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第一章『幼少期』
第14話『祝賀会』
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「叔母様、ジャックは優秀な子ですから私の過去を引き合いに出さないでもらってもいいでしょうか?」
「あんたに似たらろくな人間にならないから忠告してやってるだけさ、何が悪いのさ?」
アラン3歳の誕生日兼、兄ジャックの祝賀会前にマリーナの母であるエルザ叔母さんが父フィリップと口論になっていた。
「叔母様、私を責めるのは勝手ですが今日は我が子の祝賀会なのですから少しはわきまえてもらってもいいでしょうか?」
「こういう時じゃないとあんたはいつも話を聞かないだろう? そうやっていつも逃げてばかりじゃないか。それとも『エブゾフェア大公』が来ているからボロを出したくないのかい?」
エルザ叔母さんは父フィリップを更に煽り、痛い所を突かれたのか父フィリップは更に顔を歪めていた。
――おいおい、どれだけの事をしたんだ父は…。
「エルザ母さん、これ以上は辞めてっ!もう祝賀会は始まるんだからっ! アナタもいい加減謝りなさい!」
母マリーナは耐えきれず2人の間に止めに入ったが父フィリップは頑なに謝ろうとしない。
「そうだね、私は孫の為に来たんだ。 こんな奴相手にせず祝おうじゃないか!」
どうやらこれ以上揉める事は無くなったようだが…それでもエルザ叔母さんは一言多かった…。
エルザ叔母さんは母マリーナに会場に連れて行かれ俺も一緒に行こうとしたが父フィリップに引き止められた。
「アラン、ジャック。 先程の叔母様の件は申し訳ない…事情についてはまた機会が有ったら話すが今日じゃない。 今日はお前たちが主役の日だ! だが今回はいつもの祝賀会やパーティーでは無い。 今回のジャックの合格の件で我がデュフォール家も『エブゾフェア大公』から一目置かれ、今回来賓として出席してもらえる程の存在となった。 これは我が貴族にとっても大きな進歩でもある。 だから会場ではふたりともデュフォール家の貴族とした振る舞いをするように心がけてくれ!」
どうやら父はエルザ叔母さんとの関係をどうしても話したくない様だ。
それにしてもジャック兄を育て上げたのは父だが、今回の成果をジャック本人ではなく我が物顔をするのがにじみ出てくるのだがマジでやめてくれないかな…。
「お父様にはご迷惑かけないようにしますので安心して下さい。」
「うむ! 期待しているぞ!」
兄ジャックは貴族らしくスマートにお辞儀をしながら答えたが俺は答えなかった。
そんな俺に父フィリップは怪訝そうな顔をしながら「アラン、叔母様の事は気になるだろうがまだアランは幼いから言っても理解出来ないと思う。 だから理解できるような歳になったらちゃんと教えるから今日だけは兄と同じように礼儀正しくするんだぞ!」
やはり貴族の父にとっても今日は大事な日なのであろう。確かに俺やジャック兄にとっても大事な日だ。だがしかし父は大事な日だからこそ家族に全てを隠し、自分の事だけしか考えていないように見える。それに残念ながら俺は『転生者』だ、3歳だが全て理解できるし今までの俺の言動を見ていればそれも分かるはずなのだ。それなのにも関わらず父はその場しのぎの「言い訳」を俺に言っているのは納得いく訳がない。仮に俺の理解力が把握してないとなると、父は俺の事を今まで全く見ていなかった事にもなる。
「とうさま、とうさまは僕を全く理解していませんね。 僕を見た目と歳だけで判断しないで下さい。それに目先の事だけを考えて行動しないでちゃんと話して頂けませんか? 僕はとうさまが逃げてるようにしか見えません。 あれだけ仲が悪い状態なのに今回の祝賀会が成功するとは僕は思えないです。」
裏でコソコソと企んでいる事を知っている俺は思考や概念が前世のままな為、父の貴族らしい考え方と行いが嫌いだ。
ましては「息子を自分の駒」のような扱いが、この異世界の貴族にとっては当たり前なのかもしれないが俺はとうとう耐えきれなくなり初めて父に対して反抗してしまった。
――3歳の誕生日で反抗期は早すぎるが…(笑)
「見た目も何も今日でやっと3歳じゃないか、確かにアランはその歳ではあり得ない位考え方が大人で知識や知識欲も有り正直凄いと思っている。 だがどれ程考え方が大人で知識が有ろうが3歳の子供な事は変わらない。 子供は大人になる為に親から色々教わり成長していくものだよ。 だから私がまだ説明する時期じゃないと言っているのだからそうなのだ。 それにしてもそれはマリーナのローブか? 似合っているじゃないか~!」
父フィリップの取って付けた様な誉め言葉に、俺は更にヒートアップしてしまう。
「そうやって都合が悪い事は全て後回しにして誤魔化して逃げるんですね? それはとうさまが言う『大人』であるならそれは『ただ単に自分の都合の良い方だけに上手く物事を運んでいくだけの醜い大人』だと僕は思ってしまいます。 もう一度言います、僕を見た目と歳だけで判断しないで下さい。 とうさまやジャック兄が裏でコソコソ僕に対して企んでいるのも知っていますし、今後どう行動しようが勝手ですが、目先の事だけを考えて後で家族に恥晒すような事はしないで下さい。」
「なっ!!!?? 何故その事をッ!?」
驚きのあまりジャック兄がつい反射的に言葉を発していた。
――あ~あ、ジャック兄よそれ完全にボロが出てるぞ…カマかけたとも思わなかったのか?前世で考えればまあ7歳にしては相当良い方だけどね。 それにしても今の発言で父フィリップの顔色が変わってしまっているのが怖い…言わない方が良かったかな…。
「アランが見た目と年齢で判断していけない事は今のでよく分かった。 それ程の息子を持てて嬉しい反面それを見抜けなかった私の落ち度でもある、すまなかった。 だが今日は無しだ! もう祝賀会は始まってしまうからその後で良ければちゃんと話そう。」
「分かりました。 とうさま、男に二言は無いですよ?」
「『二言』ていうのがよく分からないが約束は守る。それにアランがこれ程頭が良く、曲がった事が嫌いな事も分かった。今後は裏で話はせず直接意見を聞くからそのつもりでいてくれ。 さあ息子たちよ行くぞ!」
俺は正直に言えばまだ言い足りなかったが、もう祝賀会が始まってしまうみたいだったのでここまでかな…。
俺は父フィリップの後ろに続いて付いていくジャック兄の横に並びながら会場に入っていった。
祝賀会の会場は、屋敷の離れに有る来客用の為に作られた広いパーティー用会場で中に入ると歓声が聞こえた。
会場には大きな丸いテーブルが幾つも存在しており、その上には豪華な料理が並んでいた。
見た目は前世で言う少し豪華な『立食パーティー』みたいな感じで使用人と、来賓の方は『エブゾフェア大公』だけではなく、『エブゾフェア公国』所属の貴族たちやリネレー村の代表数名も参加しており、『大公』とデュフォール家、家族分だけは専用の席を設けられてみな腰を下ろしていた。 母マリーナやエルザ叔母さん、エドガー兄も既に着席済みだ…エドガー兄なんかすまない…。
そして父フィリップの言葉によって祝賀会は始まった。
「皆様、本日は我が子の祝賀会にお集まり頂き誠に有難う御座います! 我が長男であるジャックが今までの歴史を塗り変える程の偉業を成し遂げ、父として嬉しく思い更に誇らしくも思います。 それもこの『エブゾフェア公国』で私がスタンベルク伯爵になれたからこそ今の環境で、今の功績を出すことが出来た事でもあり『エブゾフェア大公』及び各貴族に感謝しております。 また『お互いの助け合い』を信条として政策してきたスタンベルク領民にも深く感謝しております。 我が長男であるジャックは私や家族の宝でもあり、将来『国』の宝にもなるでありましょう! その未来の『宝』の為に本日は祝賀会を開く事にしました。 また本日は我が三男であるアランの3歳の誕生日でもあります! アランはまだ3歳ですが私でも計り知れぬほどの知識量と思考力を持ち『宰相の原石』だと私は感じております! この未来ある優秀な我が子を祝すと共に今後の『エブゾフェア公国』の大いなる発展を願い祝杯を挙げるとしましょう! 乾杯ッ!!」
『『乾杯~!!』』
――えええ!? てか『宰相の原石』とかナニソレ…。 宰相になるなんて聞いてないし嫌だぞ…。
祝賀会が始まるなり貴族たちが父や僕たちがいる所にやってきて話しかけてくる。
それをジャック兄たちは優雅に礼儀をし、俺も見様見真似で礼儀をした。
周りを見渡すと、父やジャック兄は会話で忙しいが他の人たちは各人料理を堪能していた。 俺も料理を堪能したかったが父達と一緒にいる手前我慢している状態だ。
そして今回の祝賀会はあくまでも俺の誕生日は「ついで」なので話しかけてくる貴族は殆ど父フィリップやジャック兄ばかりで俺には殆どの貴族は話して来なかったが…そんな中『エブゾフェア大公』が笑顔で俺に話しかけてきた。
「アラン君! お誕生日おめでとう!本当に君が凄く頭がキレるかどうか試してもいいかい?」
普通貴族は『殿』を使用するハズなのだが『エブゾフェア大公』は何故か『君』で呼んだきた。それにしてもいきなり試されるのは緊張するが流石に貴族をまとめ上げる『大公』の言葉なので逆らえない。てか威厳のある顔だちでその笑顔は怖すぎる…。
「はい、大公様。」
怖すぎて感謝の言葉無しでつい短く返事してしまった…。
「今の貴族を見てどう思うかい?」
大公様も短い質問だった。それだと抽象的すぎて回答しにくい…。
「それは貴族個人についてでしょうか? それとも貴族社会そのものについてでしょうか?」
「君が思った通りでいい。」
成程、俺がどう考えて答えるのかが知りたいのであろう、であれば全て答え尽くすだけだ。
「失礼かもしれませんがまず最初に言いますと、『世襲制』である今の『貴族社会』では国の発展には限度が有り、場合によっては衰退して滅びます。 理由は簡単です、世襲制の場合子供が出来なかった時点で滅んでしまうし子供が出来たとしても親より優秀でなければ国は発展しませんし子が無能であれば国が衰退します。 【固有スキル】の概念では『遺伝しやすい』という特徴が有るので余程運が悪いという事が無ければ一定以上の能力は見込めます。ですがそれも全て個人の性格に左右されます。これは2つ目に言いたかったことですが、『貴族個人』のプライドが高すぎる人が多いという事、悪く言えば性格が悪い貴族が多い事です。これは先程に言った、『個人の性格に左右される』のに当てはまる事ですが、貴族という『地位』にプライドが高すぎて貴族が地位が低い人たちには見下し意見を聞かず地位を利用していう事を聞かせる。これでは国は衰退します。ただ威張っている貴族に民が付いていく事が少ない事ぐらい心理的に考えれば分かるはずですしプライドが邪魔しているせいで本人も他人の意見を聞かず新たな発見をすることが出来ず、固定観念にとらわれて成長出来ません。 そうなるといくら国の上位貴族が優秀でもその下についている『世襲制』貴族が無能だと国は発展できませんし、場合によっては私利私欲に走りクーデターによって国が滅びます。また有能な貴族でも有能なほど知識が多い為何か企む可能性があります。 そうなると本当の信頼関係が無ければ裏切られる恐れもあります。 僕は『世襲制』事態を完全に『悪』とは言いませんが地位に執着しやすい思考を持ちやすい子供の頃にちゃんと教育する事によって貴族のプライドについてはいくらか緩和出来ると思っています。 また、有能な人材であれば平民でも貴族にする制度を与えその機会を『剣術』や『魔術』だけではなく、学力や思考能力も考慮して地位を与えれば有能な貴族が手に入り、国を発展させることが出来ます。 その優秀な人を集める方法ですが~」
と色々話してる最中に大公様に止められた。
「もうよい、もうよい! 君は本当に3歳なのか? 君の父が『宰相の原石』と言ったのも納得した。というよりも正直言うが今でもなれてしまうかもしれない…。君はそれ程の思考能力を持っている事が分かった。 これは我が『エブゾフェア公国』も安泰だな…、今後について君の父に話す事が増えたから失礼する。」
そう言うと『エブゾフェア大公』は父フィリップの元に歩いて行った。
「はい、また機会が有れば宜しくお願い致します。」
あぁ!最後の返事完全に前世の素の言葉が出てしまっている…、なんか凄い目上の人と話す時、最初と最後で緊張する癖マジで前世のままだな…。
「お誕生日おめでとう! なにホッとしているんだい?」
大公様の対応の後でホッとしていると今度はエルザ叔母さんが話しかけてきた。
「エルザおばあさま、有難う御座います。皆料理を食べているのに貴族はみな会話ばかりして大変そうですが、僕は父達と一緒に居て気疲れしてしまったので少し休憩がてら料理を食べたいです。」
「大公様と話したのだから緊張するのは仕方ないね、それよりも料理取ってきてあげるから食べな! 子供は遠慮せず食べて成長するのが仕事だよ!」
と言いエルザ叔母さんは料理を皿に取ってきてくれた。なんて優しい祖母なんだ…と感動しながら料理を食べていると、母マリーナとエドガー兄もいつの間にかこちらに来ていた。
「ア~ラ~ン~~!!お誕生日おめでとう~~♪」
「なんかジャック兄とアランずりーぞ!! 俺だけ仲間外れにしやがって!」
「エドガーその時は私の家に来るといい、盛大に祝ってやるぞ! もちろんフィリップ抜きだがな!」
エルザ叔母さんは謎に勝手に決め始めてるし、後ろから抱き着く母と普段通りのエドガー兄の言葉を聞けて俺は何故かホッとしていた。やはりこういう場はいつまで経っても慣れないのだろう…。てか料理こぼしたくないから今抱き着くのは勘弁してくれ母よ…(汗)
「かあさま、有難う御座います。勿論エドガー兄の時もちゃんと祝うから大丈夫ですよ!その時は今日みたいではなくエルザおばあさま含めた『家族だけで』祝いましょう!」
「オウッ!」
軽くイジったつもりだったのだが普通に返事されてしまった。どうやらエドガー兄もこういう場は苦手なのだろう。
「アラン意外と意地悪な奴なんだな~!」と俺の頭をワシワシする祖母とそんなエドガー兄や俺を見て、母マリーナはいつも通り「あらあら♪」と笑顔だがいつもよりも数段ほど期限良さそうだった。
仲良く家族で料理を堪能している途中俺は父フィリップに声をかけられた。
「アラン! 料理を堪能してる所悪いが来てくれないか!」
楽しくご飯を食べていた時にフィリップの登場でエルザ叔母さんが露骨に嫌な顔をしている。
父フィリップは『エブゾフェア大公』と一緒に居た。もしかして『宰相』の話だろうか…嫌なんだが…。
俺は渋々皿を置きフィリップの元へ小走りで向かった。
「とうさま、なんでしょうか?」
「アラン、いきなり呼んですまなかった。 本当は祝賀会の最後にプレゼントとして与える予定だった『真眼の水晶』を今ここで与えるから鑑定して欲しい! これは『大公様』の希望なんだ、良いかい?」
父フィリップはそう言うと高そうな木箱から水晶を取り出した。 ――これが個人の能力を鑑定できるって噂の高級アイテムか…。
「これを両手で持って『心理眼』って唱えるんだ。用紙にする念写魔法はマリーナに頼もう。」
ついに俺のステータスが分かるのか、物凄くドキドキする…っていうか『大公様』の前だから猶更緊張してしまう…。
――お願いだから今までの俺の努力無駄になってないでくれよ…
「いきます! 『心理眼』ッ!!」
俺は精一杯心を込めて唱えたのだった。
「あんたに似たらろくな人間にならないから忠告してやってるだけさ、何が悪いのさ?」
アラン3歳の誕生日兼、兄ジャックの祝賀会前にマリーナの母であるエルザ叔母さんが父フィリップと口論になっていた。
「叔母様、私を責めるのは勝手ですが今日は我が子の祝賀会なのですから少しはわきまえてもらってもいいでしょうか?」
「こういう時じゃないとあんたはいつも話を聞かないだろう? そうやっていつも逃げてばかりじゃないか。それとも『エブゾフェア大公』が来ているからボロを出したくないのかい?」
エルザ叔母さんは父フィリップを更に煽り、痛い所を突かれたのか父フィリップは更に顔を歪めていた。
――おいおい、どれだけの事をしたんだ父は…。
「エルザ母さん、これ以上は辞めてっ!もう祝賀会は始まるんだからっ! アナタもいい加減謝りなさい!」
母マリーナは耐えきれず2人の間に止めに入ったが父フィリップは頑なに謝ろうとしない。
「そうだね、私は孫の為に来たんだ。 こんな奴相手にせず祝おうじゃないか!」
どうやらこれ以上揉める事は無くなったようだが…それでもエルザ叔母さんは一言多かった…。
エルザ叔母さんは母マリーナに会場に連れて行かれ俺も一緒に行こうとしたが父フィリップに引き止められた。
「アラン、ジャック。 先程の叔母様の件は申し訳ない…事情についてはまた機会が有ったら話すが今日じゃない。 今日はお前たちが主役の日だ! だが今回はいつもの祝賀会やパーティーでは無い。 今回のジャックの合格の件で我がデュフォール家も『エブゾフェア大公』から一目置かれ、今回来賓として出席してもらえる程の存在となった。 これは我が貴族にとっても大きな進歩でもある。 だから会場ではふたりともデュフォール家の貴族とした振る舞いをするように心がけてくれ!」
どうやら父はエルザ叔母さんとの関係をどうしても話したくない様だ。
それにしてもジャック兄を育て上げたのは父だが、今回の成果をジャック本人ではなく我が物顔をするのがにじみ出てくるのだがマジでやめてくれないかな…。
「お父様にはご迷惑かけないようにしますので安心して下さい。」
「うむ! 期待しているぞ!」
兄ジャックは貴族らしくスマートにお辞儀をしながら答えたが俺は答えなかった。
そんな俺に父フィリップは怪訝そうな顔をしながら「アラン、叔母様の事は気になるだろうがまだアランは幼いから言っても理解出来ないと思う。 だから理解できるような歳になったらちゃんと教えるから今日だけは兄と同じように礼儀正しくするんだぞ!」
やはり貴族の父にとっても今日は大事な日なのであろう。確かに俺やジャック兄にとっても大事な日だ。だがしかし父は大事な日だからこそ家族に全てを隠し、自分の事だけしか考えていないように見える。それに残念ながら俺は『転生者』だ、3歳だが全て理解できるし今までの俺の言動を見ていればそれも分かるはずなのだ。それなのにも関わらず父はその場しのぎの「言い訳」を俺に言っているのは納得いく訳がない。仮に俺の理解力が把握してないとなると、父は俺の事を今まで全く見ていなかった事にもなる。
「とうさま、とうさまは僕を全く理解していませんね。 僕を見た目と歳だけで判断しないで下さい。それに目先の事だけを考えて行動しないでちゃんと話して頂けませんか? 僕はとうさまが逃げてるようにしか見えません。 あれだけ仲が悪い状態なのに今回の祝賀会が成功するとは僕は思えないです。」
裏でコソコソと企んでいる事を知っている俺は思考や概念が前世のままな為、父の貴族らしい考え方と行いが嫌いだ。
ましては「息子を自分の駒」のような扱いが、この異世界の貴族にとっては当たり前なのかもしれないが俺はとうとう耐えきれなくなり初めて父に対して反抗してしまった。
――3歳の誕生日で反抗期は早すぎるが…(笑)
「見た目も何も今日でやっと3歳じゃないか、確かにアランはその歳ではあり得ない位考え方が大人で知識や知識欲も有り正直凄いと思っている。 だがどれ程考え方が大人で知識が有ろうが3歳の子供な事は変わらない。 子供は大人になる為に親から色々教わり成長していくものだよ。 だから私がまだ説明する時期じゃないと言っているのだからそうなのだ。 それにしてもそれはマリーナのローブか? 似合っているじゃないか~!」
父フィリップの取って付けた様な誉め言葉に、俺は更にヒートアップしてしまう。
「そうやって都合が悪い事は全て後回しにして誤魔化して逃げるんですね? それはとうさまが言う『大人』であるならそれは『ただ単に自分の都合の良い方だけに上手く物事を運んでいくだけの醜い大人』だと僕は思ってしまいます。 もう一度言います、僕を見た目と歳だけで判断しないで下さい。 とうさまやジャック兄が裏でコソコソ僕に対して企んでいるのも知っていますし、今後どう行動しようが勝手ですが、目先の事だけを考えて後で家族に恥晒すような事はしないで下さい。」
「なっ!!!?? 何故その事をッ!?」
驚きのあまりジャック兄がつい反射的に言葉を発していた。
――あ~あ、ジャック兄よそれ完全にボロが出てるぞ…カマかけたとも思わなかったのか?前世で考えればまあ7歳にしては相当良い方だけどね。 それにしても今の発言で父フィリップの顔色が変わってしまっているのが怖い…言わない方が良かったかな…。
「アランが見た目と年齢で判断していけない事は今のでよく分かった。 それ程の息子を持てて嬉しい反面それを見抜けなかった私の落ち度でもある、すまなかった。 だが今日は無しだ! もう祝賀会は始まってしまうからその後で良ければちゃんと話そう。」
「分かりました。 とうさま、男に二言は無いですよ?」
「『二言』ていうのがよく分からないが約束は守る。それにアランがこれ程頭が良く、曲がった事が嫌いな事も分かった。今後は裏で話はせず直接意見を聞くからそのつもりでいてくれ。 さあ息子たちよ行くぞ!」
俺は正直に言えばまだ言い足りなかったが、もう祝賀会が始まってしまうみたいだったのでここまでかな…。
俺は父フィリップの後ろに続いて付いていくジャック兄の横に並びながら会場に入っていった。
祝賀会の会場は、屋敷の離れに有る来客用の為に作られた広いパーティー用会場で中に入ると歓声が聞こえた。
会場には大きな丸いテーブルが幾つも存在しており、その上には豪華な料理が並んでいた。
見た目は前世で言う少し豪華な『立食パーティー』みたいな感じで使用人と、来賓の方は『エブゾフェア大公』だけではなく、『エブゾフェア公国』所属の貴族たちやリネレー村の代表数名も参加しており、『大公』とデュフォール家、家族分だけは専用の席を設けられてみな腰を下ろしていた。 母マリーナやエルザ叔母さん、エドガー兄も既に着席済みだ…エドガー兄なんかすまない…。
そして父フィリップの言葉によって祝賀会は始まった。
「皆様、本日は我が子の祝賀会にお集まり頂き誠に有難う御座います! 我が長男であるジャックが今までの歴史を塗り変える程の偉業を成し遂げ、父として嬉しく思い更に誇らしくも思います。 それもこの『エブゾフェア公国』で私がスタンベルク伯爵になれたからこそ今の環境で、今の功績を出すことが出来た事でもあり『エブゾフェア大公』及び各貴族に感謝しております。 また『お互いの助け合い』を信条として政策してきたスタンベルク領民にも深く感謝しております。 我が長男であるジャックは私や家族の宝でもあり、将来『国』の宝にもなるでありましょう! その未来の『宝』の為に本日は祝賀会を開く事にしました。 また本日は我が三男であるアランの3歳の誕生日でもあります! アランはまだ3歳ですが私でも計り知れぬほどの知識量と思考力を持ち『宰相の原石』だと私は感じております! この未来ある優秀な我が子を祝すと共に今後の『エブゾフェア公国』の大いなる発展を願い祝杯を挙げるとしましょう! 乾杯ッ!!」
『『乾杯~!!』』
――えええ!? てか『宰相の原石』とかナニソレ…。 宰相になるなんて聞いてないし嫌だぞ…。
祝賀会が始まるなり貴族たちが父や僕たちがいる所にやってきて話しかけてくる。
それをジャック兄たちは優雅に礼儀をし、俺も見様見真似で礼儀をした。
周りを見渡すと、父やジャック兄は会話で忙しいが他の人たちは各人料理を堪能していた。 俺も料理を堪能したかったが父達と一緒にいる手前我慢している状態だ。
そして今回の祝賀会はあくまでも俺の誕生日は「ついで」なので話しかけてくる貴族は殆ど父フィリップやジャック兄ばかりで俺には殆どの貴族は話して来なかったが…そんな中『エブゾフェア大公』が笑顔で俺に話しかけてきた。
「アラン君! お誕生日おめでとう!本当に君が凄く頭がキレるかどうか試してもいいかい?」
普通貴族は『殿』を使用するハズなのだが『エブゾフェア大公』は何故か『君』で呼んだきた。それにしてもいきなり試されるのは緊張するが流石に貴族をまとめ上げる『大公』の言葉なので逆らえない。てか威厳のある顔だちでその笑顔は怖すぎる…。
「はい、大公様。」
怖すぎて感謝の言葉無しでつい短く返事してしまった…。
「今の貴族を見てどう思うかい?」
大公様も短い質問だった。それだと抽象的すぎて回答しにくい…。
「それは貴族個人についてでしょうか? それとも貴族社会そのものについてでしょうか?」
「君が思った通りでいい。」
成程、俺がどう考えて答えるのかが知りたいのであろう、であれば全て答え尽くすだけだ。
「失礼かもしれませんがまず最初に言いますと、『世襲制』である今の『貴族社会』では国の発展には限度が有り、場合によっては衰退して滅びます。 理由は簡単です、世襲制の場合子供が出来なかった時点で滅んでしまうし子供が出来たとしても親より優秀でなければ国は発展しませんし子が無能であれば国が衰退します。 【固有スキル】の概念では『遺伝しやすい』という特徴が有るので余程運が悪いという事が無ければ一定以上の能力は見込めます。ですがそれも全て個人の性格に左右されます。これは2つ目に言いたかったことですが、『貴族個人』のプライドが高すぎる人が多いという事、悪く言えば性格が悪い貴族が多い事です。これは先程に言った、『個人の性格に左右される』のに当てはまる事ですが、貴族という『地位』にプライドが高すぎて貴族が地位が低い人たちには見下し意見を聞かず地位を利用していう事を聞かせる。これでは国は衰退します。ただ威張っている貴族に民が付いていく事が少ない事ぐらい心理的に考えれば分かるはずですしプライドが邪魔しているせいで本人も他人の意見を聞かず新たな発見をすることが出来ず、固定観念にとらわれて成長出来ません。 そうなるといくら国の上位貴族が優秀でもその下についている『世襲制』貴族が無能だと国は発展できませんし、場合によっては私利私欲に走りクーデターによって国が滅びます。また有能な貴族でも有能なほど知識が多い為何か企む可能性があります。 そうなると本当の信頼関係が無ければ裏切られる恐れもあります。 僕は『世襲制』事態を完全に『悪』とは言いませんが地位に執着しやすい思考を持ちやすい子供の頃にちゃんと教育する事によって貴族のプライドについてはいくらか緩和出来ると思っています。 また、有能な人材であれば平民でも貴族にする制度を与えその機会を『剣術』や『魔術』だけではなく、学力や思考能力も考慮して地位を与えれば有能な貴族が手に入り、国を発展させることが出来ます。 その優秀な人を集める方法ですが~」
と色々話してる最中に大公様に止められた。
「もうよい、もうよい! 君は本当に3歳なのか? 君の父が『宰相の原石』と言ったのも納得した。というよりも正直言うが今でもなれてしまうかもしれない…。君はそれ程の思考能力を持っている事が分かった。 これは我が『エブゾフェア公国』も安泰だな…、今後について君の父に話す事が増えたから失礼する。」
そう言うと『エブゾフェア大公』は父フィリップの元に歩いて行った。
「はい、また機会が有れば宜しくお願い致します。」
あぁ!最後の返事完全に前世の素の言葉が出てしまっている…、なんか凄い目上の人と話す時、最初と最後で緊張する癖マジで前世のままだな…。
「お誕生日おめでとう! なにホッとしているんだい?」
大公様の対応の後でホッとしていると今度はエルザ叔母さんが話しかけてきた。
「エルザおばあさま、有難う御座います。皆料理を食べているのに貴族はみな会話ばかりして大変そうですが、僕は父達と一緒に居て気疲れしてしまったので少し休憩がてら料理を食べたいです。」
「大公様と話したのだから緊張するのは仕方ないね、それよりも料理取ってきてあげるから食べな! 子供は遠慮せず食べて成長するのが仕事だよ!」
と言いエルザ叔母さんは料理を皿に取ってきてくれた。なんて優しい祖母なんだ…と感動しながら料理を食べていると、母マリーナとエドガー兄もいつの間にかこちらに来ていた。
「ア~ラ~ン~~!!お誕生日おめでとう~~♪」
「なんかジャック兄とアランずりーぞ!! 俺だけ仲間外れにしやがって!」
「エドガーその時は私の家に来るといい、盛大に祝ってやるぞ! もちろんフィリップ抜きだがな!」
エルザ叔母さんは謎に勝手に決め始めてるし、後ろから抱き着く母と普段通りのエドガー兄の言葉を聞けて俺は何故かホッとしていた。やはりこういう場はいつまで経っても慣れないのだろう…。てか料理こぼしたくないから今抱き着くのは勘弁してくれ母よ…(汗)
「かあさま、有難う御座います。勿論エドガー兄の時もちゃんと祝うから大丈夫ですよ!その時は今日みたいではなくエルザおばあさま含めた『家族だけで』祝いましょう!」
「オウッ!」
軽くイジったつもりだったのだが普通に返事されてしまった。どうやらエドガー兄もこういう場は苦手なのだろう。
「アラン意外と意地悪な奴なんだな~!」と俺の頭をワシワシする祖母とそんなエドガー兄や俺を見て、母マリーナはいつも通り「あらあら♪」と笑顔だがいつもよりも数段ほど期限良さそうだった。
仲良く家族で料理を堪能している途中俺は父フィリップに声をかけられた。
「アラン! 料理を堪能してる所悪いが来てくれないか!」
楽しくご飯を食べていた時にフィリップの登場でエルザ叔母さんが露骨に嫌な顔をしている。
父フィリップは『エブゾフェア大公』と一緒に居た。もしかして『宰相』の話だろうか…嫌なんだが…。
俺は渋々皿を置きフィリップの元へ小走りで向かった。
「とうさま、なんでしょうか?」
「アラン、いきなり呼んですまなかった。 本当は祝賀会の最後にプレゼントとして与える予定だった『真眼の水晶』を今ここで与えるから鑑定して欲しい! これは『大公様』の希望なんだ、良いかい?」
父フィリップはそう言うと高そうな木箱から水晶を取り出した。 ――これが個人の能力を鑑定できるって噂の高級アイテムか…。
「これを両手で持って『心理眼』って唱えるんだ。用紙にする念写魔法はマリーナに頼もう。」
ついに俺のステータスが分かるのか、物凄くドキドキする…っていうか『大公様』の前だから猶更緊張してしまう…。
――お願いだから今までの俺の努力無駄になってないでくれよ…
「いきます! 『心理眼』ッ!!」
俺は精一杯心を込めて唱えたのだった。
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