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交陰遊戯―こういんゆうぎ―
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しおりを挟む「何故、蔵にこんな物が……」
天宮くんは呆気に取られ、周囲を忙しなく見回していた。
「君の為に僕が用意したのさ。随分と苦心したが良い出来栄えだと思わないかい?」
僕は頬を緩め、マッチで起こした火で蝋燭を灯していく。朱色の光が辺りを照らし出し、僕は蔵の扉を静かに閉める。
周囲が蝋燭の光だけで少々心もとないが、これから行う遊戯には好都合だ。
微かに体を震わせ唇を噛みしめる天宮くんは、少しばかし青ざめているようにも見える。
「寒いかい?」
「……いいえ」
僕は天宮くんに近づき、蝋の様に白く滑らかな頬に手を添える。
「……っ」
警戒の滲む目の色をした天宮くんは、少し体を強張らせた。久方ぶりに触れた天宮くんの肌の艶やかさに、僕はうっとりとする。
「ああ。君は本当に美しいね。僕はこの日が待ち遠しくて仕方がなかったのだよ。君もそうだろう?」
何も答えない天宮くんの唇を、僕は喰むように唇を合わせていく。柔らかな唇の感触に、抑えきれない熱が湧き上がる。片手を天宮くんの顎に、もう片手を腰に回し体を寄せる。
「ふっ……んっ……」
舌を唇の間に差入れると、舌を捕らえようと口腔を探る。遠慮がちな天宮くんの甘味な舌を絡み合わせれば、苦しげな息遣いが蔵の中を満たしていく。その扇情的で閉鎖的な空間は、やはりあの場では味わえなかっただろう。
唇を離し、濡れた瞳の天宮くんを寝台に腰掛けさせると、僕は持ってきていた手ぬぐいで天宮くんの目元を優しく覆っていく。
「何を始めるのです?」
「今までにしたことのない、取って置きの遊戯さ。君もきっと気に入る。だから良いと言うまで動いちゃ駄目だからね」
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