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シオン

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32 失われた場所

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ノワールは気が付くと教会の壁が自分に向かって倒れて来ていた。



だが、幾本の矢が倒れて来ていた教会の壁を円形に貫き、ノワールが矢で貫いた穴にすっぽり入るように壁が倒れた。



「あっありがとう」



ノワールは驚きながら弓を構えるジョーヌにお礼を言った。



「あ~ぁ、教会が…



ノブレスが半壊した教会の中の惨状を眺めながら言った。



「命があるだけ、ましでしょ」



「それはそうなんだが…」



ノブレスは瓦礫を避けながらノワールへと近付くと言った。



「どうやら記憶の一部が戻ったようだね」



ノブレスはノワールに顔を寄せて呟いた。



「どうしてそれを?」



「あれだけ無防備に立ち尽くしていれば分かる、私でも君を殺せそうでしたよ」



ノブレスは冗談を言うとジョーヌと一緒に半壊した教会から出て行った。



「本当にそこが知れない神父ね」



ノブレス達のあと次いでノワールも出て行った。







外では微かに冷ややかな空気と地面に霜がついた草花が残されていた。



「外も大変だったみたいね」



「それはないでしょう、彼女は…」



ノブレスはそこまで言うと言葉を濁すとアリアはじとっとした視線で見つめており、心の中で続けた。



「おっとこれは言ってはいけないのでしたね」



「早く此処から離れた方がいいわ」



アリアがそう言うとノブレスは賛同した。



「そうですね、此処に居てはまたいつ彼らが来るかわかりませんから」



「だ、だとしても何処に」



ジョーヌはいつもの調子で吃りながら聞いた。



「そうですねぇ…」



ノブレスは少し考えると答えた。



「では、中へ戻りましょう」



「中って何処かへ移動するんじゃないの?」



「話は後でとりあえず中へ」



ノブレスはノワールの言葉に詳しくは話さず、教会の中へと皆を案内した。







ノブレスは瓦礫だらけで崩壊した壁から光が差し込む教会の講堂の中に入ると俯きながら度々しゃがんでは地面に何かを刻み、講堂内を一通り一巡りして瓦礫や損壊の少ない祭壇の辺りに立った。



「皆さんはとりあえず私の傍へ、そうでないと危険ですから」



ノブレスは含み笑いでそう言うとアリアとレギオス、ジョーヌは素直に歩みを進めたがノワールは言った。



「危険って何をする気?」



「エリス、皆さんを私の傍に」



「は、はい」



ジョーヌはノワールの腕を掴み、強引にノブレスの連れて行った。



「時を統べる神、ケルクの加護を得て、力を行使せよ」



硬貨を懐から一枚、取り出すとその硬貨を親指で弾き、講堂の中央に飛ばした。



硬貨は地面で数回弾み、動きを止めると何処からともなく鐘の音が鳴り響いた。



鐘の音は次第に鈍くなり、音が逆行すると瓦礫が時を遡るように損壊した箇所へと戻っていく。そして、教会は元の姿を取り戻した。



「これでもう彼らは此処に来ることは出来ない」



「何をしたの?」



「この場所を世界から切り離したのですよ」



「本当、貴方は何者?」



「ただの神父ですよ」



「ただの神父が世界に干渉するようなことができるはずがないじゃない」



「全ては神の御業ということで…」



ノブレスは多くは語らず、講堂の部屋などがある出口に歩みを進めた。



「ちょっとそれって説明になってないわよ」



「いずれ記憶が甦れば分かりますよ…それと教会の外には出ないで下さい、戻れなくなる可能性がありますから」



そう言い残し、ノブレスは講堂から出て行った。



「レギオス」



アリアはノブレスの言葉を守らずにレギオスを連れて、教会の外へと出て行った。



「まったく」



ノワールは外の様子が気になり、アリア達の後に続いて外に出た。



外の様子は全く別のものに変わっていた。影のような枯木の木々が並び、その奥には常に何かが蠢いていた。



「何なのあれ、気持ち悪い…」



「人の情念」



アリアはそう言うとレギオスと共に教会の中に戻って行った。



ノワールも戻ろうと教会の扉の前の石造りの階段まで来たところで突然、足が動かなくなった。



「なに?」



ノワールは足元に目をやると地面から青白い手が出ていて足首を掴んでいた。



「何なのよ、これ」



ノワールは振り放そうと力一杯持ち上げようとしたがびくともせず、次第に足が沈み始め、青白い手によって地面へ引きずり込まれていく。



そして、背後には影のような枯木の木々の奥にいた蠢いていたものがノワールを飲み込もうと覆いかぶさってきていた。



「次から次へと…」



ノワールは倒れ込み、藻掻いていると突然、奇声と共に身に起きていた事象が消え去った。



「言ったはずですよ…」



ノブレスの声が聞こえた。



「…危険だと」



ノワールは顔を上げるとノワールの手を掴むノブレスが居た。



「ごめんなさい」



ノワールは素直に謝った。



「まあ、いいでしょう、貴女のそんな表情はあまり見れませんから」



ノブレスはそう言いながらノワールの手を引っ張り上げ、立たせた。



ノワールは衣服に付いた土埃を払った。



「それであれらはどういうものなの?」



「そうですね…此処は危険ですから私の部屋で話しましょう」



ノワールとノブレスは教会の中へと入った。

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