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「そうか、もうそんな時期になるのか」
感慨深そうな声で俊政が呟く。
夕飯を終えて睦紀が席を立とうとしたところで、帰宅した俊政がリビングに顔を出した。いいタイミングだとばかりに、睦紀は俊政に結婚記念日の話を切り出したのだ。
「最近、二人とも忙しくて一緒に出かけたりできなかったので……今年は二人で祝いたいと思っているのですが――」
どうしても俊政の反応が気になってしまい、言葉尻が弱くなる。
「そうか……うん。いいんじゃないかな。家族のお祝いは別の日にすればいい」
俊政の許しが出たことで、睦紀は肩の力を抜く。断られることはないと思ってはいたが、どうしてもばつが悪かった。
「睦紀は優しいね。夫として、しっかり全うしようとしてくれている」
そう言って、俊政が睦紀の肩を叩く。
そんなことはない、と叫びたくなるのを睦紀は堪えた。夫としてちゃんとしていないせいで、涼華は愛想を尽かしているのだから。
「ところで睦紀は、お風呂にはもう入ったのかい?」
俊政の問いに、睦紀は落ちていた顔を上げた。
「たまには一緒に入ろう。背中を流してあげるよ」
「あっ……いえ、そんな……」
恐れ多くて断ろうとする睦紀に、俊政の表情が曇る。
「睦紀も嫌なのか? 春馬も嫌がるんだ……」
悲しそうに眉を下げる俊政に、「いえ、ご一緒します」と慌てて言い直す。さすがにそんな顔をされてしまっては、断ることはできない。
「ありがとう。睦紀は優しくて、素直で良い子だね」
俊政の穏やかな目元がさらに柔らかくなり、睦紀は照れくささに視線を反らす。
自分にほとんど興味のない両親から、睦紀はあまり褒められたことがない。そのせいか人から褒められると、どう反応していいのか分からなかった。
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