妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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四章

第52話 同じ志を持つ者たち

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 あれから二か月ほど経過した。

 あの少年は最初の邂逅以来、一度もミザリーの前には現れなかった。
 やはり、教団の監視であるというのは勘違いであったと考えを改めた。
 だとしたら、あの場で始末しておかなかったのは少しまずかったかもしれないと不安になる。
 普段からローブは深く被っており、姿までは見られてはいないのが救いだろうか。

 いよいよ明日は計画の当日である。
 毎日躾を施していたこともあり、リッチを従えることができ、調伏の能力も以前よりも上がったと感じていた。

 しかし、身元を特定されないために他人から奪った冒険者証を使用していたことが、冒険者ギルドの目に留まってしまったようで、連日のように冒険者が派遣されてきている。流石に四階層の隠し通路の存在までは気付かれてはいないが、肝を冷やす場面も少なくなかった。

 えい!えい!と気の抜けそうな掛け声と共に鞭でしばき上げる。

「やあ、奇遇だね。 今日も良い感じに痛めつけてるね」

 躾に夢中になっているところに、急に声を掛けられ体がビクリと反応する。

「……っ! あんた……またっすか……!」

 再び現れた不気味な少年に体が硬直する。
 二度目ともなれば、流石に偶然では済まされない。
 奇遇だなどと、白々しいことを言うものだと嘆息する。

「それで、上手くいってるのかな?」

「う、上手く……?」

 やはり、教団の人間なのだろうかとミザリーは疑いの目を向ける。
 更に完全に調伏が済んだリッチを前にして自然体すぎることから、その実力も推して知るべしだろう。

「んと、まあ……君の計画…………?」

「なんで計画のこと知ってるっすか……? 自分が考えた計画っす。他に知っている人はいないはずっす……」

「え……? まあ…………学園の試験……だよね…………?」

「……っ! いや、まさか…… でも、この場所を知っているってことは……」

 自身しか知らない情報を知っていたということは、この数か月ずっと監視されていたと考えるしかないだろう。そう考えると急に薄ら寒いものを感じる。

「それで…… その……計画は順調なの?」

「…………あんた、もしかして自分の監視役ってやつっすか……?」

「監視役……? 僕は君と同じ目的を持っている仲間だよ。 まあ、もしかしたら、より高い所にいるかもしれないけど……」

「……なっ!? まさか…… 先日の失敗を上層部に……」

 恐らく先日の盗賊を利用した作戦の失敗で、より上層の教団員による監視をつけられたのだろう。

 ミザリーがまだヘブンズアーク教団の助祭だった頃に、邪神の心臓を取り戻した。
 その功績を認められ、司祭まで漕ぎ着けることができた。
 そして邪神の復活に寄与することで司教への昇進を約束されていた。
 飛ぶ鳥を落とす勢いで昇進への道を進みだしたかに思えたミザリーだったが、先日のブルータル盗賊団を利用した計画が失敗に終わる。
 更にその騒動により杖が破損してしまったことから、邪神復活の見通しが立たなくなってしまい、ミザリーの教団内での立場が危うくなってしまった。

 教団上層部は謎に包まれており、同じ位階である司祭でさえ、ミザリーが知っている者はほとんどいない。
 こんな子どもが自身より高い立場であるというのは俄かには信じがたいが、この落ち着き払った態度を見てしまうと、ミザリーは現実を受け入れるしかなかった。

「まあ、とりあえず協力していこうよ!」

「……はいっす……! 自分、頑張るっす……!」

 もはや崖っぷちに立たされた状態であるミザリーは、この教団からの介入がむしろチャンスであると考えた。
 ここで、前回の汚名を返上することができれば、昇進の機会が巡ってくることもあるはずだ。自然と気合も入る。

「とりあえず名前を教えてよ。 僕はニアって言うんだ!」

「自分はミザリーっす。 よろしくお願いするっす!」





 僕はミザリーの協力を得るために彼女の計画を聞いてみることにした。

「それで、君の計画を聞かせてくれるかな?」

 僕がそう言うと深く被っていたフードを脱ぐミザリー。

 フーム……。なかなか……やるじゃないか。
 僕を唸らせるほどの妹度の高さ……。
 ただ、人を虐待する乱暴な一面もあるところを僕は知っている。
 アネットという前例もあるのだ。
 仲良くなるのはちょっと慎重になったほうがいいかもしれない。

「知っているわけではないっすか?」

「……ある程度は分かっているよ…… でも確認というかね……」

 全然知らないが、一応知っている顔をしておこう。

「そうっすか! では自分の計画を聞いてくださいっす!」

 なんだかとてもやる気みたいだし、僕も気合を入れる必要があるな。
 目的が一緒の仲間がいることをとても嬉しく感じる。

 ミザリーの計画は、多くの人間の恐怖の感情を集めるのに学生を使うということ、そして騎士団に目を付けられない程度にリッチを暴れさせるということだった。
 感情を集めるというのはちょっとよくわからないが、学生に恨みがあるということなのだろう。
 隣にいる黒いぼろ布の人はリッチさんというらしい。
 なんだか大きな鎌を持っていて恐ろしいが、無口でとても大人しい人だ。

 僕は今、同じ志を持つ仲間を二人も得てしまったのだ。
 感激で涙が出そうになる……。

「…………? どうしたっすか……? 自分の作戦に何か不備でも?」

 涙を流している姿は見せられない。
 目尻に溜めた涙をこっそりと拭う。

 しかし、彼女の作戦には、少し不安な要素がある。

「不備というわけではないんだけど、ちょっとそのリッチさんだけじゃ心細いなぁ……」

「……リ、リッチだけじゃ心細い!? でもでも……学生だけならリッチで十分と思うっすよ……?」

 アーサーの厄介さを彼女は知らないのだ。
 まったく不服なことではあるが、彼はどうも結構優秀らしいのだ。
 勇者の生まれ変わりだとか何だとか言っている愚かな連中までいるほどである。
 勇者とは魔王を倒した者が得る称号のようなものなのだ。
 それをあろうことか、この僕ではなくアーサーを……!?
 許せない……!命までは奪うつもりはなかったが、やってしまうか……?

 協力者がいることによって気が大きくなってしまった僕は、やはり今の計画では問題があるのではないかと考えてしまう。

「アーサーって奴がいるんだけどさ、そいつがとても強いらしいんだよね…… なんか勇者の生まれ変わりとか言われちゃったりしてさ」

「アーサー…………あ!それなら聞いたことあるっす! なんでも光属性に大きな適性があるとか冒険者の間で噂されてたっす! ……って!そういうことっすか! 光属性の魔法はリッチの弱点だからってことっすね?」

 なんだかよくわからないが、リッチさんは光属性が弱点らしい。
 ミザリーは納得顔をしながら、うんうんと頷いている。

「じゃあじゃあ計画に支障が出てくるっす…… どうしようっす……」

「うーん……他にも仲間がいればいいんだけどねぇ……」

「え…… それって自分に集めて来いって言ってるっすか……? ニアさんは手伝ってくれたりしないっすか…………?」

 急に泣きそうな表情をするミザリー。
 僕は無理を言ってしまったらしい。
 どうしよう。泣かせるつもりはなかったので、慌てて訂正する。

「難しいなら大丈夫だよ。僕だってできないしさ」

「……はっ! や、やるっす! 自分に任せてほしいっす! ちなみにどのくらい必要っすか?」

 かと思ったら急にやる気になった。
 どうしたんだろう。情緒が不安定な感じだ。

 しかし、どのくらいが良いのかなんて僕にはわからない。
 とりあえず適当に言ってみようかな。
 無理だったら逆に何人だったら集められるのか聞けばいいのだ。

「うーん、百人ぐらい……?」

「ひゃ、ひゃく……!?」

 ミザリーが顔を青ざめさせる。
 ちょっと多すぎたみたいだ。

「できる範囲で大丈夫だよ」

「……っ! い、いえ……!やりたいっす!やらせてくださいっす! 今ならリッチもいるからきっとできるはずっす!」

「あ、そう? じゃあお願いしちゃおうかな」

 やる気に満ち溢れているように見える。
 できるのであればやってもらおう。

「そうと決まったら行ってくるっすぅ! リッチ行くっすよ! ニアさんはそこで待っていてほしいっす~!」

「う、うん…… 無理しないでね……」

 僕が言葉を言い終わる前にリッチさんと共に走り去ってしまった。





「ニアさん仲間集めてきたっす!」

 待っている間、暇すぎて寝てしまっていた。

「ふぁぁ…… あ、あれ……今何時……?」

「今っすか……? 今はあれから三時間経ったぐらいっすから……夜の十時過ぎぐらいっすかね……?」

 結構寝てしまったみたいだ。ちょっと体が冷えてしまった。

「それで仲間は集まったの?」

「はいっす!きっちり百体集めてきたっすよ! 本当にしんどかったっす……! その代わり自分の力が少し上がったきがするっす!」

 ここにはミザリーとリッチさんしかいないが、他のところにでもいるのだろうか。
 しかし、たった三時間で協力者を百人も集めてしまうとは本当に大変だっただろう。

 だが、アーサーを侮ってはいけない。
 もし本当に勇者の生まれ変わりだとするのならば、ピンチに陥ったときに謎の力に目覚めるかもしれないのだ。
 なので、目覚めたとしてもそれを叩き潰すぐらいの力を集めておかないといけない。

「それで本当に大丈夫かなぁ…… リッチさんは光属性に弱いんだよね?」

「え……ええっと……そうっすよね……」

 悲しそうな表情をさせてしまった。
 僕は本当にダメな奴だ。

「いや、数を集めてくれただけで本当に助かったよ」

「……っ! 自分はまだいけるっす! 自分には強化の力もあるっす! 制御が難しくて今まで使いこなせていなかったっすけど、さっきなんとなく感覚を掴んだ気がするっす!」

 強化する魔法も使えるのだろう。
 確かにそれがあれば、百人の協力者を相手にアーサーができることはないだろう。
 でも、人を殺してしまうのは流石に怖いので、そこは言っておかないと。

「でもなるべく殺さないでほしいな……」

「……っ!? そ、それは難しい注文っすね…… 自分にできるっすかね………… い、いや大丈夫っす! やってやるっす!!」

 先程から表情がコロコロと変化して忙しい。

 とにかくアーサーに復讐する準備は整ったということだ。
 ふふふ……明日が楽しみだ……。

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