君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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最終章「久遠」

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 泰明が来たところで僕は昨日、警察から聞いた話を二人に話していく。

 僕を担当した刑事いわく、女は連行される際に「あの野郎、祓いやがって!」と喚いたらしい。何のことだと警察が女に聞いても、支離滅裂で全く意味がわからず、何か分かるかと案の定聞かれてしまった。

 けど僕は、分かりませんと答えるしかなかった。この事をどう説明したら良いか分からないし、検証のしようもない。それよりも、女は生霊を飛ばした自覚があって、祓われたことも分かっていた事に衝撃を受けた。

 そのことに関して神近くんは「人を呪わば穴二つですね。女の身に何かがあったのかもしれません」と冷めた顔をするだけだった。

 女は結局、精神鑑定を受けて病院に入院させることになるかもしれないと説明された。彼女は前にも同じことをしていて前科があり、精神鑑定で不起訴にされていたらしい。今回もそうなりそうだけど、二回目ということで入院も長引くとのことだった。

 両親は納得いかないようだったけど、責任能力がないと判断されればどうすることも出来ないと、警察は渋い顔をしたようだ。

「いくら責任能力がないからって、それじゃあまた被害者が出るんじゃないのか」

 僕が話終えると、開口一番に泰明が眉を顰めて唸った。確かに出てきたときに、復讐でもされたら困る。嫌な想像が頭を巡り、ゾッとして背筋が凍りついた。

「接近禁止が出るはずなんで、次近づいてきたら警察もすぐに対応してくれると思いますよ。司法を変えるのは難しいですし、こればかりどうすることも出来ませんから」

 神近くんはそう言って、溜息を吐き出した。

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