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リビングに入ると、すでに俊政が座って待っていた。
いつもの定位置に睦紀が腰を下ろすと、春馬が遅れて入ってくる。先程のこともあり、睦紀は向かいに腰を下ろす春馬から視線を逸した。
「それじゃあ、睦紀。話をきかせてもらおうか」
穏やかな口調で俊政が切り出すも、張り詰めたような緊張感が漂っている。
二人の視線はまるで、針のむしろのようだった。適当なことを言って、ここを切り抜けたい。そんな考えも頭をよぎったが、それでは何も状況は好転しないと思い直す。
睦紀は覚悟を決めると、ゆっくりと口を開く。
「涼華さんに、離婚して欲しいと告げました」
「それはどうしてなんだ?」
俊政は驚いた様子もなく、淡々とした口調で問いかけてくる。睦紀が予想していた通り、すでに涼華から話を聞いていたのかもしれない。
「僕はここにはいられないと思ったからです」
「私たちに抱かれたからか?」
睦紀は頷く。
「僕は……涼華さんと結婚しているにもかからず、俊政さんと春馬さん、二人と関係を持ってしまいました。いくら夫婦生活が破綻しているとはいえ、不貞を働いたことに変わりないんです。僕はこれ以上……欲に溺れたくはない」
最後が本音だった。 二人との爛れた夜は、どこまでも自分を引きずり込んでしまう。
「睦紀は私たちが嫌いかい?」
「嫌いとか……そういうことでは」
「嫌いか? と聞いているんだよ。睦紀」
やや強い口調で問う俊政に、睦紀は慌てて首を横に振る。
「……嫌いじゃないです」
「それなら別に出ていく必要はないだろう。涼華から話はもう聞いたんじゃないのか?」
「どうして……涼華さんを巻き込んでまで……」
「睦紀を篠山家の子にしたかった。それだけのことだよ。それにうちの子になりたいって、睦紀は言ってたよね?」
俊政の言葉に睦紀は、二の句が継げなくなってしまう。
確かに睦紀は篠山家の子だったら毎日楽しいだろという思いから、そう呟いた事がある。でもそれは単なる憧れであって、実際に現実になるとは思ってはいなかった。
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