街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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38 13歳 get out エトゥーリア

参った…。誤解を解くのにかなりかかっちゃったよ…。いやぁ…、言葉選びって大切だね?

僕がシュバルツ、彼らの言うシュトバルツ侯爵の遺言で、彼の弟をトラキアに居る彼の知人の元に送り届ける、という胡散臭い説明をすると彼は真剣な面持ちでこう言った。

「私もトラキアへ連れて行ってはもらえませんか。私は幼少の頃先代の当主に拾われ長年クーデンホーフ家にお仕えしてきた天涯孤独の身。給金など要りません。ただどうか最後までパウル様に仕えさせていただきたい。でなければ亡くなられたヨアヒム様、そしてシュトバルツ様にどんな顔でお会いすればいいのか!」

…彼は覚悟を決めているのだ…。全てはあの世で再び主人に仕えるため。決して己の忠義は曲げないという強い覚悟だ。


「分かった。一緒に行こう」


初めて会うパウルは青白い顔の痩せ細った少年で…、焦点の合わないその瞳から精気は感じられなかった。

力の入らない少年はヴォルフの背中に乗せてもぐったりと身体を預けている。落ちないように固定するとヴォルフは少し顔を歪めた。

荷物らしい荷物はとうに無いのだ。それでも元執事、カーン氏は、せめてもの礼とばかりになけなしのエトゥーリア銀貨をベッドに並べる。
義理難い人だ…。そうだ。全部ここに置いて行けばいい。どうせそのエトゥーリア銀貨はもう必要なくなるんだから。


闇夜に紛れ移動を始めた僕らの背後には不穏な気配。3…5、…6人…何者だ?

「奴らは恐らくパウル様につけられた密偵でしょう」
「密偵?何故?パウルはもう何の脅威にもならないじゃないか!」

「芽は小さくとも積んでおくのが悪党の流儀だ。どこでそれが危険分子になるか分からんからな」

「だからってこんな人数で…そっか、でっかいオオカミが居るからか…。じゃぁ責任とって僕が何とか…おっと」

先に来ちゃったよ。

「おいおい、その死にぞこないを一体どこへ連れてこうってんだ」
「ガキの周りをちょろちょろしやがって…、今さら助け出そうなんて甘ぇんだよ!」
「大人しくそいつをこっちに寄こしやがれ!」

なんてありきたりな台詞なんだ。モブオブモブ、まごうこと無き…モブだな?

「やれやれ…、ヴォルフ!カーンと彼を頼む!」
「いけるのか?」
「こんなモブ楽勝!」

ヴォルフが自由に動けないってことは実質六対一か…。
フルカンストの僕は魔法なんか使わなくたってこんな雑魚どもどうってことない。だけど如何せん、せっかく擬態までしている以上そうそう目立つ訳にも行かないし…、どれだけヒットしても致命傷じゃないんじゃキリがない。
さてどうするか。

「…しつこいな!えーと、そうだ!」

「何をする気だ?」
「こうするの。ヴォルフ、踏ん張ってて」

僕は体勢を崩した風を装い地面に手をついた。

ゴゴ

「うわっ!」

ゴゴゴゴ

「なんだ?揺れてるぞ!」
「ひぃっ!ひどい揺れだ!」
「待て動くな!」

バリバリバリ…バキィ!

「地割れだ!気をつけろ!」
「ぎゃぁぁ!」
「危ない!捕まれ!」
「ひぃぃぃ!」

「おい!あいつらから目を離す…、ああっ!」

「いゃゃぁぁ!誰かたーすーけーてー!」

「さ、裂け目に落ちやがった…」

「…気の毒なガキだ。最期が地割れに落下とは…」
「どうせ死ぬなら同じことだ。手間が省けた。さっさと報告に行くぞ!」


僕の台詞が少々棒読みだったのは勘弁してもらうとして…。

死ぬまで満足しないって言うなら絶対助からない場面を見せて納得させるしかない。
あんな深い裂け目に落ちたら一巻の終わりだ。

…『テレポーター』でもなければね。

どうせこの国は今から局地的な大地震に見舞われる予定がある。これはある意味余震…。前兆ってやつだ。全然不自然じゃない。


「ところで改めてお伺いします。あなた方は一体…」
「一緒に来るなら名乗ろうかな?そうすれば納得するだろうし」

そりゃぁ、この一連の流れで何の疑問も感じない…ってこたぁないよね。
なんとか宿屋に戻って一息ついたところで、カーン氏が尋ねてきたのは当然のことだ。

「僕の名前はレジナルド・ハミルトン。クラレンス王国の侯爵位だ」

「その…、侯爵家の御子息でいらっしゃるのか…」
「いいや。現当主だ。そして僕にはもう一つの名がある」
「もう一つ…」
「またの名をレジナルド・ランカスター。悪名高き狂魔力の継承者だ」

「ランカスター!…そ、そんな…、あなた様が狂魔力の継承者だと言われるか!…そ、そうですか…、狂魔力とはあれ程の威力を…」

「だけど僕は魔力を制御している。信用して欲しい」
「…も、もちろん信用いたします…。ここまで来て気後れなど…!」

「よし。じゃぁ次はこれだ『キュア!』」


傷を回復させる魔法『ヒール』に対し、『キュア』は体内の異常を回復させる。元々虚弱だって言うし、死にかけの要因が複雑に絡み合ってるなら、ポーションよりも『キュア』の方が良いかと考えたのだ。

因みに王国で扱うポーションは三種。
いわゆるHP(体力)回復ポーションとMP(魔力)回復ポーション、それからアンチドート、解毒ポーションだ。
擬態のポーションを作り出したイーサン先生がいかにすごかったのか…、彼は今、三十分しか効かないという奪われたレシピの上位互換品を発明すべく頑張っている。今回持って来たのがそれだ。

おっと、脱線したがパウル君はどうなったかな?


「お、おお…顔色に少し赤みが…」
「こ…、ここは…?」

震えるまつげ。数秒後、その瞳はようやく正気を取り戻した。

「気が付いたみたいだね、パウル」

「て、天使様…?では僕はもう…」
「ちょ、ちょっと!違うから!誤解だから!」

「天使様…、どうか…どうか兄さまのところへお連れ下さい…」

さすが主従、揃いもそろって…

けど顔色が戻ったところで彼の生気は戻らない。心の疲弊ばかりはどんな魔法でも治せないのだから。

人は気力が無きゃ何も出来ない。生きていく上での力。それは体力気力、そして腕力、違った、思考力だっていうし…一刻も早く希望にいさまを与えないと…!

「ヴォルフ」
「なんだ」
「彼がこのまま長旅に耐えられるとは思えない。彼とカーンは先に連れて行こう」
「見せて大丈夫なのか」

これは『ワープゲート』のことだろう。ヴォルフの懸念はもっともなことだが…

「カーンは教育された侯爵家の執事だ。その口はカキのように固い。彼が僕を信用してくれたなら僕も彼を信用する」

「甘いことだ…」

「まあね。…ヴォルフはトラキアに向かった女性たちを守ってて。あそこは中立地帯だけど女子供ばかりでは危ないからね」
「まったく…、人使いの荒い奴だな」
「信頼してるんだよ…、ね、僕の心友」

なんだかんだ言いながらもヴォルフは頼りになる男だ。別室で彼をトラキア行き御一行様のもとまで送ると僕は戻って再度カーン氏に向き直った。

「いい?今から奇跡が起こるけどそれを決して口外しないで欲しい。それを誓える?」

「奇跡…、よく分かりませんが誓いましょう。すでにあなたの存在は私にとって奇跡のようなものです」

カーン氏とは少しばかりの口裏合わせが必要だ。

彼は僕からの手紙を受け取り、早々に意識の無いパウル君を連れてクラレンス王国を目指していた。そして無事トラキア経由でクラレンスに入国し僕と落ち合った。なんてね。

「よく分かりませんが誰に何を聞かれてもそう答えればよろしいのですね。」
「そう。クラレンスの僕が遠く離れたエトゥーリアに居たことを知られたら困るんだ」

「それは何故…」
「こういう事だよ。『ワープゲート』」


その言葉を彼が最後まで聞けたかどうかわからない。だって0コンマ一秒後には世界がひっくり返っているんだから…



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