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スターリングの日常
あれから半年…
ポールのスキル底上げは、このスターリングで行われる運びになった。
これは言わずと知れたアンディによる交渉で、アンディは『屋敷を増設してポールの修練部屋をつくる』を名目に、屋敷のその他諸々修繕及び拡張費用を王宮から出させることに成功していた。
厳格な王やベネディクト殿下が二つ返事でオーケーしたわけではない。
アンディは、ポールはジェラルド殿下の外部提携者だし、僕は非常勤とは言えカーネル殿下の部下になるし、「場合によっては殿下方のお越しもあり得るかもしれない」と、宮廷の重鎮たちを納得させたのだから恐ろしい…
これがエリート営業マンの底力か…
「アンディすごいね…、でもいいのかなぁ?」
「世の中こんなもんだ」
なるほど勉強になる。どうせ真似できないけど…
そして当人ポールだが、彼は王宮から渡されたスキルアップ用のグッズ(前世のテレパシーカードみたいなの?)を使い、一日数時間の修練が義務付けられている。
それによって彼は王宮から学生バイトくらいの手当てを頂くのだが、うちから充分なお給金を支払えていない現状、大変ありがたいと思っている。
「そんな…、住み込みですしお給金のことは気になさらなくていいのですよ」
そう言われても前世の倫理観がね…
「僕はこんな風に普通の、いえ、普通以上の生活が出来るだけで充分満たされています」
「ポール…」
この領内においてポールは領主館の執事(見習い)であり、次期当主の友人さまだ。
彼は領民から「執事さま」とか、「ポールさま」と呼ばれ、敬意をもって親しまれている。
そして服はお仕着せ、部屋は修繕された立派な個室。彼が満足出来ているなら何よりだ。
「ところでお兄さんは?」
僕は春先に王都へ出向いた際、ヒューさんの店を拡張しながら居候を続けるお兄さんに、「これが終わったらスターリングへ来てはいかがですか?」と移住を勧めていた。
「ふふふ、ヒューさんとこのまま暮らすようですよ」
マジで?
「ヒューさんの意向で結婚はしないようですが、なんでも理容院の裏手にヒューさんが家具修繕の店を新しく構えたみたいで…」
情報が多い…
つまりお兄さんはすでにヒューさんと大人の関係で…、ヒューさんが家具修繕をするはずないからそれはお兄さんのためのお店で…
これがほんとの髪結いの亭主?い、いや、これは内縁夫夫の共有財産。
「ベタ惚れだね」
「ふふ、実は兄さんの方が」
「えっ!そうなの?」
「ヒューさんの垣間見せる弱いところを護ってやりたいのですって」
…誰の話かな?
どうやらヒューさんは特大のネコを飼っているらしい。
「オリヴィエ居る?」
「あっ、デイビッド。どうしたの?」
ふら~っと庭からやって来たのは僕の親友デイビッド。勘当された子爵家の三男坊だ。
「あのさ、僕たちそろそろ子ども作ろうと思ってるんだよね」
「わぁ!ホントに?」
「それはいいですね」
「なんでも言って。お手伝いするよ」
「じゃあ報酬上げて。今すぐ」
スン「あ、うん」
そうきたか。
この世界の赤ちゃんは普通に作ることももちろん可能だが、王都の特別な専用神殿にお互いの遺伝子情報(毛髪とか爪とか体液とか)と希望諸々を提出すると、『聖なる生誕石』によってバランスよくそれらを取り込んだベイビーが、十月後、コウノトリによって運ばれてくるシステムも用意されている。
貴族家の嫡男なんかはこのほうが確実に男子が産まれるし、母体の安全も保証されるので人気と言えば人気だが…如何せん。このシステムは互いの愛情が試されるシビアなものだ。
ここがゲームの世界だと知って初めて僕にもどういうことか理解が出来たのだが、要するに互いの親密指数が高くないと赤ちゃんをつくるフラグが立たないってことね。
なので契約婚の愛無き夫婦は仮面夫婦バレを恐れ、自力で頑張ることが多い。悪しからず。
「人の出入りも賑やかになって来たし…今期は収穫も増えそうだって言ってたよね?」
「あくまで見込みね…」
「子供部屋を増やさないと。増設するからお金が要るの」
「わ、分かった…」
こう言われて断れるだろうか?いいや断れない。
「まあでも実際デイビッドのデザインしたロジンアクセは売れ行きも良いし…」
「ジュードさんもよくやってくれていますしね」
僕たちはそのままお祝いのお茶会へと突入した。
と、そこにやって来たのは下働きのフレッドだ。
「オリヴィエ様、お城から手紙が届きました」
「ありがとうフレッド、見せてくれる?」
王城からの通達は全て教会にある伝達石で行われる。
これは前世で言うファックスとか電報とかに似た物だ。
「あっ!夏前にカーネル殿下が視察にいらっしゃるって!ヘンリーの隊が護衛で一緒みたい!」
王家は転移の石をお持ちだけど、あれはなんでもかんでも使われるものではないらしい。
特に公的な視察などの場合は、経由する各領への懇親公務の意味合いもあるため何台も馬車を連ねてやってくるのだ。
「ヘンリー様が護衛の隊にいらっしゃるのはカーネル殿下の心遣いでしょうね」
「そうみたい。三泊ほどしていくって」
「では工事の方を急がせましょうね」
「お、全員お揃いか」
「アンディお帰り」
そこに現れたのは、今はまだ秘密の婚約者であるアンディ。彼の存在を公にするのはアンディの叙爵を待ってからのことになる。
「オリヴィエ、お前が屋台にメニューで出したサイダーだが」
「あれがどうしたの?」
「口コミだけで大ヒットの兆しだ」
「うそぉ!」
「あれ美味しいよね。僕も好き」
「僕もです。あんな口当たりの飲み物初めてです」
これが何かというと、実は松の葉を使った炭酸水のことだ。
この世界には炭酸泉とかならあるけど炭酸飲料は存在しない。松の葉から炭酸を作るのには砂糖を使用するため、実質これは炭酸水でなくサイダーである。オフグリッドの定番だよ。
「何しろ炭酸ばかりはよほど近所じゃなきゃ持ち帰れないからな。これを目当てに遊山客が増え始めてる」
「ほんとに?やったぁ!でもアンディの宣伝が上手いからだよ」テレ
「お前の初企画だ。売らなきゃだめだろう」
ポッ「アンディ…」
「はいはい、分かったからアンディ」
「なんだ」
「叙爵はどうなってんの?」
「ああそれだが…、もうすぐカーネル殿下がやってくるな?」
「うん。さっき聞いた」
というかフレッド、真っ先にアンディへ伝達持ってくあたりよくわかってるよね。
「そこである話をするつもりだ」
「ある話…?」
アンディが言ってた「策がある」とはこのことだろうか?タイミングが大事とも言っていたからそれ以上聞かなかったけど。
「早くしなよ。僕の親友が行き遅れなんて嫌なんだけど」
デイビッド…発言内容はともかく僕を親友って思ってくれてるんだ…ジーン…
「急かすなよ。だがそうだな…、俺もこれ以上限界だ」
「何が?」
「理性が」
ガシャ!
「オリヴィエ様カップが!」
「ばかオリヴィエ、これぐらいで照れてどうするのさ」
照れるに決まってるじゃないか。
だけどアンディ。
僕も同じ気持ちだよ…
ポールのスキル底上げは、このスターリングで行われる運びになった。
これは言わずと知れたアンディによる交渉で、アンディは『屋敷を増設してポールの修練部屋をつくる』を名目に、屋敷のその他諸々修繕及び拡張費用を王宮から出させることに成功していた。
厳格な王やベネディクト殿下が二つ返事でオーケーしたわけではない。
アンディは、ポールはジェラルド殿下の外部提携者だし、僕は非常勤とは言えカーネル殿下の部下になるし、「場合によっては殿下方のお越しもあり得るかもしれない」と、宮廷の重鎮たちを納得させたのだから恐ろしい…
これがエリート営業マンの底力か…
「アンディすごいね…、でもいいのかなぁ?」
「世の中こんなもんだ」
なるほど勉強になる。どうせ真似できないけど…
そして当人ポールだが、彼は王宮から渡されたスキルアップ用のグッズ(前世のテレパシーカードみたいなの?)を使い、一日数時間の修練が義務付けられている。
それによって彼は王宮から学生バイトくらいの手当てを頂くのだが、うちから充分なお給金を支払えていない現状、大変ありがたいと思っている。
「そんな…、住み込みですしお給金のことは気になさらなくていいのですよ」
そう言われても前世の倫理観がね…
「僕はこんな風に普通の、いえ、普通以上の生活が出来るだけで充分満たされています」
「ポール…」
この領内においてポールは領主館の執事(見習い)であり、次期当主の友人さまだ。
彼は領民から「執事さま」とか、「ポールさま」と呼ばれ、敬意をもって親しまれている。
そして服はお仕着せ、部屋は修繕された立派な個室。彼が満足出来ているなら何よりだ。
「ところでお兄さんは?」
僕は春先に王都へ出向いた際、ヒューさんの店を拡張しながら居候を続けるお兄さんに、「これが終わったらスターリングへ来てはいかがですか?」と移住を勧めていた。
「ふふふ、ヒューさんとこのまま暮らすようですよ」
マジで?
「ヒューさんの意向で結婚はしないようですが、なんでも理容院の裏手にヒューさんが家具修繕の店を新しく構えたみたいで…」
情報が多い…
つまりお兄さんはすでにヒューさんと大人の関係で…、ヒューさんが家具修繕をするはずないからそれはお兄さんのためのお店で…
これがほんとの髪結いの亭主?い、いや、これは内縁夫夫の共有財産。
「ベタ惚れだね」
「ふふ、実は兄さんの方が」
「えっ!そうなの?」
「ヒューさんの垣間見せる弱いところを護ってやりたいのですって」
…誰の話かな?
どうやらヒューさんは特大のネコを飼っているらしい。
「オリヴィエ居る?」
「あっ、デイビッド。どうしたの?」
ふら~っと庭からやって来たのは僕の親友デイビッド。勘当された子爵家の三男坊だ。
「あのさ、僕たちそろそろ子ども作ろうと思ってるんだよね」
「わぁ!ホントに?」
「それはいいですね」
「なんでも言って。お手伝いするよ」
「じゃあ報酬上げて。今すぐ」
スン「あ、うん」
そうきたか。
この世界の赤ちゃんは普通に作ることももちろん可能だが、王都の特別な専用神殿にお互いの遺伝子情報(毛髪とか爪とか体液とか)と希望諸々を提出すると、『聖なる生誕石』によってバランスよくそれらを取り込んだベイビーが、十月後、コウノトリによって運ばれてくるシステムも用意されている。
貴族家の嫡男なんかはこのほうが確実に男子が産まれるし、母体の安全も保証されるので人気と言えば人気だが…如何せん。このシステムは互いの愛情が試されるシビアなものだ。
ここがゲームの世界だと知って初めて僕にもどういうことか理解が出来たのだが、要するに互いの親密指数が高くないと赤ちゃんをつくるフラグが立たないってことね。
なので契約婚の愛無き夫婦は仮面夫婦バレを恐れ、自力で頑張ることが多い。悪しからず。
「人の出入りも賑やかになって来たし…今期は収穫も増えそうだって言ってたよね?」
「あくまで見込みね…」
「子供部屋を増やさないと。増設するからお金が要るの」
「わ、分かった…」
こう言われて断れるだろうか?いいや断れない。
「まあでも実際デイビッドのデザインしたロジンアクセは売れ行きも良いし…」
「ジュードさんもよくやってくれていますしね」
僕たちはそのままお祝いのお茶会へと突入した。
と、そこにやって来たのは下働きのフレッドだ。
「オリヴィエ様、お城から手紙が届きました」
「ありがとうフレッド、見せてくれる?」
王城からの通達は全て教会にある伝達石で行われる。
これは前世で言うファックスとか電報とかに似た物だ。
「あっ!夏前にカーネル殿下が視察にいらっしゃるって!ヘンリーの隊が護衛で一緒みたい!」
王家は転移の石をお持ちだけど、あれはなんでもかんでも使われるものではないらしい。
特に公的な視察などの場合は、経由する各領への懇親公務の意味合いもあるため何台も馬車を連ねてやってくるのだ。
「ヘンリー様が護衛の隊にいらっしゃるのはカーネル殿下の心遣いでしょうね」
「そうみたい。三泊ほどしていくって」
「では工事の方を急がせましょうね」
「お、全員お揃いか」
「アンディお帰り」
そこに現れたのは、今はまだ秘密の婚約者であるアンディ。彼の存在を公にするのはアンディの叙爵を待ってからのことになる。
「オリヴィエ、お前が屋台にメニューで出したサイダーだが」
「あれがどうしたの?」
「口コミだけで大ヒットの兆しだ」
「うそぉ!」
「あれ美味しいよね。僕も好き」
「僕もです。あんな口当たりの飲み物初めてです」
これが何かというと、実は松の葉を使った炭酸水のことだ。
この世界には炭酸泉とかならあるけど炭酸飲料は存在しない。松の葉から炭酸を作るのには砂糖を使用するため、実質これは炭酸水でなくサイダーである。オフグリッドの定番だよ。
「何しろ炭酸ばかりはよほど近所じゃなきゃ持ち帰れないからな。これを目当てに遊山客が増え始めてる」
「ほんとに?やったぁ!でもアンディの宣伝が上手いからだよ」テレ
「お前の初企画だ。売らなきゃだめだろう」
ポッ「アンディ…」
「はいはい、分かったからアンディ」
「なんだ」
「叙爵はどうなってんの?」
「ああそれだが…、もうすぐカーネル殿下がやってくるな?」
「うん。さっき聞いた」
というかフレッド、真っ先にアンディへ伝達持ってくあたりよくわかってるよね。
「そこである話をするつもりだ」
「ある話…?」
アンディが言ってた「策がある」とはこのことだろうか?タイミングが大事とも言っていたからそれ以上聞かなかったけど。
「早くしなよ。僕の親友が行き遅れなんて嫌なんだけど」
デイビッド…発言内容はともかく僕を親友って思ってくれてるんだ…ジーン…
「急かすなよ。だがそうだな…、俺もこれ以上限界だ」
「何が?」
「理性が」
ガシャ!
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だけどアンディ。
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