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19 12歳 at 奴隷商
「ここがゲスマン皇国か…」
「随分埃っぽい街ですね。ここが本当に王都なのですか?」
「クラレンス王国は王都の中心だけは恐ろしく綺麗だからね」
あれだけ聖女や攻略者たちがバトルに巻き込まれる割には、さすが乙女ゲー。学院を中心にしたクラレンス王都の貴族街はいかにも映えそうなキラキラした光景ばかりだ。
退廃地区のあの状況を思い返せば、アーニーの怒りや絶望も分かるというもの。狂魔力の持ち主である僕の扱いだって散々だったしね。設定だけは意外とバイオレンスなんだよね。このゲーム。
「クラレンス王国の光と影か…。その点ここゲスマンはどこもかしこもが雑多で野蛮だ」
一貫性があるといえなくもない。
「ところで奴隷は他国の人間にも買えるんだよね?」
「ええそのはずです。人手を安く求める他国の貴族や商家なども買っていくようですよ。寝床と食事さえ与えれば給金は必要ない。やれやれ。人道をさほど気に留めないものはどこにでも居ますから」
「嘆かわしいな…」
イメージ的には昔の中東みたいなこのゲスマン皇国。ヨーロッパ的なクラレンス王国とはとても対照的だ。その文化や常識までも。
でもそれがこの国のやり方なら郷に入らば郷に従え。否定から相互理解は生まれない。
どうしたってここで奴隷は合法なんだし、認可された奴隷はそれなりの(ほんとうにそれなりの)扱いは受けられる。
少なくとも売り払われた先で、飢えて死ぬ、なんてことにはならないのだ。王国のスラムよりマシかも知れない。自由はないけど。
問題は無認可の闇奴隷商…
狩りにより無理やり連れてきた獣人たち…、または攫って連れてきた美女や美少女、時々美少年。
そう言った人たちが隷属印を刻まれ、心を殺されたまま法外な値段で売られていくのだ。絶対許せない…!
だがそこへたどり着くにはそれなりに金払いの良い姿を先ずは見せておかねばならない。前世もここでもこの手の店とは大っぴらに営業などしない。太客と思わせてこそ、初めてどこからともなくお声がかかる。「お客さんにだけ特別に…」ってね。
そこでまず僕たちは普通の奴隷商へ行く事にした。普通の奴隷商…字面がおかしいな、ごく一般的な日本人だった僕からすると実に変な気分だ。
今回同行したのは武闘派の騎士たち四名。炎の騎士マラジー、土の騎士リマール、風の騎士ダノワ、そして水の騎士ロジェ。
少数遠征の場合、基本四属性の騎士でチームを組むのがクラレンス王国の定石だ。
ダノワいわく、彼らは今回の遠征切符を熾烈な争いの中もぎ取った勝者なんだとか。実に勇ましくていいじゃないか。荒々しそうなこの国への同行にぴったりだ。
「とっても頼りにしてるからね。何があっても僕を守ってくれる?なーんty」
ズイ!「当然ですともレジー様。この俺にすべてお任せください!」
ドン!「レジー様の為ならこの命幾つだって投げ出しましょう!」
グイ!「見て下さいこの筋肉!レジー様の為に日夜鍛えているんですよ!」
ベシ!「指一本触れさせるものですか!」
お、おう…
街で一番大きいと言われる奴隷商。敷地内はいくつかの石で出来た建物に分かれていた。
内部は思ったよりも清潔で、それをぽろっと口にすると、「顧客は皆富裕層ばかりだから気を付けている」といった返事が返って来た。なるほど。さすが優良店。
見たところ棟ごとに特色が現れている。
西の棟は犯罪奴隷。どことなく漂う雰囲気が荒んでいる気がする。
そして東の棟は労働奴隷。ここは比較的普通の空気感だ。見た事無いけどタコ部屋ってこんな感じだろうか?
そして北の棟はそのどちらでもない。借金のカタに連れてこられた者や親に売られた少年たちだ…。何故少女がいないかって?……売られる先が違うんだろう…、嘆かわしい…
「悲壮感の無い東の棟は別にいいかな。とりあえず北の棟を見せてくれる?子供が奴隷って…ちょっと見過ごせない」
「ハミルトンのお坊ちゃまにお仕えするのにちょうどいい年頃の子供が何人も揃っておりますのでどうぞゆっくりお選びください」
子供たちを全員引き上げたところでどうせまたここには新たな子供が売られてくる。そうは思っても見てしまった以上素通りは…素通りは…うぅ…
結局そこに居た15人全員を引き上げることにした。
思えば僕は犬を貰いに保健所へ行ったはずが猫と保護されてたフクロウまで連れ帰って母親から盛大に呆れられた前科持ち…
いやいい!成長期の彼らはすぐ育つ!むしろ人材中の人材じゃないかっ!
一人そう納得している最中、どこからか聞こえてくる必死の声。
「お坊ちゃん!どうか!どうか先生をお助け下さい!」
「先生はこんなところで売られていいお方ではないんです!」
「お願いです!どうか先生だけでも!ぼっちゃーん!」
「ぼ…、あー…、店主、彼らは?」
「ああ、あれは…」
中央に所在なくへたり込む一人のメガネ。それを取り囲む三人の取り巻き。ここでは珍しい光景だ。
店主が言うには三日ほど前に連れてこられた薬師とその弟子たちで、彼は新しいポーションを作ろうと借金を重ね、あげく失敗したのだとか。
普通なら自業自得…って思うとこなんだけど…
「違う!先生は騙されたんだ!あいつは甘い言葉で散々先生に金を貸しておきながら、新発明の新しいポーションが出来上がるとその借金を利子含めて今すぐ返せと無理難題を言い出したんだ!」
「それに利子はいつの間にか改変されていてとんでもない暴利になってたんですよ!」
「期日までに金子を用意できなかった先生はここに連れてこられて…あげくレシピは奪われてしまったんです…うぅ…」
「それはわかったけど…、借金のカタは先生だけだよね?どうしてあなた方まで…」
「先生を独りでこんなところに来させるなんてできませんから!」
肝腎の先生は膝を抱えて一人雨雲を背負ってるけどね。
でも口々に届けられる先生への想い。こんなに愛弟子に慕われるなんて、きっと彼はとてもいい師匠なんだろう。
じゃなきゃ、普通一緒に奴隷商までついてこようとするか?
「ちなみにどういったポーションを発明したの?」
「一時的に目と髪の色を変えるポーションです」
おおー!擬態のポーション!確かに今まで聞いたこと無いな!天才か?
レアに目が無いのがゲーマーである。
「店主!彼ら四人も連れて帰る。契約書を!」
湧き上がる歓声。ウエストエンドに薬局…。うん、必要だ!
「思いがけない掘り出し物…い、一応西の犯罪奴隷も見るだけ見ていこうかな」
「はいはい、喜んで」
ここまですでに19人を買い入れている僕に店主の手は擦ったり揉んだり忙しそうだ。その目尻も極限まで下がっている。
そろそろくるだろうか…?
「ところで坊ちゃまは珍しいペットなどに興味はお有りで?」
キター!!!
「意味深だね?どういうこと?」
「ここだけの話ですがね、私の知り合いがちょっとばかり表に出ない奴隷を取り扱っておりましてね。興味があれば明日にでも案内しますが…いかがです?」
「…頼もうか」
いやー、子供だからってスルーされたらどうしようかと思ったよ。やれやれ、これで一安心だ。おやあれは…?
薄暗い独房の中で少年が鎖に繋がれている。
少年は何もない闇を微動だにせずじっと見つめて…、あ、こっち見た。
キレイなオレンジの瞳…。前世で飼ってたフクロウと同じ色。見た感じ十四から十五ぐらいかな…。あんなに若いのに犯罪奴隷か…、それも独房。一体何をやったのやら。
そんなことを考えながら僕は19人の奴隷を買い上げ早々にその場所を引き上げた。
「随分埃っぽい街ですね。ここが本当に王都なのですか?」
「クラレンス王国は王都の中心だけは恐ろしく綺麗だからね」
あれだけ聖女や攻略者たちがバトルに巻き込まれる割には、さすが乙女ゲー。学院を中心にしたクラレンス王都の貴族街はいかにも映えそうなキラキラした光景ばかりだ。
退廃地区のあの状況を思い返せば、アーニーの怒りや絶望も分かるというもの。狂魔力の持ち主である僕の扱いだって散々だったしね。設定だけは意外とバイオレンスなんだよね。このゲーム。
「クラレンス王国の光と影か…。その点ここゲスマンはどこもかしこもが雑多で野蛮だ」
一貫性があるといえなくもない。
「ところで奴隷は他国の人間にも買えるんだよね?」
「ええそのはずです。人手を安く求める他国の貴族や商家なども買っていくようですよ。寝床と食事さえ与えれば給金は必要ない。やれやれ。人道をさほど気に留めないものはどこにでも居ますから」
「嘆かわしいな…」
イメージ的には昔の中東みたいなこのゲスマン皇国。ヨーロッパ的なクラレンス王国とはとても対照的だ。その文化や常識までも。
でもそれがこの国のやり方なら郷に入らば郷に従え。否定から相互理解は生まれない。
どうしたってここで奴隷は合法なんだし、認可された奴隷はそれなりの(ほんとうにそれなりの)扱いは受けられる。
少なくとも売り払われた先で、飢えて死ぬ、なんてことにはならないのだ。王国のスラムよりマシかも知れない。自由はないけど。
問題は無認可の闇奴隷商…
狩りにより無理やり連れてきた獣人たち…、または攫って連れてきた美女や美少女、時々美少年。
そう言った人たちが隷属印を刻まれ、心を殺されたまま法外な値段で売られていくのだ。絶対許せない…!
だがそこへたどり着くにはそれなりに金払いの良い姿を先ずは見せておかねばならない。前世もここでもこの手の店とは大っぴらに営業などしない。太客と思わせてこそ、初めてどこからともなくお声がかかる。「お客さんにだけ特別に…」ってね。
そこでまず僕たちは普通の奴隷商へ行く事にした。普通の奴隷商…字面がおかしいな、ごく一般的な日本人だった僕からすると実に変な気分だ。
今回同行したのは武闘派の騎士たち四名。炎の騎士マラジー、土の騎士リマール、風の騎士ダノワ、そして水の騎士ロジェ。
少数遠征の場合、基本四属性の騎士でチームを組むのがクラレンス王国の定石だ。
ダノワいわく、彼らは今回の遠征切符を熾烈な争いの中もぎ取った勝者なんだとか。実に勇ましくていいじゃないか。荒々しそうなこの国への同行にぴったりだ。
「とっても頼りにしてるからね。何があっても僕を守ってくれる?なーんty」
ズイ!「当然ですともレジー様。この俺にすべてお任せください!」
ドン!「レジー様の為ならこの命幾つだって投げ出しましょう!」
グイ!「見て下さいこの筋肉!レジー様の為に日夜鍛えているんですよ!」
ベシ!「指一本触れさせるものですか!」
お、おう…
街で一番大きいと言われる奴隷商。敷地内はいくつかの石で出来た建物に分かれていた。
内部は思ったよりも清潔で、それをぽろっと口にすると、「顧客は皆富裕層ばかりだから気を付けている」といった返事が返って来た。なるほど。さすが優良店。
見たところ棟ごとに特色が現れている。
西の棟は犯罪奴隷。どことなく漂う雰囲気が荒んでいる気がする。
そして東の棟は労働奴隷。ここは比較的普通の空気感だ。見た事無いけどタコ部屋ってこんな感じだろうか?
そして北の棟はそのどちらでもない。借金のカタに連れてこられた者や親に売られた少年たちだ…。何故少女がいないかって?……売られる先が違うんだろう…、嘆かわしい…
「悲壮感の無い東の棟は別にいいかな。とりあえず北の棟を見せてくれる?子供が奴隷って…ちょっと見過ごせない」
「ハミルトンのお坊ちゃまにお仕えするのにちょうどいい年頃の子供が何人も揃っておりますのでどうぞゆっくりお選びください」
子供たちを全員引き上げたところでどうせまたここには新たな子供が売られてくる。そうは思っても見てしまった以上素通りは…素通りは…うぅ…
結局そこに居た15人全員を引き上げることにした。
思えば僕は犬を貰いに保健所へ行ったはずが猫と保護されてたフクロウまで連れ帰って母親から盛大に呆れられた前科持ち…
いやいい!成長期の彼らはすぐ育つ!むしろ人材中の人材じゃないかっ!
一人そう納得している最中、どこからか聞こえてくる必死の声。
「お坊ちゃん!どうか!どうか先生をお助け下さい!」
「先生はこんなところで売られていいお方ではないんです!」
「お願いです!どうか先生だけでも!ぼっちゃーん!」
「ぼ…、あー…、店主、彼らは?」
「ああ、あれは…」
中央に所在なくへたり込む一人のメガネ。それを取り囲む三人の取り巻き。ここでは珍しい光景だ。
店主が言うには三日ほど前に連れてこられた薬師とその弟子たちで、彼は新しいポーションを作ろうと借金を重ね、あげく失敗したのだとか。
普通なら自業自得…って思うとこなんだけど…
「違う!先生は騙されたんだ!あいつは甘い言葉で散々先生に金を貸しておきながら、新発明の新しいポーションが出来上がるとその借金を利子含めて今すぐ返せと無理難題を言い出したんだ!」
「それに利子はいつの間にか改変されていてとんでもない暴利になってたんですよ!」
「期日までに金子を用意できなかった先生はここに連れてこられて…あげくレシピは奪われてしまったんです…うぅ…」
「それはわかったけど…、借金のカタは先生だけだよね?どうしてあなた方まで…」
「先生を独りでこんなところに来させるなんてできませんから!」
肝腎の先生は膝を抱えて一人雨雲を背負ってるけどね。
でも口々に届けられる先生への想い。こんなに愛弟子に慕われるなんて、きっと彼はとてもいい師匠なんだろう。
じゃなきゃ、普通一緒に奴隷商までついてこようとするか?
「ちなみにどういったポーションを発明したの?」
「一時的に目と髪の色を変えるポーションです」
おおー!擬態のポーション!確かに今まで聞いたこと無いな!天才か?
レアに目が無いのがゲーマーである。
「店主!彼ら四人も連れて帰る。契約書を!」
湧き上がる歓声。ウエストエンドに薬局…。うん、必要だ!
「思いがけない掘り出し物…い、一応西の犯罪奴隷も見るだけ見ていこうかな」
「はいはい、喜んで」
ここまですでに19人を買い入れている僕に店主の手は擦ったり揉んだり忙しそうだ。その目尻も極限まで下がっている。
そろそろくるだろうか…?
「ところで坊ちゃまは珍しいペットなどに興味はお有りで?」
キター!!!
「意味深だね?どういうこと?」
「ここだけの話ですがね、私の知り合いがちょっとばかり表に出ない奴隷を取り扱っておりましてね。興味があれば明日にでも案内しますが…いかがです?」
「…頼もうか」
いやー、子供だからってスルーされたらどうしようかと思ったよ。やれやれ、これで一安心だ。おやあれは…?
薄暗い独房の中で少年が鎖に繋がれている。
少年は何もない闇を微動だにせずじっと見つめて…、あ、こっち見た。
キレイなオレンジの瞳…。前世で飼ってたフクロウと同じ色。見た感じ十四から十五ぐらいかな…。あんなに若いのに犯罪奴隷か…、それも独房。一体何をやったのやら。
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