神近くんが交代で入りに部屋を出ていった。

 神近くんについて何か知ることができないだろうかと、僕は部屋の中を見渡していく。整理整頓されているとは言っても部屋は狭く、無駄なものが置かれていない。

 ベッドの下に収納ケースがあったけど、さすがに引っ張り出して見るわけにもいかず、僕は諦めてテレビに視線を向ける。
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