悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド

kozzy

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高等部2学年

125 結婚式と…②

笑顔でいながら目の笑っていないお兄様に、レグルスだって黙っていない。

「ハインリヒ…、臣下などと仰々しい。君は陛下の臣下であって私の臣下ではないだろう?」
「いいえ。王太子である貴方様はすでに君主も同じ。私にとっても、もちろんテオドールにとっても」
「ハインリヒ、私はテオを臣下などと」

「いいえ、我らは王国の忠実な臣下。必要であればいつでもテオドールの知恵ぐらいはお貸しいたしましょう。お分かりか?これは私の心からの忠言だ」

あ、あれ?これって…あっそうか!
お兄様は僕を宮廷のお役人にしようとしてるのか!アイデアくらいならいくらでもだすからそれで満足しろって。

「よすのだハインリヒ」

不穏な気配に割って入ったのはお父様だ。

「ですが殿下。テオドールとの婚儀には後継の事も含めいまだ懸念を示す者がいるのも事実。今一度ゆるりと検討なされるが良かろう」
「レッドフォード侯…」

「どうも貴方はその聡明さゆえに生き急いでいるように見える。もう少し周りに目をやってはどうか。私が言うのもおかしな話だが…」

周りも様子を察し騒めき始める。

オリヴィアさんごめんなさい。せっかくのお祝いの日に、僕のことで水を差して…
こんなつもりじゃなかったのに、ああ…申し訳なさ過ぎて、もう泣きそう…

「レグルス殿下、そしてハインリヒ、レッドフォード侯もお静かに」
「宰相…」

「この祝福されし日になんという愚かな振る舞いを。天の怒りに触れる前に両者とも控えなされよ」
「公よ、私は殿下の御身を心配して言っているのだ」
「だとしてもだ」

「父上、いっそ今この場所でテオドールに聞いてはいかがでしょう。それがもっとも早く確かな結論だと思いますが」

「えぇ⁉」

「さぁテオドール。君がどうしたいか言葉にするんだ。僕の言葉を覚えているね。大丈夫だ。さぁ!」


な、なんて無茶振りをデルフィ…。でも、大丈夫だって言った。安心しろって…。デルフィはそう言っ…

「ぼ、僕は…」

「僕は?」
「テオ、言いなさい」

二人の圧が怖い!

僕に詰め寄るレグルスはいつもの涼しい笑顔で、お兄様もいつものクールなそぶりで。
その周りには険しい顔のどこかの侯爵や伯爵、偉い人達が回りを囲んでいる。
中にはデルフィのお父さんやタウルスのお父さん、当然アルタイルのお父さんも居たりして…

…なんならリヒャルトくんちのお父さんまでいるじゃん…

デルフィは思った通りにって言ったけど、そんなこと言ったって、僕はいつだってずっと、家族を巻き込みたくは無かったのだ。それはもう、ゲームのバッドエンドを警戒していたあの頃からずっと。

ああ、だけどオリヴィアさんにも言われたっけ。お兄様の心配はいらないから好きにしろって…そうそう、悪い子のままで居て良いって言われたんだ。

悪い子、悪役令息…。僕に根付く頑固な頑固な悪役設定。

前世で僕はいつでもお利口だった。
褒められるのが大好きな僕は、いつだって外面が良かったし反抗なんかしなかった。
おじいちゃんおばあちゃんのお手伝いなら何でもしたし、お母さんの言う通り勉強だってちゃんとした。
お父さんのいうとおり危ないことはしなかったし、お姉ちゃんに貸してと言われたらゲームだって快く貸した。

だから僕はいつだってちやほやされたのだ。家族という家族から可愛がられて…、そうして僕は小さな国の王子様どころか、いつでも頂点に居る王様だったのだ。

けど、いつだって僕は国民かぞくの事を考えた!
はっ!これぞまさに、義務と権利の縮図!

ああー!もう嫌だ!こんなのは僕じゃない!僕は…僕は悪役令息なんだから!

断罪ストーリーは一年目にもう終わってる。これはすでに僕だけのストーリー。
それなら何言ったってきっと大丈夫!
だから見よ!悪役令息の神髄を!

「僕は…僕は大好きな人とイチャイチャして過ごしたい。二人で並んでお弁当食べて、たわいない話しながらキャッキャしたい。買い物行ったり動物園行ったり、そんなデートイベントしてみたかったし、学校抜け出して二人でこっそり出かけるとかもしたかったし、僕を奪い合う二人の前で「ケンカはやめて」って言いたかったし、舞踏会でダ…は別にいいとして、そういうのをもっといっぱい経験したいの」

「テオ…」

「結婚とか婚約とかそういう重いのじゃなくてもっとこう、青い春って感じの…」

「お兄様…」

「好きな人には囲まれたいけど…重いのっ!なんかこう全てがっ!」

「テオドール…」

「レグルスは僕と結婚したいって言ったけど恋愛したいと思ってる気がしない!」

「そんなことは…」

「ここまできたらぶっちゃけるけど…『みら学』のときめき系イベントみたいな、そういうのを経験したいのっ!僕がしたいのは〝お付き合い”なのっ!結婚相手は欲しくないっ!」



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ついにお兄様が爆発した。ああ見えて色々我慢もしていたのだろう、あまりそうは見えなかったけれど。

お兄様の可愛らしいささやかな、本当にささやかな願望。
言ってくれたらそれくらい、と思わなくないけど、「結婚相手は欲しくない」そのはっきりとした主張に、殿下以前に周りの貴族たちがざわめきだした。

「殿下に向かってなんという不敬な…」
「いくらレッドフォードの子息と言えどあれは…」
「神童だ愛し子だなどと言われ、図に乗っているのではないか」
「ところでみらがくってなんだ?」

ハインリヒ様は「よく言えたね。」と悦に入っているが、はぁ…どうするおつもりなんだろうか。この惨状を。

アルタイルと顔を見合わせため息をつく。
アルは「俺も良い線言ってたんだが…」と馬鹿なことをほざいている。それを言うなら僕のほうが!

ゴホン…

「テオドール、それは私の婚約者候補から外れたいと言う事かい?」
「うぅ…だってそれで良いって言った…」
「確かにね。だけど本当にそれを言う貴族子が居るとは考えもしなかったよ」

少しばかり笑顔の凍り付く殿下。彼のあからさまではないが確固たるプライド。
まさかお兄様がここまで動じないなんて…思ったより男らしい♡

「え、だって最初からそういう話だったよね?ドラブ家のことは感謝してる。けどあれはレグルスにだってラッキーだったよね。レグルスはカッコいいし嫌いじゃないけど、結婚って早くない?僕まだ十六だよ?」

「テオドール、貴族の子女では至って普通の…」
「だって、だって」

久しぶりの癇癪と久しぶりの地団太。なんだか懐かしい。

と、その時。騒めく周囲を押し黙らせるかのように空が輝いたのだ。






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