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待ちに待ったその日
「アンディ、それで策ってどんな?もう聞いてもいい?」
「ああいいよ」
今か今かと首を長くしてその時を待ってる、とか思われたらプレッシャーかけてるみたいで申し訳ないけど、今度は何を閃いたのか気になるんだからしょうがない。
僕は思いきって質問することにした。
「ノベリティ・ロードとこの世界は理…というか、根幹が同じだ。そこはいいな?」
「うん。間違ってないと思う」
五つの国の設定なんかもそうだし、西と東の違いも理屈が合うしね。
「ノベリティロードでゲーム攻略の基本となる領地資産を増やす方法は主に三つだ。一つが交易、今俺がしていることだな」
「うん」
着々と成果になってるそれは、現在のスターリングを支える屋台骨だ。
それはロジンアクセの売上高というだけでなく、人の流入が増え、お金が回るという意味が含まれる。
「二つ目は農場のレベル上げだ。これはオリーがしていることだ」
志し半ばではあるけど少しずつ着実に形になってる、今後も続く僕のライフワークだ。
「そして三つ目。これはいいところでそれまで積み上げてきた資産を根こそぎ奪って台無しにする盗賊キャンプの一掃。これは報酬も入るしあらゆるレベルが上がる貴重な機会だ」
「盗賊キャンプ⁉」
「イージーモードの『繫栄する領地』には出てこない仕様だからオリーが知らなくても無理はないな」
「そ、そのイージーモードには出てこない盗賊がスターリングの資産にどう関係するの?」
アンディ曰く、スターリングがどれほどお金持ちの領になり、それがどれほどアンディの手柄だったとしてもアンディの叙爵には関係ない。
肝心なのは、誰が盗賊に困っているか、という部分だ。
「奴らはハードモードの『肥沃なる領土』、ノーマルモードの『領地の防衛』に出てくる巨大な強盗団だ。無主地を勝手に占有しそこを拠点にして近隣の領を荒らす、ゲームにおいては難易度を上げる醍醐味の部分だな」
やだよそんな醍醐味!
「ヒューに聞いたが王都の周辺にも盗賊団は出るって話だ」
「それは僕も聞いた。王都に出入りする行商や商隊のかたも困ってるって」
そうか…、ハードモードやノーマルモードのスタート地点は盗賊出現ポイントでもあるのか…
「その無主地の中にこそ例の畜魔法石、あれの発見場所がある」
「そっか、プレイしてた土地で見つけてるんだもんね」
「ジェラルド殿下から探索の報告があったが、伺った話だと奴ら強盗団に阻まれ畜魔法石の探索自体がなかなか進まないらしい」
アンディが示したのは畜魔法石が出現する大まかなエリア。
山中に入り隈なくその一帯を調べなければならないのに、その盗賊団が王宮の探索部隊を魔法武力で拒むため面倒なことになっているらしい。
だけど畜魔法石探索は極秘事項。探索部隊はその目的を明らかにできないのだ。
つまり騎士団を派遣し、国の名を掲げてドンパチって訳にはいかないのだとか。
「その面倒な盗賊団を俺が指揮して一掃すれば王家は大喜びすること請け合いだ」
ギョ!「出来るのそんなこと!」
「ノベリティロードの戦闘は武力で勝てなくとも相手の士気パラメーターさえ削げれば撤退させられるんだよ。ゲーム内の仕組みは生きてる。十分可能だ」
「え?」
「そのための攻略法ならいくつもある。そうだな…有効なのが五パターンぐらいか。説明は省くが基本こちら側のダメージは最小限だ」
「本当に?」
「ああ」
アンディはそのための下準備を今日まで着々と整えていたらしい。
いつの間に…
アンディと僕は冬に入る前、裏山の奥の奥まで行ってアカマツの群生林を発見している。
そうして、虎千代さまにお願いして送ってもらった、松茸が生えていた辺りの土をその林に撒いているのだが…、その話しはまた今度ね。
とにかくそんな忙しいアンディがそんなことまでしてたなんて…
アンディは「俺にしてみればゲームの延長みたいなものだから」って言うけど、そんなわけないじゃんねぇ?
「相手は多勢だ。単身で仕掛けられるわけじゃない。そこで助っ人を頼んだ」
「誰に!」
この世界におけるアンディの知り合いなんてかなり限定的なのに!
「ヘンリーの家は騎士家系だったな」
「うん、親戚一同もれなく全員魔法兵士だって。あっ!まさか…ヘンリー?」
「本人じゃなく実家のほうな。ああ、伯爵のところの兵士も借りる予定だ」
「その口ぶり…もしかしてもう話してあるの?」
「そうだ」
いつの間に…
有能ってホント仕事早いんだから…
「アンディ…」
「叙爵ともなればちょっとやそっとの手柄じゃ到底無理だ。わかるだろう?中世にも似たファンタジーの世界でもっとも手っ取り早い功績といえば巨悪の退治だ」
「それは分かるけど…」
「そんな訳だから二か月ほど留守にする。ここを頼んだぞ。困ったことがあればポールかジュードに言え」
ああ…アンディがハードモードに出張しようとしている…。なのに僕はみているしかできないなんて。
「そんな顔をするな。お前がくれた魔法のおかげで今ではもう誰の目も気にしなくてすむ。なら俺もしっかり手柄を立てて騎士爵を手に入れないとな」
「信じてるよアンディ。どうか無傷で帰って来てね」
ポン「任せろ!」
それから二ヶ月…
西側東部、ある伯爵領のほど近くにある無主地。そこで行われた大きな野戦に関しては割愛してもいいだろう。
僕が住むのはイージーモード。
これがノベリティロードの理に縛られた世界なら、このスターリング領は永遠に戦闘の無い田舎なんだから。
アンディとヘンリーの生家であるジョーンズ男爵家の一族により盗賊団は捕えられた。それによってジョーンズ男爵家は陞爵し、アンディに兵士を貸した伯爵さまは爵位こそそのままだが中央に飛び石領地が追加で与えられた。
そしてもう分かったね。
この盗賊団一掃を提案し指揮官として遂行したアンディには…
ついに念願の名誉騎士爵位が授けられることになったのだった!
おめでとうアンディ!有言実行だね!
「ああいいよ」
今か今かと首を長くしてその時を待ってる、とか思われたらプレッシャーかけてるみたいで申し訳ないけど、今度は何を閃いたのか気になるんだからしょうがない。
僕は思いきって質問することにした。
「ノベリティ・ロードとこの世界は理…というか、根幹が同じだ。そこはいいな?」
「うん。間違ってないと思う」
五つの国の設定なんかもそうだし、西と東の違いも理屈が合うしね。
「ノベリティロードでゲーム攻略の基本となる領地資産を増やす方法は主に三つだ。一つが交易、今俺がしていることだな」
「うん」
着々と成果になってるそれは、現在のスターリングを支える屋台骨だ。
それはロジンアクセの売上高というだけでなく、人の流入が増え、お金が回るという意味が含まれる。
「二つ目は農場のレベル上げだ。これはオリーがしていることだ」
志し半ばではあるけど少しずつ着実に形になってる、今後も続く僕のライフワークだ。
「そして三つ目。これはいいところでそれまで積み上げてきた資産を根こそぎ奪って台無しにする盗賊キャンプの一掃。これは報酬も入るしあらゆるレベルが上がる貴重な機会だ」
「盗賊キャンプ⁉」
「イージーモードの『繫栄する領地』には出てこない仕様だからオリーが知らなくても無理はないな」
「そ、そのイージーモードには出てこない盗賊がスターリングの資産にどう関係するの?」
アンディ曰く、スターリングがどれほどお金持ちの領になり、それがどれほどアンディの手柄だったとしてもアンディの叙爵には関係ない。
肝心なのは、誰が盗賊に困っているか、という部分だ。
「奴らはハードモードの『肥沃なる領土』、ノーマルモードの『領地の防衛』に出てくる巨大な強盗団だ。無主地を勝手に占有しそこを拠点にして近隣の領を荒らす、ゲームにおいては難易度を上げる醍醐味の部分だな」
やだよそんな醍醐味!
「ヒューに聞いたが王都の周辺にも盗賊団は出るって話だ」
「それは僕も聞いた。王都に出入りする行商や商隊のかたも困ってるって」
そうか…、ハードモードやノーマルモードのスタート地点は盗賊出現ポイントでもあるのか…
「その無主地の中にこそ例の畜魔法石、あれの発見場所がある」
「そっか、プレイしてた土地で見つけてるんだもんね」
「ジェラルド殿下から探索の報告があったが、伺った話だと奴ら強盗団に阻まれ畜魔法石の探索自体がなかなか進まないらしい」
アンディが示したのは畜魔法石が出現する大まかなエリア。
山中に入り隈なくその一帯を調べなければならないのに、その盗賊団が王宮の探索部隊を魔法武力で拒むため面倒なことになっているらしい。
だけど畜魔法石探索は極秘事項。探索部隊はその目的を明らかにできないのだ。
つまり騎士団を派遣し、国の名を掲げてドンパチって訳にはいかないのだとか。
「その面倒な盗賊団を俺が指揮して一掃すれば王家は大喜びすること請け合いだ」
ギョ!「出来るのそんなこと!」
「ノベリティロードの戦闘は武力で勝てなくとも相手の士気パラメーターさえ削げれば撤退させられるんだよ。ゲーム内の仕組みは生きてる。十分可能だ」
「え?」
「そのための攻略法ならいくつもある。そうだな…有効なのが五パターンぐらいか。説明は省くが基本こちら側のダメージは最小限だ」
「本当に?」
「ああ」
アンディはそのための下準備を今日まで着々と整えていたらしい。
いつの間に…
アンディと僕は冬に入る前、裏山の奥の奥まで行ってアカマツの群生林を発見している。
そうして、虎千代さまにお願いして送ってもらった、松茸が生えていた辺りの土をその林に撒いているのだが…、その話しはまた今度ね。
とにかくそんな忙しいアンディがそんなことまでしてたなんて…
アンディは「俺にしてみればゲームの延長みたいなものだから」って言うけど、そんなわけないじゃんねぇ?
「相手は多勢だ。単身で仕掛けられるわけじゃない。そこで助っ人を頼んだ」
「誰に!」
この世界におけるアンディの知り合いなんてかなり限定的なのに!
「ヘンリーの家は騎士家系だったな」
「うん、親戚一同もれなく全員魔法兵士だって。あっ!まさか…ヘンリー?」
「本人じゃなく実家のほうな。ああ、伯爵のところの兵士も借りる予定だ」
「その口ぶり…もしかしてもう話してあるの?」
「そうだ」
いつの間に…
有能ってホント仕事早いんだから…
「アンディ…」
「叙爵ともなればちょっとやそっとの手柄じゃ到底無理だ。わかるだろう?中世にも似たファンタジーの世界でもっとも手っ取り早い功績といえば巨悪の退治だ」
「それは分かるけど…」
「そんな訳だから二か月ほど留守にする。ここを頼んだぞ。困ったことがあればポールかジュードに言え」
ああ…アンディがハードモードに出張しようとしている…。なのに僕はみているしかできないなんて。
「そんな顔をするな。お前がくれた魔法のおかげで今ではもう誰の目も気にしなくてすむ。なら俺もしっかり手柄を立てて騎士爵を手に入れないとな」
「信じてるよアンディ。どうか無傷で帰って来てね」
ポン「任せろ!」
それから二ヶ月…
西側東部、ある伯爵領のほど近くにある無主地。そこで行われた大きな野戦に関しては割愛してもいいだろう。
僕が住むのはイージーモード。
これがノベリティロードの理に縛られた世界なら、このスターリング領は永遠に戦闘の無い田舎なんだから。
アンディとヘンリーの生家であるジョーンズ男爵家の一族により盗賊団は捕えられた。それによってジョーンズ男爵家は陞爵し、アンディに兵士を貸した伯爵さまは爵位こそそのままだが中央に飛び石領地が追加で与えられた。
そしてもう分かったね。
この盗賊団一掃を提案し指揮官として遂行したアンディには…
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おめでとうアンディ!有言実行だね!
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