君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第六章「帰省」

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 僕は本殿を見上げて、小さく息を吐く。神様の前で嘘を吐くだなんて、とんだ罰当たりだ。でも僕は、本当の神近くんが知りたかった。神近くんは自分の事を話してはくれないし、いつも言葉を濁してバリアを張り巡らしている気がする。あまり信用されていないのかもしれない。そう考えると、胸にズキッとした痛みが走った。

 僕の悄然とした気持ちとは裏腹に、すっきりと晴れ渡った空から降り注ぐ白い光が、本殿を温かく包み込んでいた。



 朝食の席で神近くんがもう一泊すると伝えると、お父さんもお母さんも「それがいい」と嬉しそうに顔を見合わせていた。

 そんな両親の様子にも、神近くんは顔色を変える事はなかった。僕はお礼を言いつつも、内心は複雑な感情が渦巻いていた。

 神近くんがまさか良いと言うとは思ってもみなかなったから、こうなると嫌でも神近くんの話を耳にすることになる。自分からそう仕向けたはずなのに、僕は本当に良かったのだろうかと今更ながら不安と後悔が頭を過っていく。

 食事を終えて片付けをしてから、僕は神近くんの部屋に向かう。神近くんは部屋の掃除をしていて、綺麗好きをここでも発揮していた。

 開け放たれた窓からぬるい風が入り込み、部屋は少し蒸し暑い。

「神近くんって、本当に綺麗好きだよね」

 僕は部屋の掃除をあまり率先してはやらない。母にどやされて仕方なく、といった感じでいつも重い腰を上げていたのだ。

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