転生子息は選ばれたい お家のために頑張ります

kozzy

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四次審査終了

各々十日間の行動を終え、今夜は互いの健闘を称える慰労会だ。これはここだけではなく、各エリアでそれぞれ行われているという。

そして虎千代さまだけでなく三人の殿下が揃って各エリアにちょっとずつ顔を出されるという話だ。

その発表を受け誰一人として動じないところを見るに、殿下方が転移の石で移動するという事実を全員知っていたみたい。
どうも高位貴族の社交界では当たり前の知識で知らなかったのは下位貴族の僕だけらしい。ぐ…つかポール…、何故君は知っている…

「ふふ、お可愛らしい方ですねオリヴィエ様は」
「か、かわいい…」

褒められてんだかどうなんだか。微妙だ。

「正直言うとあなたのような方が王子殿下の妃であれば、そう思いますが実際はなかなか難しいのでしょうね」
「そりゃそうだよ。王妃様は宮廷女性及び受け形の見本でなくちゃならないし、慈善活動や社会貢献の手本を示さなきゃならないし」

僕じゃ足元どころか足の裏にも及ばないよ。

「それを言ったらポールこそ。四次まで残ったなんてすごくない?」
「その件ですか…。もうお話してもいいかな?実はですね…」

ここでついにポールの秘密が明かされることになる。といってもそれはポール自身も知らなかった秘密だというのだから驚きだ。

ポールの秘密。それは彼の持つ特別な能力にある。

「僕がこの審査に参加した経緯ですが、領主様、そして村長が僕をこの審査に推薦くださった理由は領域争いの最中、僕がことごとく敵対相手の企みを看破したことによります。ふふ、僕は初めからどちらかというと王子妃でなく官吏狙いだったのですよ」

あー!ヘンリーと同類か!

「僕は子供のころから勘がいいとか先見の明があるとか言われていたのですが、どうもそれは僕の固有スキルだったみたいです」

「固有スキル…。へぇ~!」

これはこの魔法世界においても非常に珍しい、稀に生まれる、いわば特殊技能だ。

「僕は貧しいながらも兄と共に最低限ですが発芽の儀を受けています」

え?僕は気合を総動員し、驚きを顔に出さないよう押しとどめた。
うんよし。努めて冷静に冷静に…

「…その割には魔法を使ったところ見たこと無いんだけど…。だから僕はてっきり」
「皆さまが気を使ってその事に触れないでくださっていたことは存じていました。ありがとうございます」

以前お話ししたように、この世界で魔法を使えないことは蔑まれる大きな一因となる。
なのにポールがこの審査のあいだそれほど意地悪や陰口をたたかれなかったのは、これが王子妃を選ぶ審査で、彼や彼女たちが自己の評価をあげるため周囲を気にしていたからに他ならない。

それでも彼は一度実に下劣な嫌がらせを受けている。
そう。例のあの襲撃事件だ。
平民位の参加者なら他にも居たのにポールだけが狙われたのにはそんな背景がある。

「四次審査への進出が決まった時点で僕はカーネル様から呼び出しを受けました。実は二日ほど早くコテージ入りしていたのですよ」
「へ、へぇ…、そ、それで?」

早く先を!その先が気になる!

「そこで教えていただきました。僕は魔法が発芽しなかったのではなく発芽したのがスキルだったのだと」

なんと!

「二次の面談の時にその話をさせていただいたのです。儀式を受けても魔法が発芽しなかった、と。実はお布施を返していただけたら…、そんな目論見があったのですが…ふふ。これはナイショですよ」
「も、もちろん!」

貧乏のやるせない気持ちは痛いほどわかるから!

「ですが王はそんなはずがないと訝しがられお調べくださったようです」

さすが厳格な王!自分自身のミスでさえも許さない方向ですか!

「僕が三次に進んだのは市井へのアピール、そして調査の時間をかせぐためでしょう。そして王は一つの推測をおたてになりました」
「それがスキル…」

「ええ。この四次審査ですが、この十日間で僕はいくつかの小さな事故を無意識に防ぎました。それをご覧になったトラチヨ様は確信を持ちカーネル様に進言くださったようです」

虎千代さまはポールに関し審査というより観察を頼まれていたらしい。なるほど。だからほぼほぼ海岸にいたのか…

「カーネル様は王からの伝言をお持ちくださいました。僕の王子妃審査はここまでです」

王の伝言、それはスキルに気付かなかったポールはそれを磨いてこなかったため、勘が良い、とか洞察力がある、程度の認識しか自他ともにしていなかったが、修練を積めば〝先見のスキル”としてもっと有用な技が開花するだろう、というもの。

「す、すご…」
「そのため王城の魔術師団へお誘いくださいました。部署は違いますがお受けすればヘンリー様と同僚になりますね」
「お受けすればって…受けない選択肢があるの?」

「…どうしましょうか…。ここのところ僕はデイビッド様のようにスターリングで雇っていただきたいと考えていましたので…」

なに!
そ、それって…アンディ狙いじゃん…絶対そうじゃん…

「返事は急がないと言われていますので少し考えます」
「そ、そう…」
「ですのでオリヴィエ様」
「は、はは、はい!」
「この審査が終わったら遊びに行かせていただいてもいいでしょうか」
「いいけど…」

ここで断れるだろうか?いいや断れない。

「ふふ、移住の下見…なんて」ペロ

が!カ、カワイイ…
そう。ポールは可愛いのだ。容姿が…。デイビッドほどじゃないけど…




「王子殿下方がお揃いでお見えになりました」

到着を告げる執事の声。これぞまさに緊張の一瞬。

そして一気にホールはロイヤル色に。ベントレー伯爵はウハウハだ。彼はこのメリットありきで面倒な審査対象者の受け入れを決めたのだろう。

「オリヴィエ」
「虎千代さま…、オードリー嬢はもういいんですか?」
「ああ。今はジェラルドと話しているよ」

五人全てのところを周っているように見せかけ、割合的に僕の側が多いように感じるのはここにポールも居るからだ。そう思いたい。

他国の王子である虎千代さまだが、彼も今日の慰労会は全エリアに顔を出している。

「オリヴィエ、例の件だが…」
「マツタケの件ですね。お任せください!きっと見つけ出してみせます!」
「いやそうではな、…ああ。よろしく頼む」

何かもの言いたげな虎千代さま。お加減でも悪いのかと手をおでこに差し伸べた時、そのタイミングで伯爵の手配したカルテットが音楽を奏で始めた。

「踊ろうかオリヴィエ」

ナチュラルに取られる手、これじゃあまるで僕からお誘いしたみたい…

見ればあちらでもこちらでもダンスが始まっている。
だけど王子は四人、参加者は五人、頭数が…

「オリヴィエ様。僕は踊れませんのでお気になさらず」

何も言ってないのに背後から返ってくる返事。なるほど。これがスキルか。

「虎千代さま、僕ダンスって得意じゃなくて…」

ほら、夜会に出たこと無いし。

「かまわない。君との思い出が欲しい、駄目だろうか」
「…いいえ」

思えばこの審査は虎千代さまから始まったのだ。
コテージのカフェテリアで田舎者の僕に声をかけてくださった優しい方。その後も何くれと無く気にかけてくださって…、彼がいなければもっと早く挫けていたかもしれない。

「あの…」
「なんだいオリヴィエ」
「僕なんかがこんなこと身の程知らずですが…」
「いいたまえ」
「虎千代さまと友人になれて良かったなって、…心からそう思います」

「友人…、ああ。私もそう思うよ」


こうしてベントレーでの宿泊審査は終わりを告げた。




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