混血の吸血姫と幼馴染の村人

ふたりぼっち

文字の大きさ
35 / 64
第三章 魔法使い

宿屋の看板娘。

しおりを挟む





あれからさらに2度、レビンは高揚感を感じていた。

「うん。レベル7だね」

「やっと帰れるわね…」

あれだけ苦労したレベルアップであったが、層を二つ跨ぐとレベル7まではあっという間であった。

「…そうだね。じゃあ帰ろっか」

レビンはここでもう少しレベル上げを行いたかったが、ミルキィの目を見てそれは愚考だと判断した。

そんなレビンの英断により、二人は帰路に着いた。




特にトラブルなどはなく冒険者ギルドに帰ってきた二人は魔石が詰まった袋をダンジョン入り口にいた職員に渡した。
代わりに割符を貰い、伝えられた番号の受付へと向かう。

「何だかダンジョンの中っていうより外で野営してた感じだから外に出てきてもあんまり違和感がないね」

「そうね。でもベッドで寝たいわ…」

髪も洗いたいし身体も拭きたい。ミルキィは現代っ子なのであった。


「あそこだね」

職員から受け取った割符を持ってカウンター(穴)前の長椅子に腰を下ろした。

「窓口が多いから他の人がいなくていいわね」

「ミルキィはモテるもんね」

「わ、私がモテたらいや…かな?」

レビンは単純に一々絡まれるのが面倒だからそう言ったが、ミルキィはやきもちを妬いてほしいようだ。

「えっと…(何だか似たような事で失敗した気がする…)そ、そうだね」

(思い出せなかったっ!!でもこれなら後で言い訳できる!)

答えを濁すように答えた。

「!?そ、そう。安心して!男には興味ないから!」

「ん?そう」

(何とか切り抜けられたかな?)

(男に興味ないって何よ!?女にも興味ないわっ!違う違うっ!!レビンは例外なのよぉ~っ)

二人ともニコニコとしているが内心は全く別物であった。

二人がそんなすれ違いコントを繰り広げているとレビン達の番号が呼ばれた。

「お疲れ様です。こちらが報酬になります」

「ありがとうございます。ギルドお勧めの武器屋はありませんか?」

「こちらではそういった斡旋はしておりませんので各冒険者でお探し頂いています」

「はあ。わかりました」

他の街では快く教えて貰っていたが、どうやらダメらしい。
この街のギルドがそういったことを行っていないのか、この受付だけなのか。

「何よ、あの女。レビンが気弱そうだからって!」

「どうどう。僕は気にしていないよ。それにあの職員さんも仕事なら仕方ないよ」

(僕って気弱そうなんだ…)

職員の言葉は気にしていなかったがミルキィの言葉はレビンのハートを叩いた。ギリギリ割れていないと思う…

冒険者に慣れてきて強くなったと自覚してきた所に、幼馴染からの率直な言葉を聞いて、ギルドにある鏡に映る自身を見つめた。

(確かに見た目は強くは無さそうだけど…でも二の腕なんか太くなってきてるし?背も少しずつ高くなってきてるよね?)

ミルキィは見た目よりも物腰の柔らかさの事を伝えたのだと思うが、本人は見た目にしか目がいっていない。

現在15歳。身長170cm少し。多かれ少なかれ気になるお年頃であった。

そして鏡越しに見る、美しい幼馴染と目が合い微笑まれ、珍しくレビンの方が頬を染めた。

(あれ?何で恥ずかしいんだ!?…それにしてもミルキィってあんなに可愛かったっけ?)

頑張れミルキィ。もう少しだ。多分…

夕暮れの中ミルキィの背中を見つめながら宿へと向かった。




「おかえりなさい!」

宿を訪れた二人を元気よく出迎えたのは自称看板娘のカーラである。
17歳。こちらも青春真っ只中である。

「ただいま!部屋は空いてるかな?」

「空いてますよ。何泊ですか?」

空いてて良かったと安堵しつつ、何泊取るべきか思考を巡らせた。

「2泊で足りる?」

「…大丈夫よ」

レビンは1泊でも構わなかったが、ミルキィの事を考えて2泊にした。譲歩しても2泊のところがレビンらしい。

「じゃあ2泊でお願いするよ。荷物は…」

「荷物は後でお部屋に運びますね!お客様ご案内しまーす」

カーラは返事を聞くと大きな声で奥に向かい案内を伝えた。奥から『はーい』と返事が聞こえると二人を先導してそそくさと案内を始めた。

部屋に着くと、前回とは違いカーラが中まで入ってきた。

「ごめんなさい。しつこいお客さんがいてあの場を離れたかったの」

カーラは町娘然としているが目鼻立ちははっきりしていて充分美人といえる。そんなカーラにしつこく言いよる人がいるようだ。

「そうだったの。いくらでもいたらいいわ。後でお母様から聞かれたら私達が引き留めたと伝えるから」

村ではそうではなかったが、村を出てからは男に言い寄られたり、噂をされたりしていたミルキィはカーラの気持ちを即座に理解した。

「カーラもてるんだね!ミルキィもモテて大変みたいだよ」

一人理解出来ない子がいた。

「ミルキィさんありがとう。レビンくんはもう少し乙女心を理解しようね?」

「えっ!?」

寝耳に水であった。

「レビンに言っても無駄よ」

ミルキィは他人がいると冷静だった。

「それよりその男性の話を聞かせて?小さな村の出だからこういう話をした事も聞いた事もないのよ」

「えっとねぇ…年は20前半くらいで冒険者の人よ。ウチを贔屓にしてくれるのは嬉しいんだけど・・・・・」

こうしてミルキィの耳年増は加速していった。
その時レビンは増えた所持金を数えて過ごしていた。



15分ほどミルキィと世間話に花を咲かせたカーラは仕事へと戻っていった。

「もうすぐ夕食らしいわ。お湯も持ってきてくれるから清拭を終えたら食事にしましょう」

「うん。今日はよく眠れそうだね」

流石のレビンも色々と疲れたようだ。清拭を終えた二人は一階の食堂へと降りた。


「あっ!ごめんなさい。お客様が来られたので外しますね」

カーラがお客に断りを入れてレビン達を席に案内した。

「あれが噂の?」

「もう!噂なんて良いもんじゃないよぉ。話は面白いんだけど、仕事が溜まっちゃうしここはそういう宿じゃないんだけどなぁ」

「凄く見られてるね…」

レビンは男の視線に『宿の仕事も大変だなぁ…』と思うのであった。
宿の仕事は関係ないが…

そうレビンが考えていた時、男が二人の元へやってきた。
ミルキィもそれを視界に入れていた為『トラブルがやってきたわ…』とため息を吐いた。

ここで男が取った行動は3人にとっては予想外であった。

「お姫様。お名前を聞かせてくれないか?」

なんと男はミルキィの手をとって跪き先の言葉を放った。

「は?」

一瞬の事でレビンは怒りよりも驚きが優先してしまったが気を取り直して男からミルキィを離そうと思った。しかしそれより先にカーラからドスの効いた声が漏れた為、言い知れぬ恐怖に身が固まってしまった。

「あなたはカーラを口説いていたんじゃないの?」

「俺は美しい女性なら分け隔てなく声を掛ける紳士なのさ」

(えっ!?紳士ってそういう人なの!?)

レビンはカルチャーショックを受けていたがもちろん誤情報だ。

レビンの頭がパニック陥っていた時、男の脳天にレビンでも見逃しそうなほどの手刀が振り下ろされた。

ボゴッ!

「いっっってぇぇえ!?!?」

「馬鹿アラン!何してるのよ!?」

3人の前に新たに現れたのはカーラより年上に見える赤髪の女性であった。

「サ、サリー!?ど、どうしてここが!?」

「アランがこの宿に入っていったってお兄ちゃんから聞いたのよ!」

「くそっ…ダリーの裏切り者め…」

突如として現れた二人に呆気にとられた3人。

(夕ご飯…)

お腹ぺこぺこなレビンは無事に夕食にありつけられるのだろうか?

レベル
レビン:5→7(67)
ミルキィ:60
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

処理中です...