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第十章
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しおりを挟むいつもは開け放たれている玄関は、今日はガラス戸で閉ざされている。
ガラスに映り込む長身の男の陰に、春夜の全身が強張った。
裕介には年末年始、店は休みになると伝えてある。それでもしつこい男は、もしかしたらお構い無しに訪ねてきたのかもしれなかった。
もし裕介だとしたら、どうやって追い返そうか。居留守を使おうべきなのかと悩んでいるうちにまたしても、チャイムが鳴らされる。
春夜は微かに震える足で框を降り、玄関の鍵を開ける。恐る恐る玄関の扉を開くと、そこには松原が紙袋を片手に立っていた。
「こないだ来たときに、君が体調がすぐれないからって断られたんだが……体調はもう大丈夫なのか?」
呆気に取られている春夜に、松原が落ち着かない様子で口を開く。
キミヨには来たら追い返すように頼んではいた。でもまさか、体調不良という理由をつけられているとは思ってもいなかった。
「ええ。まぁ……」
「それなら良かった」
曖昧に返事するも、松原は表情を和らげている。嘘をついていることに、罪悪感がどっと押し寄せる。
「申し訳ないんですが……昨日から休業なんです」
「知ってる。ここの支配人から聞いている」
じゃあ何故来たのかと聞く前に、松原が落ち着かない様子で言った。
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