コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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番外 最終日~春コレクション~

春コレ当日…

主観客となる貴族は朝が遅い。その貴族に合わせてこのコレクションは夕方スタートである。
だが、実を言うと僕はこのコレクションに秘密兵器を持参している。それはなんと…

エヴァがマルティノに依頼していた活動写真機のプロトタイプだ!
が、あくまでこれはプロトタイプ。未完成品につき実に人力かつ単純な仕組みである。

マルティノが完成させたのはフィルムの下に光源を当てスクリーンに拡大して映し出す機械。学校のスライドプロジェクターを思い出してもらうと分かりやすいだろう。

理屈は…よく分からなかったが光源をレンズでなんとかしてなんとかする…、要するにマルティノはすでにレンズのエキスパートってことだ。

そして一本につなぎ合わせてあるたくさんの写真フィルムを手動で一コマずつ動かしていく。

今取り組んでいるのはこれを自動化する部分ね。

カクカクしたストップモーションみたいな三十分ほどの動画だがこの世界では実に画期的だ。

映像はイヴァーノ・モードの縫製工場における少年少女の、仕事したり…ワイワイランチしたり…という、実にたわいない日常風景である。が、思い出してほしい。縫製工場にはBKDのメンバーが居たということを。

この日常風景は彼女らがまだお針子兼業だった時のもので、写真は彼女らを中心にしてフィルムを繋げてある。

つまりこれはBKDのファンに向けたファンサでもあり、尚且つ優良企業イヴァーノ・モードの福利厚生を知らしめ、またお針子の丁寧な仕事ぶりを確認し、その品質を信頼してもらうためのものってこと。一石三鳥ダネ!

このムービー公開は貴族地区の店店にポスターを張り出し既にアナウンス済みだ

コレクションの開始まで、午後からはこれを一時間ごとに流す予定にしているのだが、多分観客はムービー観たさに二時か三時頃には入場を済ますんではなかろうか。

おおっーと!抜かり無い僕はこのムービーの五分ほどのダイジェスト版を、あの記念すべきフラメンコ発祥の店で、明日流すことも企画してある。
いわゆるBKDのプロモーション的な?

ああ…アスタリアはいい…実にいい…このコンパクトさ加減は実にいい実験場だ。



そんな当日、早朝の出来事…

コンコン

「う、うぅ~ん…何…」

基本僕は夜型であり朝型であるショートスリーパーだが、昨日の時空間トリップのせいかひどくその朝は疲れていた。

「イヴァーノ様、お客様でごさいます」
「朝っぱらから?誰?」
「それが…」

「な、何?」

言い渋る公爵邸の執事を不審に思いながら、恐る恐る向かった温室には美しく座る王様と仮王妃様がいた……庶民服の。

「な、何ですかその恰好!!!」
「ふふ。せっかくの機会だからわたくしたちも仮装して街を楽しもうかと思って」

「えっ!」

カタリーナ様の話はこうだ。

今日のアスタリア王都はイヴァーノ・モード春コレにより、王都中の主だった貴族は闘技場に集まり貴族街はもぬけの殻になるだろう。

また市井の民も、これだけ国内外から人が集まり祭りを楽しんでいるのだから、普段なら部外者=不審者となる路地に見知らぬ顔がいても目立たないだろう。って…

ワナワナワナ…

「あ、まっーーーい!甘すぎるよ!」

さすがアマーディオの妹!こんなところに遺伝子が隠れていたか!ぬかった!

「祭りの庶民街なんて普段以上にみんな浮き足立つんだから!何かあったらどうすんですか!」

スリとかナンパとか!酔っぱに絡まれたりとか!!!

「あら、大丈夫よ?わたくし二度目ですもの。フフ、そうでしょう?エ・ヴァ」

はあぁぁぁぁーん!?

「あの時と違って僕はご一緒出来ないんですよ!春コレの主催なんだから!」
「安心なさい。もちろん侍女に護衛、供回りは同行してよ。全員仮装して庶民の家族になるの。ウフフ」

ウフフじゃなく!

カタリーナ様の同行者なんて所詮全員世間知らずじゃないか!

「まずいですって…、ルイージ君なんとか言っ」
「イヴ様、私は一度あの地区をこの足で歩いております。初めてではないのだし心配無用です」ウキウキ

うっ!ルイージ君から変なアドレナリンが漏れ出している!しまった…コスサミの熱気にあてられたか…

「いいからイヴァーノ。わたくしとルイージ様を早く別人にしてちょうだい。さすがにこのままの容姿では障りがあるでしょう?」

障りしかないでしょーが!

「イヴ様、今日は宮廷の官吏も皆闘技場に詰めており手薄なのです。そこで私は皆の手を煩わせないよう公爵邸で休養すると言って戻ってきたのです。これは千載一遇の好機と思われませんか」

「思われませんか?…って…思いません!」

「生まれ変わったアスタリアをこの目で見たいのです。記念すべき日として」
「『一枚の絵は千の言葉に値する』昔からそう言うでしょう?」

知らんがな!

「さ、お願いします。ここに掛ければよろしいですね?」カタン

ぐっ!実質王命じゃん、こんなの!

「フ、フラヴィオに」
「しぃ!お兄様には内密に」
「えぇ…」
「フラヴィオ様は心配性ですもの」

僕なら抱き込めるってか!舐められたもんだな!

「く、くくぅっ!し、仕方ない!」

実は言い出したら引かないルイージ君。負けたよ…

僕はよくよく考えたうえミケーレとマヌエルを貸し出すことにした。
僕とフラヴィオは一日中VIPルームに居るし護衛は必要ない。(というか、アレクサ様、ペネロペ様の護衛でお腹一杯だって)

彼らは昨年のおり、フラヴィオの護衛として庶民地区のホテルに毎日来ていたし、今は僕に付いてサルディーニャの庶民街を頻繁に出歩いている。
僕と屋台主の丁々発止もよく仲裁しているし、カタリーナ様たちの供回りよりは庶民街で起きそうなハプニングにも対応できるだろう。

「メイクボックス持ってきます…」シブシブ…

僕の前世仕込みなコスメイク技術は既に整形並みだ。

「まあ可愛いらしい!ルイージ様いかが?」
「良くお似合いですカタリーナ。私はどうでしょう?」
「どこから見ても市井の民ですわ!」

カタリーナ様はどこからどう見てもソバカスだらけの赤毛少女だし、ルイージ君は陽によく焼けた快活そうな少年以外の何者でもない。

その後、メイクを終えた僕はフリーズするマヌエル、ミケーレに(彼らも庶民服に着替えさせた)全てを託し、後ろ髪を引かれながらも闘技場へと向かった。




「イヴ、今日は落ち着かないのだね」
「ええまあちょっと」ソワソワ
「まだ頭が痛いのかい?」
「…」

別の意味で…

「なんて素敵なショーなのかしら。カタリーナ様もお連れしたかったわ」
「連日では疲れましょう。今頃陛下と共にお休みであられますよ」

ジワ…「…」
「暑いのかいイヴ。額に汗が…」

お休み…それはどうかな?




そしてその日の夕方、はっちゃけた二人に翻弄されたマヌエルとミケーレ、そして彼らから事後報告を聞いたフラヴィオ、アレクサ様から大目玉を食らうことになるのだが…

不本意極まりない!



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