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『SYN-CHRONIZE シンクロ』~近い将来、絶対に起こるSFな話~
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脳にアクセスすることで、人間の記憶を映像として可視化することが可能になった近未来。
『Synchronize System –シンクロシステム-』と名称されたこの技術は、その特性から犯罪捜査に使用されることになった。
犯罪数が増加の一途を辿るこの国にとって、その技術は犯罪増加の抑止力ともなる唯一無二のシステムであった。
『Synchronize System –シンクロシステム-』は多くの事件を早期解決へと導いた。
この画期的な技術があればどんな難事件でもすぐに解決できると警察は信じていた。
しかし、犯罪捜査に『Synchronize System –シンクロシステム-』が導入されてから約一年が経ったある日、この技術を用いて逮捕した犯人の一割近くが冤罪であることが判明した。
開発者や警察は、この画期的な技術に隠された大きな欠点を見落としていたのだ。
大学生の息子が実の父親を殺害するという事件が発生した。
事件当時、家には息子と父親の二人しかいなかった。
何かが倒れたような大きな物音を聞いた息子は、自室のある二階から物音がした一階へと下りた。
すると一階にある台所で父親が首から血を流して倒れていた。
警察は何者かが自宅に侵入し父親を殺害したとして捜査を進めたが、父親が何者かと争った形跡は見つからなかった。
また、警察が駆け付けた際に玄関や窓は全て施錠されていたことから、何者かが侵入して父親を殺害したという当初の捜査方針すら疑問視されるようになった。
そこで警察は犯人の手掛かりを見つけるために『Synchronize System –シンクロシステム-』を用いて息子の記憶を見ることにした。
すると驚くことに、息子が父親の首を包丁で刺して殺害する様子が映し出されたのだ。
息子は容疑を何度も否定したが、警察は彼の記憶が動かぬ証拠だと主張し、父親殺害の容疑で息子を逮捕した。
ようやく事件は解決したと思われたが、息子が逮捕されたというニュースを見たひとりの女性が警察署へとやって来た。
そして彼女は、自分が父親を殺した犯人だと警察に自白した。
彼女は逮捕された息子の母親であり、殺された父親の元妻でもあった。
今は小さなアパートで一人暮らしをしているが、元々は殺害された父親と逮捕された息子と三人であの家に住んでおり、彼女は今もまだあの家の鍵を持っていた。
あの日、彼女は玄関から家に入ると、台所にいた父親の首を近くに置いてあった包丁で刺した。そして何事も無かったかのように家を出ると、玄関の鍵をかけて立ち去った。
長いこと住んでいた家だったため、当然どこに何があるのかも熟知していた。
犯行に要した時間は僅か一分足らずであった。
警察は『Synchronize System –シンクロシステム-』を用いて彼女の記憶を見た。
するとモニターには彼女が父親を殺害する様子が、息子の時よりも詳細かつ鮮明に映し出された。
そこで警察はようやくこの技術の欠点に気付いたのだ。
いや、正確にいえば欠点があるのはこの技術ではなく、人間の記憶の方であった。
“実際に起きた出来事だけが記憶として残るわけではない”という事実を、開発者や警察は見落としていたのだ。
『“事実”も“想像”も、すべては記憶になる。しかし、それが“事実”なのか“想像”なのかは本人にしか分からない』
『Synchronize System –シンクロシステム-』を使用する際に、警察が息子に対してどのような説明を行ったのかは明らかになっていない。
事前の取り調べの際に、警察が息子に何かしらの圧をかけた可能性もある。
もしくは、「君が無実だと証明するためにも、協力してくれないか?」と優しい言葉を掛けたのかもしれない。
どのような経緯があったにせよ、重要なのはそこではない。
今回の冤罪事件において最も重要なのは、『自分が犯人だと疑われている可能性がある』ことを息子に想像させてしまった点である。
そうなれば息子は嫌でも自分が父親を殺害する場面を想像してしまう。
見慣れた自宅で、料理の際によく使っている包丁で、実の父親の首を刺して殺す。
皮肉なことに相手との関係が親しければ親しいほど、その想像はよりリアリティを増すだろう。
これは息子による“想像上の記憶”であるが、映像を見た刑事たちはそれを“事実上の記憶”だと断定した。
その結果、今回のような冤罪事件が発生したのだ。
その記憶は果たして“事実”なのか、それとも“想像”なのか。
それは記憶の持ち主である本人にしか分からない。
『Synchronize System –シンクロシステム-』と名称されたこの技術は、その特性から犯罪捜査に使用されることになった。
犯罪数が増加の一途を辿るこの国にとって、その技術は犯罪増加の抑止力ともなる唯一無二のシステムであった。
『Synchronize System –シンクロシステム-』は多くの事件を早期解決へと導いた。
この画期的な技術があればどんな難事件でもすぐに解決できると警察は信じていた。
しかし、犯罪捜査に『Synchronize System –シンクロシステム-』が導入されてから約一年が経ったある日、この技術を用いて逮捕した犯人の一割近くが冤罪であることが判明した。
開発者や警察は、この画期的な技術に隠された大きな欠点を見落としていたのだ。
大学生の息子が実の父親を殺害するという事件が発生した。
事件当時、家には息子と父親の二人しかいなかった。
何かが倒れたような大きな物音を聞いた息子は、自室のある二階から物音がした一階へと下りた。
すると一階にある台所で父親が首から血を流して倒れていた。
警察は何者かが自宅に侵入し父親を殺害したとして捜査を進めたが、父親が何者かと争った形跡は見つからなかった。
また、警察が駆け付けた際に玄関や窓は全て施錠されていたことから、何者かが侵入して父親を殺害したという当初の捜査方針すら疑問視されるようになった。
そこで警察は犯人の手掛かりを見つけるために『Synchronize System –シンクロシステム-』を用いて息子の記憶を見ることにした。
すると驚くことに、息子が父親の首を包丁で刺して殺害する様子が映し出されたのだ。
息子は容疑を何度も否定したが、警察は彼の記憶が動かぬ証拠だと主張し、父親殺害の容疑で息子を逮捕した。
ようやく事件は解決したと思われたが、息子が逮捕されたというニュースを見たひとりの女性が警察署へとやって来た。
そして彼女は、自分が父親を殺した犯人だと警察に自白した。
彼女は逮捕された息子の母親であり、殺された父親の元妻でもあった。
今は小さなアパートで一人暮らしをしているが、元々は殺害された父親と逮捕された息子と三人であの家に住んでおり、彼女は今もまだあの家の鍵を持っていた。
あの日、彼女は玄関から家に入ると、台所にいた父親の首を近くに置いてあった包丁で刺した。そして何事も無かったかのように家を出ると、玄関の鍵をかけて立ち去った。
長いこと住んでいた家だったため、当然どこに何があるのかも熟知していた。
犯行に要した時間は僅か一分足らずであった。
警察は『Synchronize System –シンクロシステム-』を用いて彼女の記憶を見た。
するとモニターには彼女が父親を殺害する様子が、息子の時よりも詳細かつ鮮明に映し出された。
そこで警察はようやくこの技術の欠点に気付いたのだ。
いや、正確にいえば欠点があるのはこの技術ではなく、人間の記憶の方であった。
“実際に起きた出来事だけが記憶として残るわけではない”という事実を、開発者や警察は見落としていたのだ。
『“事実”も“想像”も、すべては記憶になる。しかし、それが“事実”なのか“想像”なのかは本人にしか分からない』
『Synchronize System –シンクロシステム-』を使用する際に、警察が息子に対してどのような説明を行ったのかは明らかになっていない。
事前の取り調べの際に、警察が息子に何かしらの圧をかけた可能性もある。
もしくは、「君が無実だと証明するためにも、協力してくれないか?」と優しい言葉を掛けたのかもしれない。
どのような経緯があったにせよ、重要なのはそこではない。
今回の冤罪事件において最も重要なのは、『自分が犯人だと疑われている可能性がある』ことを息子に想像させてしまった点である。
そうなれば息子は嫌でも自分が父親を殺害する場面を想像してしまう。
見慣れた自宅で、料理の際によく使っている包丁で、実の父親の首を刺して殺す。
皮肉なことに相手との関係が親しければ親しいほど、その想像はよりリアリティを増すだろう。
これは息子による“想像上の記憶”であるが、映像を見た刑事たちはそれを“事実上の記憶”だと断定した。
その結果、今回のような冤罪事件が発生したのだ。
その記憶は果たして“事実”なのか、それとも“想像”なのか。
それは記憶の持ち主である本人にしか分からない。
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