断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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122 断罪の懐古 ②

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ひとりでできるかどうかは置いといて、これぞ神の啓示!まさしく神託!

僕とシェイナには答えを見つけたというなんとも不思議な確信があった。
救世主は何事もなく執務に戻る。双子生誕一周年記念パーティーの準備があるからだ。

「シェイナ…、エンブリー初代の奥さんが、もしもどこか高貴な令嬢の侍女とかだったりしたら…」

ー献身的な女性なら主人を追いかけて来たかもしれないね。それなら修道生活に悲壮感が無いのもうなずけるし恋人が出来て還俗したのも理解できるー

「もし、もしもだよ?そのご令嬢がだんざ…」

ーノン!主人からの手紙はない?探して!ー

「けどさっきそれっぽいのは無かったよ?」

修道院に訳アリで貴族の子女が送られる場合、その扱いは軟禁生活となる。質素な服に質素な食事。押し込められる部屋は…まぁ色々だが、たいていは薄暗い明かり取りの窓しか無いような部屋か、酷いところだと半地下だったりする。
投獄されるよりはマシだけど、それでも修道院の敷地から出ることは許されないし、外部との接触、つまり面会や手紙のやり取りなんかも制限されていたりする。

つまり断罪令嬢の手紙も必ず検閲されたはずだ!簡単に手紙なんて…
んん?待てよ…

「シェイナ。修道院のご友人からは何通も手紙が届いているよね?」

ーうんー

「エンブリーが紙を無駄にしないよう大切にしていたように、修道院だって紙は貴重だったはずだよね?」

ーそうだろうね。当時なら相当高価なものだったと思うー

「いくら修道院が修練の場だとして、私的な手紙にホイホイ紙が使えたかな?切手だって必要だし」

ー何が言いたいの?ー

「修道院に入れられる貴族はお金の力でそこそこ待遇をあげてもらうことできるよね?それって断罪令嬢は…」

ー本来財は持ち込めない。だけど実際は多くの修道院で多少の賄賂はまかり通っている。そうでなければ修道院側もわざわざ面倒を引き受けないよー

…倫理観の薄いこの世界観の修道院ならありがちなこと…か。どこも運営はカツカツだ。

「じゃあ紙を与えたのは断罪令嬢、もとい主人だ」

ーそうか!友人からの手紙を集めて!ー

集めた手紙をシェイナはじっと見ている。何が見えるんだろう…?

ーこの友人からの手紙。これこそが多分主人からの手紙だよ。修道女にお金を握らせて代筆させたんだー

「差出人を誤魔化すために?」

ー多分ー

検閲をかいくぐるためにお。念には念を。余程の事をしたんだろうけど…
けど、そうと分かれば手紙の見方が変わってくる。あれも…これも…何通か残っている楽し気な文面には違う側面があるのかもしれない。きっと友人同士の他愛無い文通に見えるよう、敢えて楽し気に書かれているのだろう。

そして分かった事は、初代夫人の還俗と結婚を後押ししたっぽいのは主人だということ。

『あなたは馬鹿ね。私は前から思ってたわ。こんな田舎にどうして来ちゃったの?って』
『今度こそあなたはあなたの幸せを掴むべきだわ』
『ジョスはあなたに似合いの善良な人よ。どれほど貧しくとも他人のために全てを投げうつ。二人はそっくりね』

そこから読めるのは主人が彼女を巻き込んだことに後悔していて、彼女を解放したいと望んでいたこと。
それからジョスと呼ばれる男は定住地を持たない自由民で、頻繁に修道院へ出入りしていたということ。文面的にボランティア的な…?
そっか…。ジェロームのあの性格は、全部祖先から受け継がれてきたものだったんだな…ホワホワ…

頭の中で展開されるハーレクインロマンス。
主人の為に自ら出家してついて来た優しい侍女。そこで出会ったボランティアの青年。二人は恋に落ち、彼女は主人の後押しもあって還俗し青年と夫婦になった。

彼らは東部の山合いに住み始めたんだろう。そして発見される溶岩石。それで妻は縁を切っていた生家に敢えて手紙を出した。この手柄を王様に知らせて欲しいと、愛する夫のために。
大きな功績。当時の王様はすぐに褒賞として叙爵と配領を決めた。そこに割り込むブラトワとフレッチャーの遠縁。

「初代の奥さんは生家と縁を切ってたのかな?」

ー貴族の志願修道女はそれなりに敬われる。それが還俗して平民の男に嫁ぐなんて…当主はきっと許さないー

平民の…田舎の…それも多分貧しい男…スリーアウトか。

ーだけど何故叙爵を見過ごしたかは分かった。妻の生家が口をきいた以上、一旦与えられた叙爵まで取り上げては社交界で余計な憶測を生むー

「叙爵させたことで夫人の生家に対する体裁は整えたってことだね」

ーそう。夫人と初代は与えられた土地が貧しいからと言って文句を言う人たちではなさそうだしー

「悪しき企みで配領された土地が違っていても、誰一人気づかなかったってことか…」

ーそうして歴史に埋もれていったんだよー

これがエンブリーとブラトワに流れ続けた因縁!ってことは…

「夫人の生家ってどこなんだろう?今も健在かな?」

ーどうかな?手紙の類は無かったから分からないなー

「あ、待って。エンブリーの紋章、二羽のカラスはどうしてカラスになったんだろう?黒髪だから?」

ーノンは馬鹿だね、王都にいる王がどうしてジョスの髪色を知っているの?ー

1歳児にバカ呼ばわりされるシャノン・プリチャード、もうすぐ17歳…

ー…だけど黒い羽の紋章を持つ一代貴族が過去にあったと思う。それが生家かな?ノン、探してみてー

「おーやシェイナ君、賢い君が覚えていないとは…」

ー消えた一代貴族のことまで全ては覚えていない!いいから探して!ー

カチンときたらしい。これは暗に現存なら全部覚えているという意味だ。このプライド高さこそオリジナルシャノン。

それにしても、探して!と言われたところで時間はすでに夕刻、一日中閉じこもっていた僕たちは夕食の時間だ。
ヘロヘロになりながらライブラリを出てさらにホールを抜けダイニングに向かおうとすると、おや?僕のアンテナが何かに反応を示している。

このかぐわしい香りはもしや…

「ああっ!やっぱりジェローム!い、いらしてたんですか!やだ!言ってくれたら良かったのに!」

一日中ライブラリに居て埃っぽくないかな?汗臭くないかな?ああ!シャワー浴びたかった!

「たった今到着したばかりです。今日はプリチャード侯と共に証言の打ち合わせをしていたので閣下がお誘いくださったのですよ」

お父様グッジョブ!え?これはご褒美?勤労の報酬なの?!シェイナやったね!小さな指で親指を立てるシェイナ。何故そんなポーズを知ってるかって?…教えたのは僕だ。




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