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 あの顔にそばかすを散らした受付嬢が何かの石版を抱えてカウンターで待機しているのが見えた。私とエスメラルダを見つけた彼女が、パッと笑んで登録についての説明を始める。

「冒険者登録ですね。乗せる手に装飾品や包帯などの障害がありますと、機器がエラーを起こしてしまいますので。何もございませんね?はい、大丈夫です。では、こちらの石版に手を乗せてください」

 そう言って受付嬢は抱えていた石版をカウンターに置く。肉眼では何を書いてあるのか分からないほど細かに何かが彫り記された石版の中央に無色不透明な玉がはめ込まれている。青っぽいそれに手を乗せると、ひんやりと冷たい。掌の辺りがむず痒い気もした。

 少しして石版は光出した。刻まれた何かがその光源のようだ。それが治まると、受付嬢が私の手を持ち上げた。そのまま石版の上から手を退ける。

「はい、大丈夫です。登録完了しました!」

 受付嬢はそう言って、石版から小ぶりな黒色の玉を取り出した。

「一応説明なんですが、これは登録玉と言って持ち主の身分証明などに使えます。玉の色は主に、魔力に影響されるそうです。マシュー様は、赤色のようですね」

 限りなく黒色に見える玉だが、照明を受けて明るくなっている玉の縁は僅かに赤色だと認識できた。

「そして、ここに刻まれている紋様がギルドでの階級を表しています。今は若葉の紋ですが、階級が上がるにつれて花、木、雲、月、太陽、星と変化します」

 受付嬢が指してみせたところには、金色に輝く小さな紋様があった。ぷっくりと顔を出したばかりのような若葉を、飾り気のない太丸が囲んでいる。

「これは、常に持っていなければなりませんよね。どうすればいいんでしょう?」

「こちらは余程損傷しない限りはそのまま使えますので、飾りにするため加工加えられる方や剣の玉飾りにされるかたもおられます。ご自由になさってください」

 玉を手に取って、便利なものだなあと感心していると、受付嬢が袋を差し出してきた。

「頑丈ですし破損紛失してもすぐに再行できますが、大切に扱ってくださいね」

 その後、搭載された様々な機能について軽く説明を受けてから、いつの間にか酒宴をする冒険者たちの中に溶け込んで雑談していたエスメラルダのもとへ向かう。

「あぁ、終わりましか。では、町の外周へ行きましょう」

 私が声をかけると、エスメラルダはさっさと歩いてギルドの扉へ歩いて行った。
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