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~Hatter~
しおりを挟む背の高い帽子を被った男は城の裏に広がるウェルズの森の奥にある屋敷へと少女を案内した。
屋敷の中に入ると頭に丸い耳が二つ、お尻から細い尻尾が生えた男はそそくさと何処かへ消えた。
少女は周囲を見渡すと屋敷の壁の至るところに様々な帽子が掛けてあり、窓から見える庭には帽子の形をした植木まであった。
男はエントランスホールを真っすぐ抜け、長テーブルと椅子が置かれた中庭へと入った。
「さあ、どうぞ」
背の高い帽子を被った男は椅子を引き、少女にそう言うと少女は素直に席についた。
「…それでどうして私を助けたの?」
背の高い帽子を被った男は対面の席に着いた。
「理由はない、あの女王がする処刑のように」
「どういうこと?」
「女王は自分の欲望を叶えるために自らの罪を他人に擦り付ける…」
「そう、でもそんなことしていて国民は何とも言わないの?」
「実質的な恐怖政治、だがそれも君が現れてくれたからそれが変わるだろう」
背の高い帽子を被った男の意味深な言葉に少女は疑問も持ったが敢えて訊ねなかった。
そこへ頭に丸い耳が二つ、お尻から細い尻尾が生えた男がティーセットを台車に乗せてやって来た。
「旦那、お客で…」
「…見つけた」
純白のドレスを着た純白の長髪の少女が現れた。
「まったくタイミングの悪い」
背の高い帽子を被った男はそう言うと純白の長髪の少女は長テーブルに飛び乗り、黒髪の少女に向かって駆けていく。
少女は駆けながら首の硝子の白い薔薇がついたチョーカーから純白の剣を取り出した。
そして、黒髪の少女に切り掛かった。
黒髪の少女は咄嗟に手首のブレスレットから大鎌を出して純白の剣を弾いた。
「ブラスタルを渡しなさい!」
「ブラスタル、あの老人が言ってた」
黒髪の少女は思った。
「それを大人しく渡すなら命だけは取らないであげるわ」
純白の長髪の少女は剣でブレスレットの黒い薔薇を示した。
「まったく矛盾した言葉だね」
「ハッター、邪魔する気?」
「そんなつもりはないが、ここで暴れられて屋敷を壊されてはかわないからな」
背の高い帽子を被った男、ハッターはホルスターから銃を抜いて純白の長髪の少女に向けた。
「やるなら自分の領域でやってくれないかな?」
「……分かったわ」
しばらくの沈黙の後に答えると剣は純白の光の粒となり、チョーカーの薔薇へと消えた。
黒髪の少女はその様子を見終えると同じようにブレスレットの薔薇に大鎌を納めた。
純白の長髪の少女は何も言わずに入って来た方向へと立ち去る。
「…詳しい話聞けるわよね?」
改めてハッターと黒髪の少女は席についた。
「彼女はその純白の容姿からブランネージュと呼ばれている、そこから言うと君の名前はノワールと言った所かな」
「名前なんてどうでもいい」
「名前は大事だ、その存在を表すものだからね、この世界では特に」
「分かったわ」
黒髪の少女、ノワールは勝手にすればと言わんばかりに投げやりな返事をした。
「それより、続き…」
「急かさなくても説明する………彼女は君と同じ存在で同様にブラスタルを集めるように強いられた仲間であり敵さ」
「どう考えても仲間ではないみたいだけど」
ノワールはそう呟くと椅子から立ち上がった。
「それでブランネージュは何処にいるの?」
「この森の奥にある塔の頂にいる」
ノワールは庭から出て行った。
「旦那、教え過ぎじゃ」
頭に丸い耳が二つ、お尻から細い尻尾が生えた男が紅茶の入ったカップをテーブルに置いて言った。
「それが筋書きだ、全ては一人の思惑で動いているだけで彼女達以外はただの駒に過ぎない」
ハッターはそう言うと少し黙り込み、紅茶を飲みながら思った。
「いや、彼女達も彼の駒に過ぎないのかもしれないな」
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