君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第七章「虚像」

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 お昼過ぎに神近くんとお父さんが帰ってきて、すぐに家族揃って昼食を取ることになった。食欲はあまりなかったけれど、僕はなんとか食事を口に運びつつ、作り笑いでその場をやり過ごす。

 お兄さんはさっきの事などまるでなかったかのように、神近くんに学校の様子を聞いたりと楽し気だ。それに対して神近くんは、淡々とした調子で答えていく。僕はそれを横目に見つつ、内心は居たたまれない気持ちで箸を動かしていた。

 午後からはお父さんが神輿を出すから見においでと言ってくれた事もあって、僕と神近くんはお父さんの車で神社へと向かうことになった。

 二人っきりにならなかった安堵と、事実を確認したい気持ちがせめぎ合っていて、僕は必然的に口数が減ってしまう。

 静まり返っている車内で、お父さんが場を和ませようと「今日のお祭りは雨の心配はなくて良かったよ」とバッグミラー越しに笑顔を向けてきた。

「えっ……あぁ、そうですよね!」

 つい考え込んでしまっていた僕は、ワンテンポ遅れて返事をする。

「大丈夫かい? 少し顔色が悪いようだけど」

「すみません。大丈夫です」

 そう言って僕は笑みを浮かべる。隣に座る神近くんは来た時と変わらず、無言で窓の外を見つめていた。



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