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~Black and White~
しおりを挟むノワールはエペに向かって大鎌を指し示している。
「ふっ…ふふふ…あははは…」
エペは突然、笑い出した。
「恐怖のあまり、気でも可笑しくなったの?」
「…恐怖?そんなものこんな世界で感じるとでも?」
エペは半分笑いながら言った。
「この世界での振る舞い方を思い出したようだが、肝心なことは何も知らないんだな、黒のアリスは…」
「…話してやろう、アリスという人形の話を」
「人形?」
「この世界はある男によって造られた。お前も知っているだろう?ブックメーカーという人物を、ブックメーカーは此処とは別の世界で腕のいい人形技師だった。
ある時ブックメーカーはとある富豪の仕事を請け負い、最高傑作というほどの美しい一体の人形を造り上げた。
そして、富豪に人形を受け渡す時には完全にブックメーカーは人形に魅せられていた。
ブックメーカーは富豪を刺し、人形を連れて逃げた。しかし、富豪はすぐに追っ手を放った。
だが、追っ手が見つけた頃にはブックメーカーは血塗れになり、死んでいた。その傍には人形の姿はなく一冊の本があった。
富豪は金に糸目をつけず人形を探したが見つからなかった。
さて、人形は何処に行ったのだろうね」
「そんなこと知らないわ、それで何が言いたいわけ?」
「つまり、人形はこの世界にあり、この世界はその人形の魂を選別する為にあるということだ」
「そう、貴重な情報をありがとう…」
ノワールは大鎌の刃をエペの首元に当てた。
「どの道、俺の役目は此処で終わりだ」
「今の話には疑問点がいくつかあるわ」
「………」
「一つはブックメーカーと呼ばれる人物は誰に殺されたか、二つ目は人形技師だというのにブックメーカーという名前、人形技師なのだからドールメーカーと呼ぶのが普通」
「…なるほどな、察しはいいようだな…一つ目に関しては自らが行き着く先に答えはある、二つ目はこの世界にその人物の意思が強く反映されている、それ故にブックメーカー………」
「………どうやら時間切れだな………」
エペの胸を白き剣が貫いた。
「沈黙は金だというのに色に似合わず、べらべらと口が回るわね」
ノワールが声の方を振り向くと灰色の猫を抱える白一色の服を纏った人物が立っていた。
「へぇ~生きていたのね、ブラン」
「もう気付いているはず、私と貴女の関係性を」
「黒と白の対称色」
「そう、わたしとあなたはコインの表と裏のように表裏一体」
ブランは左手で空を手繰り寄せる仕草をするとエペに突き刺さった白き剣が引き抜かれ、ブランの左手に収まるとエペの体は砂金となり、金のブラスタルが残された。
「…それで、あなたはいくつ集めたのかしら?血の結晶(ブラスタル)を」
「それを言った所で何の意味があるわけ?」
「そうね…」
ブランは灰色の猫を地面にそっと寝かせた。
「全てのブラスタルは私のもの」
二人は声を揃えるように言うと互いに駆け出し、互いの武器が交わる。
互いに武器を突き合わせながら時計回りに少しずつ移動する。
そして、互いの位置関係が反転したころ、二人は後ろへと弾き飛んだ。
「さすがに力技では互角のようね」
ブランは足元にある金のブラスタルを拾い上げた。
「血は血で我が身に」
ブランはブラスタルを強く握る。するとブランの手から血が流れ出た。そして、ブランはさらに力を入れてブラスタルを粉砕した。
粉砕されたブラスタルの細かな結晶は血に混ざり、ブランの血を金に染める。
ブランは金の血を流した手に白い剣を持ち変えると剣は白金に染まり、血は剣に溶け込むように消えた。
「さて、これで均衡崩れ、私の力が上回ったわけだけど」
「ただ力を取り込んだだけでなぜそう言えるの?」
「当たり前じゃない、この輝きを見れば誰しもわかる」
「僕にはわからないでござる…いや、わからないな」
部屋の陰から声が聞こえた。
「わからないならその身で知りなさい」
ブランは剣を振るい、白金の斬撃を飛ばす。
しかし、斬撃は何の衝撃もなく部屋の陰へと消え去る。
「君達が知ってる事実は真実なのか…」
商人アナグマが姿を表す。
「さて、お立ち会い…」
アナグマは背負った荷を降ろし、被さる布を剥ぎ取ると結晶に閉じられた美しき人形が露になった。
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