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乙女ゲームの攻略者の母親になったけど物語の為潔く殺されます! 前編

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ここが日本ではないと分かったのは
まず月が2つあることだ
夜になってふと空を見上げたら2つあって驚いた
日本どころか地球ではないことは確実だった
そして乙女ゲームだと知ったのは
美少年の名がクロードだと知ったからだ
確かにあのクール最強魔導師の面影がなくもない
しかし、いつも冷めていて人と壁を作るようなキャラだったはずだが
こんなにも親を慕って毎日心配しに来てくれる子と同一人物だとは思えない

成長したら変わってしまうのか
なんとも勿体ない


ちなみにこの乙女ゲーム「君の瞳に熱を宿して」略してキミ熱は
暇な時になんとなくやったもので
ネットを見て一通り攻略していたものの
クロードは途中で仕事が忙しくなり
攻略途中のままやらなくなってしまったのだ
よって自分がなぜこの世界でクロードの母親になっているのか
どうすればいいのかがわからない

ただ一つわかってるとするならば
私の命はあと数ヶ月もないということだけだ




「母上?どうなされました?まだお身体の具合が悪いのでは...!?」


「大丈夫よクロードありがとう。少し考え事をしていたの」


しかも死ぬ原因は病気でも事故でもなく
この子...クロードに殺されてしまうのだ



この世界では魔力が高いほど髪の色に表れる
クロードの髪は黒
最強魔導師とうたわれるだけある
黒はとても貴重で
膨大な魔力を有している
うまくコントロールできない子も多く
それによって暴発したり
人を怪我させたりしてしまうのだ

なので
12歳を過ぎると魔法学園に入学し
そこで魔力のコントロール方法を学ぶ
クロードはまだ10歳なので
2年後だ
まぁそれを私が見届けることはないんだけど


法律で12歳未満の子供は親と過ごすことが義務付けられている
しかし、普通に暮らしていてはいつ魔力が暴走するかわからない
その為
親子で魔法院で暮らすのだ
黒髪を持つ子は国にとっても貴重である為
丁重に扱われ、不自由なく暮らしていける


主人公と出会うのは魔法学園の高等科に入った時だ
攻略途中だったものの
ネットではクロードを攻略するとデレがめちゃくちゃすごいと書かれていた
スチルも見てみたがパッケージの顔とは似ても似つかないとても幸せそうな顔をしていた


なので
問題なく主人公と出会えるように
私は潔く殺されることを選ぶことにした
元の世界でも普通に寝ただけだし
死んでない気がする
一から転生ではなく途中からクロードの母親の意識に入ったのなら
死んだら元の世界に帰れるのでは?とも思っている

ただいくつか問題があり、
一般的な教養はあるものの
何故か過去の記憶がない
クロードと今までどう接していたのか
どういう人だったのか
周りに聞こうにもメイドのような人はさっと仕事してサッと帰ってしまう
どうみても詳しい事情を知ってるとは思えない
乙女ゲームでも
クロードの母親はクロードにこんな風に接していたなんて
説明もないし
...と最初は考えていたが
クロード自身特に疑ってる様子はないので普通に接するのであっているのであろう

それに確か主人公に母親の話をするシーンでは
とても愛されていた
と語っていた
しかし、魔力の暴走時その母親に化け物!と言われてしまい抑えが効かなくなり気付いたら生気なく倒れていたと
とても悲しそうな目で告白するシーンだ

魔力が暴走してしまったとはいえ
実の母親を殺めてしまったことが辛いのだろう
そしてその闇を主人公が少しずつ溶かしていくのだ
それがあのスチルに繋がる

物語通り進めるにはそのセリフを私が言わないといけない
こんなにも親を慕ってくれるいい子に...



こんないい子なのだ
とても愛されたと語っていたのならば
きっと本当に愛されていたのだ
ならばやることは残りの日数をこの子を大事にする時間にしよう
物語がそう展開してるのであって
決してこの美少年を愛でたいわけでは..!
ごめん無理愛でたいです!
だってこんなに可愛いんだもん!


「母上!庭に綺麗な花が咲いていました!母上に似合うと思って...あげます!」


「母上!僕は母上がいれば寂しくありません!ずっと一緒にいてください!」


「母上!僕は大きくなったら母上と結婚します!ダメですか...?」


不安そうな顔で言ってくるのでもちろん答えは

「ええ!もちろん!...でも気が変わったら言ってね!他に大切に出来る相手が出来たら応援するわ!」


危ない危ない...
可愛すぎて即答してしまった
ただフォローも入れといたから
問題ないだろう


「母上以外に大切な人などできるはずがありません!」


これだもの!
誰なのこんな天使を産んだのは!
あ、私か
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