君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第五章「計画」

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 夕飯を食べているところで、神近くんが「父から連絡がありました」と切り出し、僕は思わず箸を止めた。

「なんだって?」

「いつでも来て大丈夫だそうです」

 神近くんは読めない表情のまま、ご飯を口に運んでいく。

「いつ行くの?」

「先輩はいつが良いですか?」

「すぐにでも行った方が、良いんじゃないかな」

 ずっと神近くんのお世話になるのも忍びないし、生霊と共存していくつもりもなかった。

「ここにいれば、祓う必要もないんですけど」

 なんてことない口調で神近くんが言いつつ、チラリと僕に視線を向けた。

「そうもいかないよ。僕だって家に帰らなくちゃいけないんだから」

 神近くんのご飯は美味しいし、悪態吐くけど基本的には優しい。居心地が良くないわけでもなかった。それでも、いつまでも家に帰らないわけにもいかない。

「分かりました……明後日にでも行きましょう。新幹線の予約をしておきます」

「ごめん。いろいろ迷惑かけちゃって」

「今に始まったことじゃないですから」

 ぐうの音も出ず、僕は口を噤む。迷惑ばかりで神近くんに恩を返せないのは歯がゆい。黙々と食事を進めている神近くんをちらりと見やり、僕は心の中で溜息を吐き出した。

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