あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃

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…やな感じ

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「っ待ってロニーどうしたの!ちょっと…ッ」


いつまでも帰る気配のない友人を無理矢理馬車に押し込んで寮へ送らせた。




煩わしいと思った。


最近になってやっと感じた違和感。
気づくのが遅すぎる違和感の正体。




「……パリス……、」










"身体の弱いキャシディはまだ本調子じゃない。
王都に頼れる親類がいないわけじゃないが本人も希望して、将来を考えて高等教育を学ばせたいんだ"


管理の厳しい規則がある寮生活が条件で、
決して裕福ではないだろうに高額な費用を捻出したご両親に頼まれれば、いやだとは言えなかった。

キャシディはリン男爵家の一人息子で、将来は領地に戻り家を継ぐ。
所謂農耕貴族だが、学んだことは無駄にはならないはずだ。

のんびりした領地に比べ、王都での生活は不慣れなことが少なくない。
限られた時間のなかで、知識や友人を得る機会を手助けできればと。

だから少しでも力になれればと。


まるで手のかかる弟を世話するような責任感が大半だった。
俺には兄しかいないから、弟がいればこんな感じなのか、と。
昔から病弱なせいか甘やかされていたし我儘で甘ったれな部分はあったから。

俺は慣れていたから、


だからしょうがない、と。


言い訳にもならない理由でパリスとの約束を、何度も破った。


慣れていたのは、俺だけだったのに。


キャシディは手がかかるからしょうがないと、ただそれだけで優先順位を間違えていた。
考えればいつも友人を優先するなんておかしなことなのに、
大事にしなきゃいけないのは、
尊重しなきゃいけなかったのは、パリスだったのに。

何をいい気になっていたんだろう。

いつも譲ってくれていたことを、遠慮してくれることを、

キャシディは手がかかるから、手に余るから、迷惑かけなくて済むなんて都合良く受け取っていた。


パリスのあの表情は、
しょうがないと呆れていたんじゃなく諦めていただけだって、
こんなことになるまで気づかないなんて。


ーー…婚約記念日の約束すら、破るなんて、



体調がよくなかった。
疲れていた。
もういい加減、他との交流をするべきだと。
パリスとの時間があると。
話をするたび泣かれて体調を崩されてなぁなぁで終わってしまうことに疲れて。

ようやく、ようやく感じた違和感に今になって、気づくなんて。


それなのにまた、キャシディを選ぶなんて。







『…………婚約、解消しましょうか』


泣きそうな顔をしてた。
傷ついた顔をしていた。

ごめん、…ごめん、パリス。


まだ、間に合うだろうか。

話を、聴いてくれるだろうか。



怒っていいから、話をさせて。





ーーそう思って出した先触れは、断られた。



それでも会いに行こうとしていた俺に翌日、手紙が届いた。
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