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四章
第59話 この世界は人殺しが多すぎる
しおりを挟む何度死を覚悟したかわからない。
魔法が飛び交う中、立ち尽くすことしかできずにいた。
更にそれだけでは留まらず、僕が仕掛けたであろう爆発の魔法石が次々とリッチさんに当たっているのだ。
流石のリッチさんも怒っているかもしれない。
心なしか、リッチさんの眼孔に宿っている怪しい光が僕の方を恨みがまし気に見ている気がするのだ。
爆発の直後にアーサーが斬り付けるものだから、その度に地面に転がり、転がった先で時限爆弾が爆発するということを繰り返している。
一刻も早く僕に飛び掛かりたい気持ちでいっぱいだけど、アーサーがそれを許さない状況にイライラとしているようだった。
僕は決してリッチさんを痛めつけるつもりで、爆弾を設置したわけではないし、アーサーの奴がリッチさんをタコ殴りにしているのは僕とは全く関係ないことなのだ!
全てが僕が仕組んだものと思っていないだろうか!ねぇ!リッチさん!
この不敵な笑みが黒幕感を出しているのだろうか……。
もう何度、爆発とアーサーのコンボを食らって地面に這いつくばるリッチさんの姿を見せられているのだろうか。
アーサーもアーサーである!どれだけ攻撃すれば気が済むのだ!
確かに攻撃されて頭にきているのかもしれないけど、そんなにボコボコにすることはないだろう!
リッチさんだって今は骨になって人間っぽくはないかもしれないけど、名前も知っているぐらいなんだから、それなりに仲が良かったのではないのか!
身内の喧嘩に僕を巻き込まないでほしいものだ!
リッチさんには悪いけど、第三者の立場から見て、この喧嘩はアーサーの勝ちだよ。
爆弾運が悪かったのは気の毒だけど、運も実力の内だからね。
仕方がないので僕が仲裁してあげよう。
「もう十分だよ……リッチさん……君はよくやったよ……」
僕がそう声をかけると、リッチさんの首が飛んだ。
宙に舞い上がった頭部は空気中に溶けるように消えていった。
………………リ、リッチさあああああああん!!
なんで!アーサーか!?
いくら何でも殺すことはないだろう!!こんなの酷すぎる……。
リッチさんの衝撃的な死を目の当たりにして呆然としていると、いつの間にかリッチさんがいた場所に一人の騎士が剣を振り抜いた姿勢で残心している姿があった。
お、お前か!!リッチさんをよくも!!
アーサーたちも今起こった光景に驚いている。
それはそうだ。人が一人死んだのだから。
「間に合ったか…… 貴殿ら、ちゃんと生きているな」
死んだんだよ!お前がリッチさんを葬ったんじゃないか!!
「た、助かったぁ……! ありがとうございます!」
セシルという女の子がその騎士に声をかける。
「本当に生きた心地がしませんでしたよ……」
フランちゃんが力が抜けたようにペタンと座り込んだ。
あぁ!フランちゃん!特別に僕がおぶってあげよう!ふへへ……
「あ、あなたは一体……?騎士様とお見受けしますが…… それにその剣……」
冒険者の人が何か言っているが、こんな奴騎士でも何でもない!ただの人殺しだろう!
「ああ、私はギルバート・ブラッドリバー、シスタリア王国騎士団長だ。 この剣は王より下賜された聖剣クラウソラス」
「ギ、ギルバート・ブラッドリバー……様!?」
アーサーが驚きの声を上げる。
「クラウソラス……魔王を討伐したと伝わる聖剣……」
フランちゃんがポツリと呟く。
それを聞いた他の者たちは息を呑んでいる。
この人殺しがギルバート・ブラッドリバー?
盗賊に攫われたときもユーリと一緒にいた凶悪な顔の盗賊がギルバートと名乗っていたが、最近、かの英雄の名前を騙ることが流行っていたりするのだろうか。
本人に聞かれたら、それこそ殺されてしまうのではないのか。
しかし、他の人はすんなりと信じてしまっている。
この世界の人間は他人が嘘を吐かないとでも思っているのだろうか。
僕の目は騙されない。善良な人間を消滅させる奴が英雄であるはずがないのだ。
「ん……?貴殿は……ユーリ殿の兄君ではないか?」
すると、僕の方を見て人殺しが声をかけてくる。
なんでユーリのことを知っているのだろうか。
「そうですけど、なんでユーリを知っているんですか? もしかして変態の人ですか?」
「なっ……!お前!騎士団長様になんて口を……!」
冒険者の人が口を挟んでくるが無視する。
こいつ僕の弟を狙っている変態なのではないだろうか。
僕の弟は妹と見紛えるほどに女の子だから、そういった輩から守ってあげなければいけない。それはお兄ちゃんとしての責務であると思っているのだ。
「よい、子どもの言うことだ。 それにこの者は盗賊に攫われた経験もあるのだ。 神経質になってしまうのも無理はないだろう」
「そ、そうだったのですか…… 君、よく知りもせず怒鳴ってしまってすまない……」
冒険者の人が謝ってくるが、無視する。
「それでユーリを知っているのはどうしてですか? やっぱり変態の人なんですか?」
「い、いや……決して変態ではない。 私は先の盗賊の討伐作戦で貴殿の妹君に助けられたのだ」
「そうなんですか……」
怪しい……。
ギルバート・ブラッドリバーを名乗る不審者である以上、信用することはできない。
「ま、まあ、とにかく今は避難することが最優先だ。 ついてきてもらえるだろうか」
ギルバートを名乗る不審者についていき、ダンジョンの出口へ向かった。
道中はギルバート風の男が猛烈な強さを見せつけ魔物を葬っていた。
身の丈と同じくらいの長さで、幅の広い刀身を持つ巨大な聖剣クラウソラスをブンブン振り回しながら、力の加減が難しいから近寄らないでくれと言ってきたときは、肝を冷やした。そういうことは先に言ってもらえないだろうか。
彼の奮闘を横目に、僕は自身の計画が失敗に終わってしまったことを悔やんでいた。
どこで間違ったのだろうか。僕の作戦は完璧だったはずだ。
だって宣言通りフランちゃんを救うことができたのだから。
しかし、おまけでアーサーまで助かってしまったことと、騎士風の不審者の登場でお亡くなりになったリッチさんのことは想定外の出来事であった。
また、フランちゃんの尊敬も十分に集めれてはいないだろう。
僕の介入によりアーサーは助けられたと思っているかもしれないが、フランちゃんとは言葉を交わすことができなかったのだ。
僕に泣いて縋りついてきてくれても良いはずなのに、その気配もなかった。
それもこれも最後に出てきたギルバート風の男に良い所を全て持っていかれたせいだ!
ちくしょう!!どうして僕の思い通りにいかないんだ!!
もう一つ気掛かりなのは、ミザリーのことだ。
彼女も復讐に燃えていたから、来ているとは思うけどダンジョンでは姿を見なかった。
あの爆発の中、生き延びてくれていればいいのだが……。
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