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73 16歳 in ランカスター本邸
ムッキィィィィ!
こ、こいつ…、僕がここに居ないと思って全部擦り付けやがった!なんて性悪なんだ!!信じられない!!!
どうする…?みんな本気になんかしないよね…?ああ…もう姿現しちゃおうか…?
往生際の悪い!って…、え?えぇーーーっ?
「イソヒヨドリは化け物じゃない…。お前許せない…」ユラリ…
こっ!これは何度か見た事のあるオコなシャリム…。けど今日はさらにその…激オコ⁉
「ウソしか言わないそんな口いらない…」ズ…スズズ…ズルリ…
「ヒッ!いや!何なのそれは!わたくしに近づけないで頂戴!こ、こないで!いやぁ!」
シャリムの背後から伸びる影が大きな蛇になってエバへと襲い掛かる。その姿はまるで巨大なキングコブラだ!
こ、これってー!!!
も、もしやこれはゲーム内でも名前だけで取得枠は無かった幻の闇魔法? 聖女にしか発現しないって言う聖魔法と双璧を為す、あの失われたレア属性?
え?えぇっ?…あ、ああーーっ!言ってた!ニコ言ってたよ!
あ、ああ、あの時は動揺が凄すぎてうっかり聞き流してたけど!そう言えば…『ゲスマンの皇家に仕え邪魔者の排除を請け負う沈んだ目をした闇魔法使い』って…!言ってましたー!!!
だからあれほど勘が良かったのか!あれが闇魔法の読心スキルか!謎は全て解けた…、じゃなくって!
ど、どうするコレ…。でも今このタイミングで姿を現したらそれこそエバの望む展開じゃないか?
けど、そうこうしてる今この瞬間にも闇の蛇がエバを飲み込む!ダメだシャリム!その女を殺しちゃダメだっ!
「きゃぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇ!」
「うるさい…」
「誰かっ!誰か助けてっ!いやぁぁぁぁ!」
「お前は消えろ…」
くそっ!こうなったら出るしかないか!
『グレイスフルライト!』
その刹那、高貴な光によって闇の蛇を相殺したのはまだ未成熟な、だけど確かな威厳を感じる涼やかな声。
これはあれだ。聖女の持つ浄化とはまたベクトルの違う光魔法による浄化、ゲームのアルバートが得意としていた魔法だ。って事はつまりぃ?
「何お前…」
ひぃぃぃ!バカシャリムッ!お前とか言うな!この周りに比べて少しだけ小柄な騎士は…
「彼女からは『クーザ』に関する証言を得なくてはいけないのでね。ここで死なれては困るのだよ。ニコと言う女神官から君のことは聞いている。シャリム。怒りは分かるが抑えるんだ。」
あぁぁぁぁ!!!やっぱり!アルバート、何してんのこんなとこで!
「イヤダ…、この女はイソヒヨドリを化け物って言った…」
「安心したまえ。この女性には今から、あの時死んでおけばよかったと思うほどの苦痛が待っている。容赦はしない。なにしろ私のレジナルドに不敬な口を利いたのだからね」
なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど…、ああ!親戚のレジナルド、って意味かな?ま、まぁいいや、今はとりあえずシャリムを…
ツンツン「イソヒヨ…」
ステルスのまま背後から口を塞ぐと意図を察したシャリムはようやく一歩後ろに下がった。念のため当分羽交い絞めにしておこう…
「あ、貴方様はまさか…」
「おや?王家主催の宴席に招待した事は無いと思ったのだが。私が誰だかわかるのかい?ならば話は早い。私の前でもう一度同じ戯言を繰り返してみるか。だがよく考えるのだ、彼は紛れもない王族の血を引く公爵家の正当な後継者。確かな証拠も無く滅多な事を言えば罪状に不敬罪が加わることになる」
「何を申されますか!あ、あれは継承権を放棄しております!このランカスターを継ぐのはわたくしの一人息子、パーカーでございます!」
「黙れ!!!」
「ひっ!」
「卑しいお前の下らぬ虚言をこの私が信じると思うのか!凝りもせず繰り返しレジナルドをアレなどと呼ぶ捨てることも含め…全てが許せぬ!」
「では殿下…」
「うむ。王の名代たるこの私が命ずる!この女は『クーザ』に魂を売った愚かな女の末路として見せしめとする!この地より王都までアダマンタイトの手足首枷をしたまま衆人環視の目に触れるよう荷台に乗せて時間をかけて連行せよ!」
「そっ!そんなっ!で、殿下、話を聞いて下さいませ殿下っ!殿下ー!いやよ!どうしてこんなことに!」
「なんと見苦しい…耳障りだ!引っ立てろ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
エバの金切り声が消えたその静かな倉庫に残るのはシャリムとアルバート。そしてようやくステルス魔法を解除して、まるでずっとそこに隠れていました、みたいに陰から出てきた僕。
「アルバート、まさかあなたが来ていたなんて…」
「ふふ、君は気が付かなかったみたいだね。良く似合ってるだろう?」
「でも何で…」
「女神官殿が言っていたのだよ。ランカスターに潜入している闇魔法使いシャリム。彼は状況次第で暴走するかもしれないとね。私は知っていたのだ。闇魔法を相殺できるのは光魔法だけだと。ここに光魔法を持つ者は私だけだろう?」
言えない…。僕にも光魔法属性があるなんて事は…今さらそんな真実は言えない…
ジト目のシャリム。いいから余計なことは言うな!言うんじゃないっ!
「あの…、助かりました。ありがとうございます…」
「いいんだ。役に立てて良かった」
パーソナルスペースに対する感覚さえ間違えなければ本当に良い王子なんだよねぇ…
ともかくこうして大捕り物は終わりを告げたのだ。
各所における聖騎士団の活躍はまた改めて、ね。
さて一方ランカスター本邸の中。
ここでは雪崩れ込んだウエストエンド騎士団と、エバの命により父を渡すまいとする第三騎士団が正面からぶつかり合った。
窮鼠猫を噛む第三騎士団は滅茶苦茶ながらも随分手ごわく歯向かったらしい。
そして新参の使用人達は何かを察し取るものも取らず逃げ出そうとしたのだとか。
逃げ出す選択肢をとる時点で後ろめたいことがあるってことだよね?逃がすものか。徹底的に調べあげてやる。
第三騎士団を鎮圧して保護した父…。この目で直に見た父は近隣当主たちと比べ物にならないくらい重症に見える。
ああしまったな…
気にしてないって言いながら、でもどこかわだかまりのあった僕は今まで決して様子を見に来ようとはしなかった。
実の親子だからこそ拗れると面倒っていうのはこういう側面もあるんだろう。判断が感情的になる…
頼りないながらも背筋を伸ばした紳士貴族であった父。それがこんなにやつれて、そのうえ視線は空を彷徨うばかり…
エバ…、なんて…なんてひどい事を…!
「父はウエストエンドへ運ぶ」
「レジナルド…それは…」
「ウエストエンドの封印石にはアルバートの単身訪問が決まってより強力な魔力を込め直しました。あそこにはアリ程の悪も入り込めない、この世界で最も安全な場所、それが今のウエストエンドです」
「大丈夫かい君…」
「関係ないって突っぱねた結果がこれだ…。僕はこれ以上あの人を他人に委ねたくはない。お願いアルバート…」
「いいだろう。王には私から伝えよう」
領内を取りまとめる為、元第一所属だった騎士たちはしばらくこのままここに残ることを申し出てくれた。
そして足腰が弱り籠りがちだった本邸の家令は、僕の『ヒール』と『キュア』のダブル治癒によりかなり活力を取り戻した。高齢とは言え、これで当面の管理を任せられるといいのだけど…
「久々だねブルックリン。子供の時以来だろうか」
「レジナルド様。私が付いていながらなんと不甲斐ない…。会わせる顔がございません」
「父がこのままの地位に留まれるかどうかは僕にも分からない。だけどアルバートは悪いようにしないと言ってくれた。父が戻るまでこのランカスターを守っていてくれるかな」
「身命を賭して。今度こそ必ずや…」
こうして僕たちはすべきことを終えた。
こ、こいつ…、僕がここに居ないと思って全部擦り付けやがった!なんて性悪なんだ!!信じられない!!!
どうする…?みんな本気になんかしないよね…?ああ…もう姿現しちゃおうか…?
往生際の悪い!って…、え?えぇーーーっ?
「イソヒヨドリは化け物じゃない…。お前許せない…」ユラリ…
こっ!これは何度か見た事のあるオコなシャリム…。けど今日はさらにその…激オコ⁉
「ウソしか言わないそんな口いらない…」ズ…スズズ…ズルリ…
「ヒッ!いや!何なのそれは!わたくしに近づけないで頂戴!こ、こないで!いやぁ!」
シャリムの背後から伸びる影が大きな蛇になってエバへと襲い掛かる。その姿はまるで巨大なキングコブラだ!
こ、これってー!!!
も、もしやこれはゲーム内でも名前だけで取得枠は無かった幻の闇魔法? 聖女にしか発現しないって言う聖魔法と双璧を為す、あの失われたレア属性?
え?えぇっ?…あ、ああーーっ!言ってた!ニコ言ってたよ!
あ、ああ、あの時は動揺が凄すぎてうっかり聞き流してたけど!そう言えば…『ゲスマンの皇家に仕え邪魔者の排除を請け負う沈んだ目をした闇魔法使い』って…!言ってましたー!!!
だからあれほど勘が良かったのか!あれが闇魔法の読心スキルか!謎は全て解けた…、じゃなくって!
ど、どうするコレ…。でも今このタイミングで姿を現したらそれこそエバの望む展開じゃないか?
けど、そうこうしてる今この瞬間にも闇の蛇がエバを飲み込む!ダメだシャリム!その女を殺しちゃダメだっ!
「きゃぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇ!」
「うるさい…」
「誰かっ!誰か助けてっ!いやぁぁぁぁ!」
「お前は消えろ…」
くそっ!こうなったら出るしかないか!
『グレイスフルライト!』
その刹那、高貴な光によって闇の蛇を相殺したのはまだ未成熟な、だけど確かな威厳を感じる涼やかな声。
これはあれだ。聖女の持つ浄化とはまたベクトルの違う光魔法による浄化、ゲームのアルバートが得意としていた魔法だ。って事はつまりぃ?
「何お前…」
ひぃぃぃ!バカシャリムッ!お前とか言うな!この周りに比べて少しだけ小柄な騎士は…
「彼女からは『クーザ』に関する証言を得なくてはいけないのでね。ここで死なれては困るのだよ。ニコと言う女神官から君のことは聞いている。シャリム。怒りは分かるが抑えるんだ。」
あぁぁぁぁ!!!やっぱり!アルバート、何してんのこんなとこで!
「イヤダ…、この女はイソヒヨドリを化け物って言った…」
「安心したまえ。この女性には今から、あの時死んでおけばよかったと思うほどの苦痛が待っている。容赦はしない。なにしろ私のレジナルドに不敬な口を利いたのだからね」
なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど…、ああ!親戚のレジナルド、って意味かな?ま、まぁいいや、今はとりあえずシャリムを…
ツンツン「イソヒヨ…」
ステルスのまま背後から口を塞ぐと意図を察したシャリムはようやく一歩後ろに下がった。念のため当分羽交い絞めにしておこう…
「あ、貴方様はまさか…」
「おや?王家主催の宴席に招待した事は無いと思ったのだが。私が誰だかわかるのかい?ならば話は早い。私の前でもう一度同じ戯言を繰り返してみるか。だがよく考えるのだ、彼は紛れもない王族の血を引く公爵家の正当な後継者。確かな証拠も無く滅多な事を言えば罪状に不敬罪が加わることになる」
「何を申されますか!あ、あれは継承権を放棄しております!このランカスターを継ぐのはわたくしの一人息子、パーカーでございます!」
「黙れ!!!」
「ひっ!」
「卑しいお前の下らぬ虚言をこの私が信じると思うのか!凝りもせず繰り返しレジナルドをアレなどと呼ぶ捨てることも含め…全てが許せぬ!」
「では殿下…」
「うむ。王の名代たるこの私が命ずる!この女は『クーザ』に魂を売った愚かな女の末路として見せしめとする!この地より王都までアダマンタイトの手足首枷をしたまま衆人環視の目に触れるよう荷台に乗せて時間をかけて連行せよ!」
「そっ!そんなっ!で、殿下、話を聞いて下さいませ殿下っ!殿下ー!いやよ!どうしてこんなことに!」
「なんと見苦しい…耳障りだ!引っ立てろ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
エバの金切り声が消えたその静かな倉庫に残るのはシャリムとアルバート。そしてようやくステルス魔法を解除して、まるでずっとそこに隠れていました、みたいに陰から出てきた僕。
「アルバート、まさかあなたが来ていたなんて…」
「ふふ、君は気が付かなかったみたいだね。良く似合ってるだろう?」
「でも何で…」
「女神官殿が言っていたのだよ。ランカスターに潜入している闇魔法使いシャリム。彼は状況次第で暴走するかもしれないとね。私は知っていたのだ。闇魔法を相殺できるのは光魔法だけだと。ここに光魔法を持つ者は私だけだろう?」
言えない…。僕にも光魔法属性があるなんて事は…今さらそんな真実は言えない…
ジト目のシャリム。いいから余計なことは言うな!言うんじゃないっ!
「あの…、助かりました。ありがとうございます…」
「いいんだ。役に立てて良かった」
パーソナルスペースに対する感覚さえ間違えなければ本当に良い王子なんだよねぇ…
ともかくこうして大捕り物は終わりを告げたのだ。
各所における聖騎士団の活躍はまた改めて、ね。
さて一方ランカスター本邸の中。
ここでは雪崩れ込んだウエストエンド騎士団と、エバの命により父を渡すまいとする第三騎士団が正面からぶつかり合った。
窮鼠猫を噛む第三騎士団は滅茶苦茶ながらも随分手ごわく歯向かったらしい。
そして新参の使用人達は何かを察し取るものも取らず逃げ出そうとしたのだとか。
逃げ出す選択肢をとる時点で後ろめたいことがあるってことだよね?逃がすものか。徹底的に調べあげてやる。
第三騎士団を鎮圧して保護した父…。この目で直に見た父は近隣当主たちと比べ物にならないくらい重症に見える。
ああしまったな…
気にしてないって言いながら、でもどこかわだかまりのあった僕は今まで決して様子を見に来ようとはしなかった。
実の親子だからこそ拗れると面倒っていうのはこういう側面もあるんだろう。判断が感情的になる…
頼りないながらも背筋を伸ばした紳士貴族であった父。それがこんなにやつれて、そのうえ視線は空を彷徨うばかり…
エバ…、なんて…なんてひどい事を…!
「父はウエストエンドへ運ぶ」
「レジナルド…それは…」
「ウエストエンドの封印石にはアルバートの単身訪問が決まってより強力な魔力を込め直しました。あそこにはアリ程の悪も入り込めない、この世界で最も安全な場所、それが今のウエストエンドです」
「大丈夫かい君…」
「関係ないって突っぱねた結果がこれだ…。僕はこれ以上あの人を他人に委ねたくはない。お願いアルバート…」
「いいだろう。王には私から伝えよう」
領内を取りまとめる為、元第一所属だった騎士たちはしばらくこのままここに残ることを申し出てくれた。
そして足腰が弱り籠りがちだった本邸の家令は、僕の『ヒール』と『キュア』のダブル治癒によりかなり活力を取り戻した。高齢とは言え、これで当面の管理を任せられるといいのだけど…
「久々だねブルックリン。子供の時以来だろうか」
「レジナルド様。私が付いていながらなんと不甲斐ない…。会わせる顔がございません」
「父がこのままの地位に留まれるかどうかは僕にも分からない。だけどアルバートは悪いようにしないと言ってくれた。父が戻るまでこのランカスターを守っていてくれるかな」
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