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アンナ⑦
このひとも、きっとそう思ってるんだろう。
「…なぁに、フェル」
「…」
「?」
「いえ、…来週から学園に復帰ですね」
「そうね」
「…」
「…」
熱が下がってからフェルに会ったとき。
あの日のこと…というかクズ王子が落とした爆弾について謝られて、困った。
あたしはアンじゃないし、どう見てもフェルのせいじゃないし。そんな必要ないと思うけど。
このひともアンに対して負い目みたいなものを感じてるのかなと思った。
「…大丈夫よ、フェル。…キャメリア様にも接近禁止が出ているってお父様が言っていたわ。
学期途中だから今は難しいけれど学年が変わればクラス替えもあるし、そのときには分けてくれる話も通ってるときいたから、…あと半年ほどあるけれど、」
考え込むような表情のフェル。
大丈夫じゃないか。そりゃそうだよね。
ーー長いよね、半年。
「……お嬢様は、」
「えぇ」
「平気なのですか。辛い日々を過ごされて、
……色々変化も多くあったかと。体調などは、……いかがですか」
そんな毎日を送ってたのはアンで、あたしじゃないんだけどね。
「体調は平気よ、ありがとう」
そう言って笑うと、フェルはあたしから目を逸らした。
なんでだろうな。
見たくないって言われてるみたい。
「たしかに信じられないようなことが起こったわ。殿下との婚約もなくなって、……考えなければならないこともある。
あの方たちとはもう関わりたくないわね。顔を合わせないわけにはいかないけれど、さすがにもう接触はないと思いたいわ」
胃が痛いな。
「フェル。あなたにも負担をかけて、迷惑をかけてしまって申し訳ないと思っているわ。
休日も返上させてばかりでごめんなさい。
いい機会と言ったら語弊があるけれど、休暇を取ったらどうかしら。
それにやっぱりキャメリア様のことも不安よね。
護衛の交代も可能だと思うの。お父様に相談してみるから、安心してね」
「、え…?」
「戻るわ。今日はもう休んでちょうだい」
ぼそっとつぶやいたフェルが顔を上げるより先に振り返って歩き出した。草を踏む音はしないから追ってきてないことに安心する。
嫌味満載の、勘違いした性格悪い自分にうんざりする。
たった一度目を逸らされただけなのに。
そんなのふつうで自分だってするのに。
味方ばかりだと思ってたから、たったそれだけで否定された気になった。
味方って、みんなアンの味方なのにね。
「…まじメンヘラじゃん」
キリキリ痛む胃を抱えてそのままアンのお父さんの執務室に直行した。
驚いたお父さんに理由をきかれたけど、さっきフェルにも伝えたようなことを話した。
護衛の件は保留らしいけど、休暇は与えると言われてほっとしたら、痛みが少しマシになった気がした。
それから学園に通うようになっても、フェルに会うことはなかった。
貴族学園。
……外国の大学みたいだ。外国だし合ってるか。
知らないのに知ってるのが相変わらず不思議な感覚。
「行ってきます」
「「行ってらっしゃいませ」」
馬車も初めて乗ったけどあまり揺れなくて安心。
ロージーにクッション用意してもらったし痛くもなかった。
降りるときエスコートしてくれたのは護衛さんのトリスさん。イケオジだ。
ロージーも護衛さんも学園内には入れないのでここでさよならして門をくぐった。
視線がすごい。クズ王子とのアレコレは広まってると見た。噂もひどかったんだしね。
ここは敵ばかりだと思えば胃の痛みも少ない。
最近から味方なんていないって知ってるから。
教室まで迷うことなくたどり着いた。
ドアを開けるときはさすがに緊張した。
「……おはようございます」
視線だらけ。でも挨拶くらいはするでしょ。
「…」
席に着く。
うしろのほうとまえからの視線はフルシカトだ。
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