街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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53.5 オスカーの独白

初めてのダンジョンが敗北の思い出となったのは当然だったんだろう。今こうして振り返ってみれば…


王国聖騎士団、近衛隊長として王の御身を傍近くで護る立派な父。その息子に生まれたことを俺は子供のころからいつも誇りに思っていた。
だからこそそんな父のようになりたくて俺は日夜鍛錬に明け暮れていた。

気が付けば俺は誰も彼も打ち負かす腕を手に入れ、すると父は、本来なら魔法学院へ入学しなければ認められない騎士鍛練場に通う許可を、わずか十歳の俺に下さったのだ。

強いものと剣を交えれば腕はより磨かれる。さらに強くなった俺は、いつしか騎士たちからも称賛され、会う者全てに将来を嘱望されるまでになっていた。

その言葉に思い上がったつもりはない。
だが無駄に謙遜するくらいなら称賛を受け入れ糧にすべきだというのが俺の考えだ。

何故なら俺の代には同学年に第一王子殿下、アルバートが居る。

この国クラレンスは表向き平和に見えるがいくつもの火種を抱えている。
ゲスマンとの危うい均衡…、貴族間の摩擦、魔のベルト地帯…

ベルト地帯がウエストエンドによって封じられたのは思いがけない幸いだったが、それだって狂魔力次第で消えて飛ぶつかの間の平穏でしかない。

王族は皆、光魔法の才を持って生まれてくる。その光によってこの国を繁栄へと導いていくために。

ならば俺はこの武才を高めるだけ高め、国を治めるアルバートを護るために使うべきなのだ。尊敬する父のように。

だからこそ俺は怯むわけにはいかない。強さこそ俺が俺である証。そう思っていた。


だけど本当は分かっていた…。俺にあの強化のダンジョンは時期尚早だと。

それなのに強行したのは、あのレジナルドが、狂魔力の継承者が、俺と同じ歳の、だが俺より華奢な彼がこれだけの偉業を成し遂げていると知って、あの父の息子である俺が負けてはならないと…、少なくとも剣の腕前では勝たなくてはならないと…、そう意地を張ったのだ…


真っ二つに折れた俺の剣、父が騎士になった記念に祖父から頂いたという記念の剣。それを入学の祝いにと下さったのはまだほんの数か月前のことだ。

簡単に折れたミスリルの剣。

バイヤードが叫ぶ。
「下がれ!」

このまま無様に下がれるものか!俺は近衛隊長ホレイショ・ブランフォードの息子。せめて一矢報いなくては!俺の誇りにかけて!

『ファイヤーアロー!』

そうだ!俺にあるのは剣術だけじゃない!炎を操る魔法は四属性の中で最も強い!これでせめて手傷くらい…!
俺は一縷の望みをかけた。だが…


「ダメだ巨大化する!オレガリオ、バイヤードをカバーだ!」

どこからかレジナルドの叫ぶ声がする。
それと同時にバイヤードは俺を物凄い力で放り投げた。転がり土をつけた俺の目の前には割れたポーション、そしてどす黒い瘴気を放つ一回り大きくなったブラックオーク。

「…っ!そ、そんな…」

指示を出しながら軽くオークを一刀両断にするレジナルド。
そのレジナルドの指示に従い互いにポジションを入れ替えながら連携をとって戦う二人。その戦い方には無駄がなく着実に敵を弱らせていく。

後続が来るというレジナルドの探知。指示を受けバイヤードはあいつとポジションを入れ替える。

「バイヤード、俺も力に…」
「だまれ!致命傷を受けたらどうする気だ!敵が生身のお前に手加減してくれるとでも思うのか!」

ああ…、そういう事か…。騎士たちが近衛隊長の息子である俺に、真剣を使った手合わせで本気のはずが無かったのだ。
だからレジナルドも言ったのだろう。防具も無くでしゃばるなと。
「舐めるな」などとどの口が言った…。舐めていたのは俺のほうだ。
つまらない見栄や意地を張って…、この状況を作ったのは俺の浅はかさだ。

俺は誰より強いと信じていた。学内でも誰一人敵う者はいない。だが所詮実践を知らない強さでしかない。
見るがいい!あの騎士が繰り出す炎の魔法を!威力だけではない、あれは戦いを知る者の動きだ!

そしてレジナルド…

あいつは魔のベルト地帯を封印出来る力を持ちながら決して一人で戦わない。指揮官として冷静に状況を観察し、バイヤードとオレガリオ、二人の力を最大に引き出しながら戦っている。

「伏せろオスカー!」

レジナルドの戦いに見惚れていた俺はその攻撃に気付くのが一瞬遅れた!

「ぐぅっ!」

俺を庇うバイヤード。

「バイヤード!大丈夫かバイヤード!」
「たかがこの程度!『アイスニードル!』」

真っ赤に染まるバイヤードの胸…
「最悪生命の危険にさらされかねない」今ごろ言葉の意味に気が付いても遅い。全部馬鹿な俺のせいだ。
俺にどう責任がとれる?俺には何も出来ない…、悔しさに唇を噛む以外なにも…


全てを終えたレジナルドが俺へ静かに語り掛ける。

「戦いの中で一人が勝手に動けばどんな強い隊でも窮地に陥る。普段だってそう。君が勝手をすればそれで困る人がいる。」
「冷静に自分自身を知らなきゃいけないし周りを見ることを覚えなくちゃ。そういう事を理解したらオスカーはもっと強くなれる。弱点があることなんて当たり前だし力を合わせて戦う事は逃げじゃない。」


ヴィラへの帰り道、馬上にあって俺は黙りこむしかなかった…。

「オスカー様、この失敗があればこそあなたはより成長します。どうか気になされませんよう。私には貴方が誰より立派な近衛隊長になった姿が既に見えておりますよ」

あの斬撃と共に折れたのは剣ではなく俺の驕りだ。

「ここにおられる僅かな時間ですが、私で良ければ『強化のダンジョン』へご一緒しましょう。もちろん初級ですが、今度こそ真実あなたの心身を強化するために。その代わり私の言葉には従っていただきます。いかがですか?」

水の騎士に相応しい清廉なバイヤード。彼は一言たりとも俺を責めたりしなかった。
王都に居る父の部下たちとは違う、彼の言葉はホレイショ・ブランフォードの息子でなく、魔法学院に入学したての子供、オスカー・ブランフォードに向けられていた…



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