シリアルキラー、パラレルワールドに行く

KsTAIN

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L’épisode 1

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私は榊原という、とある会社の社長だ。父親が死んだため、息子であった私が会社の後を継いだ。
元は大きな財閥のトップだった銀行を運営している。純利益は数千億を超えており、最近は業績も順調に伸びている。私はそんな大きな会社の社長である。
……というのは表の顔だ。
椅子に座りテレビの電源をつける。
『今朝、またもや一人の男の子が行方不明になりました』
男の子の誘拐のニュースだ。それを左から右に聞き流しながら、ピノ・ノワールを飲む。強いぶどうの香りが鼻腔をくすぐる。
表の顔があるということは、裏の顔もある。
私の裏の顔というのは……
『この男の子は、最近起きている連続誘拐事件に巻き込まれた可能性が高いとされています』
この巷で話題の連続誘拐事件の犯人、というものだ。
しかし正確には違う。私は「連続誘拐殺害事件」の犯人だ。
そう。誘拐して……みんな殺している。
私は、殺人でしか、自分を満たすことができない。
日本で最も高いキャバクラ、高い酒、高級料理など金のかかる娯楽はあらかたやってきたが、それら全ては私の中の欲求を満たすものではなかった。
数年前人を殺す快楽を知ってから。私はそれでしか満たされなくなった。
もう一口、ピノ・ノワールを飲む。
もう外はとても暗い。使用人などは私の家に存在しないため、私はいつでも自由な行動ができる。……欲望に従った、自由な行動が。
私は立ち上がり、家の地下室に向かう。そこには一つのドラム缶。フタを開けると、中は液体で半分ほど満たされており、そこには白い固形物が残っていた。
ここは山の奥にある別荘。周りには誰も住んでおらず、誰も私の姿を見ることはない。
ドラム缶を中の液体をこぼさないよう慎重に持ち上げて運搬する。家の外にある、草の一つさえ生えていない庭まで運んで一度そのドラム缶を地面に置いた。
そしてドラム缶をそっと傾け、中にある液体を全て庭に捨てる。その後に中にある白い固形物……人骨を、あらかじめ掘っておいた穴に放り込み、近くに立てかけてあるスコップで埋めた。証拠隠滅完了である。
何事もなかったかのように、平然と家に戻り、風呂に入ってベッドの中に入る。
自分の中に何かが満たされた気がした。
ああ、明日も、可愛い子どもが居ないかなあ。可愛い可愛い、幸せそうな子供が。
そんなことを考えながら、私は眠った。



しかし、私の望む生活は、長くは続かなかった。
ある日突然、私の家にガサ入れが入ったのだ。
どうやら誘拐する現場を目撃されたらしい。
仕事を終え、殺人を行う別荘の前に着くと警察が大量に居た。唖然としてしまう。ついにバレた。バレてしまった。
直感で感じた。私の欲望は……もう満たされることはないかもしれない。そして……捕まったら死刑になるかもしれない。
庭を掘り返す警察官の背中が目に入ってしまう。
瞬間、私を一つの感情が支配した。
それは……恐怖だった。
踵を返し、逃げる。逃げる。ただただ、逃げる。
逃げる宛なんてなかった。だけど、現実から目を背けるために、走り続ける。
その日はタクシーを乗り継いで他県まで逃げた。スマホでニュースを確認すると、大きな一つの見出しが目に入る。
『連続誘拐殺人犯 現在も逃走中』
最悪である。予想はできてはいた。もうダメだ、捕まってしまう。絶望が私の中に駆け巡る。どうやらもう指名手配もされているらしい。
遠くへ遠くへと逃げているうちに夜が明けた。もう数時間ずっとタクシーを乗り継いで遠くまで来ている。
タクシーから降り、また次のタクシー乗り場を求めて、さまよい続ける。
すると、早朝だというのに、眼の前に一人の人が現れた。
彼は私の姿を見て唖然とし、次の瞬間スマホを取り出した。彼はかなりガタイがよく、とてもまともな武器を持っていない今では、彼を攻撃して通報を止めるというのは不可能だ。私は振り返って全力疾走を始めた。
何本も道を曲がり続けて逃げる。ただひたすらに。次第にパトカーのサイレンが聞こえ始め、それは幾重にも重なり始める。
しかし希望を求めて走り続けると、奇跡的に視界が開け、タクシー乗り場が目に写った。
助かった……と心の中でつぶやき、停車しているタクシーに向かってダッシュする。
しかし、次の瞬間希望は崩れ去った。
『止まりなさい!』
瞬間、威嚇射撃とともに私の全身が大きなライトで照らされた。まるでスポットライトを浴びている気分だ。
私は思わず固まってしまう。どうやら警察に見つかったらしい。……そりゃ、逃走に使われるであろうタクシー乗り場が、サツに抑えられていないわけがないか。……私としたことが。タクシー乗り場に来さえすれば逃げれるだなんて、浅はかな考えだったな。
振り返ると、大量の警察がいた。みな、私に銃を向けている。
はは、はははと乾いた笑いを浮かべる。
直後私も拳銃を構えた。
『……ッ!』
サツの間に緊張が走る。拳銃はもちろん撃てば銃声が街に轟く。つまり結局、私が撃てば、サツに捕まる。だからあのとき私は拳銃を構えられなかったのだ。
タクシー乗り場に着いて逃げるか、先にサツに捕まるか……一か八かの勝負だった。……どうやらそれに負けてしまったらしい。
もう……私は負けたのだ。だけど、せめてもの抵抗だ。……警察に捕まるなんて屈辱。私は絶対に避けたい。
ならいっそ……
「……せめて私とともに死ね!」
やつらと共に、命を散らそう。
私の中に眠っていた本能が、私を突き動かす。
撃鉄を倒し無差別に発砲を始める。サツもこちらに向けて発砲を開始する。
移動しながら撃っていたためある程度は避けることができたが……結局数の暴力に負け、足に弾が命中してしまう。
よろけた次の瞬間、私の眼前にもう一弾迫って来て……そのまま、弾は私のこめかみをぶち抜く。
鮮血が飛び散る。私の意識は一瞬にして途絶え、闇に落ちていった。



……

…………

死んだと思った直後。
なぜか、私の目は開いたのだった。
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