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ルーシー⑤
しおりを挟む初めての恋に浮かれていた。
今なら痛いほど、それがわかる。
激しい劣情も、穏やかな熱情も、溢れるほどの愛情も、すべて。
わかり合えると思っていた。
わかりたいと思っていた。
嵐のような初めての恋に夢中になって、何も、ほんとうには見てなかった。
『ーーいたんだ、…"運命"が、』
連絡もなく何日も帰ってこない。心配でたまらない。仕事も手につかない。
職場に押しかけてしまおうか悩んでいたとき顔見知りの団員に会い無事だと聞いた。何か難しい任務を任されていて連絡ができないのだと思った。
同僚の表情には気づかなかった。
怪我をしませんように。
任務が上手くいきますように。
無事に、帰ってきますように。
それだけを、祈っていた。
戸惑いながら、どうしようもない喜びにも満ちていた表情。
少しやつれて、疲れているように見えたのは、
仄かに漂う、色香の正体は、
『ーー』
思わず口もとを押さえた。
そのまま家を飛び出したわたしの背中に、出かけるの?弾んだような彼の声がしていた。
それから女将さんの家に駆け込んで、今度はわたしが家に帰らなくなって、何日も過ぎてそして、
荷物を取りに戻ってきたら、閉じ込められてしまった。
運命。
彼の運命は、わたしじゃなかった。
それがすべてではないけれど、それがすべて。
身を引くしかない。
それしかない。
なのにどうして、
時折り言い淀んで、
伸ばしかける手を握りしめて、
金色の瞳を揺らして、
どうして、傷ついたような顔をするの?
わたしを責めているの?
堪え性がないと、思っている?
そうかもしれない。わたしは逃げ出した。
正直に話してくれたらなんて、思ってもきっとお互いできなかった。
初めての恋を大事にしすぎて、失うのが怖くて、
失いたく、なくて。
失いたくなかった。
ユラさん、わたし、あなたを失いたくなかった。
でもあなたを黙って見送るなんてわたしにはできない。耐えられない。
あなたに死んでほしくなんかない。
あなたの幸福が、
違うところにあるのならわたしはあなたにそこで生きていてほしい。
ものわかりのいいふりをしているわけじゃない。
あなたと一緒に生きていけたらどんなにうれしいかしれない。
縋りたい。離れないでと両手で掴んでいたい。
でもそんなわたしの思いより、あなたが大事。
運命から離れれば死んでしまう。
わたしはあなたに死んでほしくない。
「……ごめん、ルーシー……ごめん……俺は、」
ただそれだけ。
だからその言葉の続きは、言わないで。
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