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番外 たわいもない日常
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「できたよイヴ、ほら、写真を収める額だ」
「ありがとうフラヴィオ。うん、やっぱりいい感じ」
寄木細工の写真立て、そこに入れるのは異世界から持ち込んだ一枚の写真。
そこには本物の家族、リンリンさん、そして本物のイヴァーノがこっちを見て笑っている。
イヴァーノの顔は素の状態でもなんとなくドヤって見えて、ああ本物にはかなわない…少しばかり自分のなりきりぶりの甘さを痛感させられる。
「もう少しビシビシいくべきか…でも誰に?」
ダリオもヴィットーレも、マルティノですらすでにこちら側だ。ビシビシったって…
「二コラだな。奴は最近図に乗っている。一回シメとこう」
二コラは先日正式にパンクラツィオの第二夫人、チチスベオになったところだ。第一夫人であるアルタヴィッラ侯爵家令嬢ジュリア様は大変口うるさい女性だ。これは実際サロンでドレスの打ち合わせをした僕が言うんだから間違いない。
彼女の口うるささはイヴァーノと違って、いわゆる学級委員長とか風紀医院とかのそれに近い。
つまり高位貴族の見本に服を着せたらこうなった、って感じの侯爵令嬢である。
なので公爵家からの受けはものすごくいいし、パンクラツィオも申し分なしと満足している。が、実はパンキー…彼女が苦手である。堅苦しくて嫌なんだってさ。
これはノーブルなフラヴィオ相手にうっかりポロっと口を滑らせたパンキー自身の言葉なので多分本心だろう。
もしイヴァーノと彼女が第一第二に並んでいたらどれ程家庭内がギスギスしたか…それを想像するとパンキーが二コラに走った理由もちょっとだけ理解できる。
けど彼女は非の打ちどころのない令嬢…どれ程口うるさくてもそれが正論ではパンクラツィオも尻に敷かれるしかあるまい。ププ…ざまあみろ。
二コラは調子よくご機嫌取りながらそれなりに上手くやるだろうが…彼女は多分ミエミエのゴマすりには靡かないタイプだ。
うっかりため口った僕が静かに、それでもほのかな威圧感で打ち合わせの間中褒め殺しされ続けたのも記憶に新しい。
ガーっと来ない分二コラは非常にやりづらいだろう。
「ジュリア様ぁ、これ教えて下さぁ~い」
などと得意のすり寄りをしたところで「タランティーノ公爵家の第二夫人であればその程度ご自分でこなしてごらんなさい」と冷ややかに一瞥されて終わりだ。二コラが今後どうするか、ちょっと見ものである。
「さあイヴ、もう一つだ」コト…
その隣にはもう一枚の写真。人物相関図の移動記念に、って改めて撮った〝家族写真”。
僕とフラヴィオ、その真ん中で笑うフェルたんとエルモ、少し背後に立つのがロデじい。フェルたんとエルモの足元には黒白グレーのネコが大人しく座っている。
僕の大切な二つの家族。
心残りがあるとすればここにルイルイが居ないこと…
今思えばルイージ君はずっとその存在を曖昧にしていたのだ。
ぼんやりとしたそこに居るのに居ないような存在…これって妖精みたいなものじゃない?じゃあ見えないけどきっと写っているに違いない、そう思うことで自分を納得させている。
写真屋さんを呼ぶからと言って呼び出したフランコとセルジオの写真もあるし、使用人達を一堂に集めて撮った写真もある。
僕を認めて受け入れてくれる仲間たち。これもまた僕の大事なコレクション。
僕はこうして…自分で選んだ自分のものを、キレイに並べて眺めるのが大好きだ。満足感と言うか達成感と言うか…これは多分オタクの本能。抗えない。
「イヴ、写真の誰もが笑っているね」
「確か昼間だって言うのにフランコたち一杯やってたから」
「ふふ、それだけじゃないよ、きっと」
これからもここにはたくさんの写真が並べられていくのだろう。フォルダをパンパンにして容量を圧迫してた前世のスマホみたいに。
僕がフォロワー数二千人を誇った、あのインスタ画面のように。
「さあ庭でみんなが待っているよ。行こう」
「今日は窯焼きピッツァパーティーですもんね」
「ああ。私たちの新しい門出。ビアジョッティ家の夜会だ」
フェルたんの養子記念パーティ。まさに門出だ。ビアジョッティ家がずっと続いてくっていう記念の日。
こうして毎日は続いていくのだろう。何も無かった棚に一個一個お気に入りを並べながら。
僕はオタクのサラブレッド。お気に入り、それは…
増えることはあっても決して減ることは無い。
「ありがとうフラヴィオ。うん、やっぱりいい感じ」
寄木細工の写真立て、そこに入れるのは異世界から持ち込んだ一枚の写真。
そこには本物の家族、リンリンさん、そして本物のイヴァーノがこっちを見て笑っている。
イヴァーノの顔は素の状態でもなんとなくドヤって見えて、ああ本物にはかなわない…少しばかり自分のなりきりぶりの甘さを痛感させられる。
「もう少しビシビシいくべきか…でも誰に?」
ダリオもヴィットーレも、マルティノですらすでにこちら側だ。ビシビシったって…
「二コラだな。奴は最近図に乗っている。一回シメとこう」
二コラは先日正式にパンクラツィオの第二夫人、チチスベオになったところだ。第一夫人であるアルタヴィッラ侯爵家令嬢ジュリア様は大変口うるさい女性だ。これは実際サロンでドレスの打ち合わせをした僕が言うんだから間違いない。
彼女の口うるささはイヴァーノと違って、いわゆる学級委員長とか風紀医院とかのそれに近い。
つまり高位貴族の見本に服を着せたらこうなった、って感じの侯爵令嬢である。
なので公爵家からの受けはものすごくいいし、パンクラツィオも申し分なしと満足している。が、実はパンキー…彼女が苦手である。堅苦しくて嫌なんだってさ。
これはノーブルなフラヴィオ相手にうっかりポロっと口を滑らせたパンキー自身の言葉なので多分本心だろう。
もしイヴァーノと彼女が第一第二に並んでいたらどれ程家庭内がギスギスしたか…それを想像するとパンキーが二コラに走った理由もちょっとだけ理解できる。
けど彼女は非の打ちどころのない令嬢…どれ程口うるさくてもそれが正論ではパンクラツィオも尻に敷かれるしかあるまい。ププ…ざまあみろ。
二コラは調子よくご機嫌取りながらそれなりに上手くやるだろうが…彼女は多分ミエミエのゴマすりには靡かないタイプだ。
うっかりため口った僕が静かに、それでもほのかな威圧感で打ち合わせの間中褒め殺しされ続けたのも記憶に新しい。
ガーっと来ない分二コラは非常にやりづらいだろう。
「ジュリア様ぁ、これ教えて下さぁ~い」
などと得意のすり寄りをしたところで「タランティーノ公爵家の第二夫人であればその程度ご自分でこなしてごらんなさい」と冷ややかに一瞥されて終わりだ。二コラが今後どうするか、ちょっと見ものである。
「さあイヴ、もう一つだ」コト…
その隣にはもう一枚の写真。人物相関図の移動記念に、って改めて撮った〝家族写真”。
僕とフラヴィオ、その真ん中で笑うフェルたんとエルモ、少し背後に立つのがロデじい。フェルたんとエルモの足元には黒白グレーのネコが大人しく座っている。
僕の大切な二つの家族。
心残りがあるとすればここにルイルイが居ないこと…
今思えばルイージ君はずっとその存在を曖昧にしていたのだ。
ぼんやりとしたそこに居るのに居ないような存在…これって妖精みたいなものじゃない?じゃあ見えないけどきっと写っているに違いない、そう思うことで自分を納得させている。
写真屋さんを呼ぶからと言って呼び出したフランコとセルジオの写真もあるし、使用人達を一堂に集めて撮った写真もある。
僕を認めて受け入れてくれる仲間たち。これもまた僕の大事なコレクション。
僕はこうして…自分で選んだ自分のものを、キレイに並べて眺めるのが大好きだ。満足感と言うか達成感と言うか…これは多分オタクの本能。抗えない。
「イヴ、写真の誰もが笑っているね」
「確か昼間だって言うのにフランコたち一杯やってたから」
「ふふ、それだけじゃないよ、きっと」
これからもここにはたくさんの写真が並べられていくのだろう。フォルダをパンパンにして容量を圧迫してた前世のスマホみたいに。
僕がフォロワー数二千人を誇った、あのインスタ画面のように。
「さあ庭でみんなが待っているよ。行こう」
「今日は窯焼きピッツァパーティーですもんね」
「ああ。私たちの新しい門出。ビアジョッティ家の夜会だ」
フェルたんの養子記念パーティ。まさに門出だ。ビアジョッティ家がずっと続いてくっていう記念の日。
こうして毎日は続いていくのだろう。何も無かった棚に一個一個お気に入りを並べながら。
僕はオタクのサラブレッド。お気に入り、それは…
増えることはあっても決して減ることは無い。
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