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第六章「帰省」
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しおりを挟む「あっ、これ……」
僕はネットで調べて包んでおいた、玉串料と書かれた熨斗袋を差し出した。
「えっ、先輩いつの間に……」
神近くんが息を呑む気配を感じ、僕は苦笑いをする。神近くんに言ったら断ることは分かっていて、内緒で用意していたのだ。
「そんな気にすることはないよ。智代と仲良くしてくれているだけで、充分だから」
お父さんは優しく語りかけ、受け取ろうとしてくれない。
「そういうわけにはいきません。神近くんとはこれから先もずっと、死ぬまで一緒にいるつもりですが、それとこれとは話が別ですから」
僕も引くわけにはいかず、緊張で震える手で熨斗袋を差し出し続ける。
お父さんは虚をつかれた顔をした後、頬を綻ばせると「高校生なのにしっかりしてるね。お納めさせていただきます」と言って受け取った。
「そう、大事な事を言わなきゃいけないね」
そう言って再び僕たちを席に座る様に促してきた。
「良いかい? お祓いしたからって大丈夫ってわけじゃないんだ。それよりも大事なのは自分の気持ちをしっかり持つことなんだよ」
僕は素直に頷く。神近くんも祓ってくれた時に、そんなような事を言っていた気がしたので尚更だった。
「それからね、同情するのもあまりよくないよ。君は優しそうな子だから、寄り付かれやすいのかもしれないね」
確かに可哀そうとか思うのは良くないと聞いたことがあった。僕は涙もろいし、困っている人を見て放っておけないタイプであることは自覚があった。
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