人生の基本定理

KsTAIN

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人生イコール証明<?

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「おい」
「……」
「おい!」
「うお、びっくりした!」
突然の大声に振り向くと、そこには合鍵で勝手に家に入ってきたであろう親友のザックがそこに仁王立ちしていた。
「ザック。まいどまいどノックするか入るぞの一言くらい言えと言っているだろう」
痛む額を少し抑える。よく見ると、ザックは片手に底が深い陶器と一枚の皿が乗っかっているお盆を持っていた。
鼻が高く眉毛の薄い特徴的な吊り目。額は大きくさらけだされ、側頭部の髪をバリカンで刈り上げられている。これが、ザックの特徴だ。
その男前なご尊顔は今現在、少しの怒りで覆われていた。
「そんなことはどうでもいい、またメシもろくに食わずに研究しやがって。どうせ寝てないんだろ」
「なんでメシ食ってないのも寝てないのもわかるんだ?」
「それがわかるくらい長い付き合いだってことだ」
「愛か?」
「バカが、そんなわけないだろう」
ザックは黒い線で埋め尽くされた紙で覆われた机の小さいスペースに盆を置く。
皿には薄い肉が乗った白いパンが2つ、陶器にはジャガイモのスープが入っていた。
「……いいって言ってるのだが」
「うるせえ。今食え」
ザックは私に低い声で命じる。
はぁ、と再び頭を少し抑えた。
正直、今解いている式を見て少しメシを食うことにためらいを覚える。乱雑に書かれた途中式が、私には醜く見える。
私は、数学者だ。一つの分野に対して強い関心を持ち、研究を進めている。少し具体的に言うと一つの定理を証明しようと今猛研究している。
家族は、居た。妻と、娘だ。
そのさなか私はこの式の証明、定理の作成にアツくなりすぎたため妻や子供に対してあまり関心を持つ余裕がなく、かまってやることもままならなかった。
私は昔から一つの分野にアツくなってしまっていた。それは今も変わらない。そのため今回をきっかけに妻に愛想をつかされ、別居を経て離婚した。
しかし私は、このショッキングであるはずの出来事に対して、なんとも思えなかった。離婚されても、どうも感情が湧いてこない。それほどまでにいまこの『分野』に力を入れている。
「……無理だ。今は食えない」
自分なりの結論を出す。
「何回目だ、それ。いいから食え」
「……」
しかし、再び強い圧力で言葉を放つザック。今度は先程より強い痛みが額に走る。
このままだとこいつはここから退かないだろう。後ろにずっと居られるのも、ちょっかいを出されそうで中々に面倒くさい。
溜息をつき、パンを口に運ぶ。一口噛んだ瞬間上品な小麦の香りが鼻腔をくすぐり、味付けされた肉の旨味が口全体に広まる。
美味い、ただそれだけを感じた。
自然と頭痛が無くなっていく。
「美味いか」
「あぁ、美味いとも」
「妻の手作りだ」
「……そうかい」
妻、という単語にすこし反応する。
……やっぱりいいやつだったな。あいつは。今考えてみると、なぜ私があっさり離婚したのかがわからなくなってきた。
暖かいジャガイモのスープが、更に私の心をやけどさせる。
「少し、考える余裕ができたか?」
全て食べ終わると、ザックが柔らかい笑みで問うてくる。今、わかった。あぁ、こいつは。こいつはこういうやつだから、今も……
「さぁな」
わざとらしく肩を上げる。
「へ、強がって」
少しニヤつくザック。大きくため息をついた。
「要件は終わりか?終わったなら出てってくれ、研究の続きが──」
少し顔をザックから背けた。
「アイナ」
表情をスッと変え、凛々しい雰囲気を纏うザック。突然俺の名前を呼ぶザックにおもわずザックに向き直る。ザック真摯な目でこちらを見つめる彼に、少し怖気づく。
「娘だ」
「……私の、娘か?」
「そうだ。お前の娘から俺に連絡があった」
「あいつが、か?」
突然のカミングアウトに思わず目を見開く。次の瞬間、額に手をついた。
なんてこった。あいつは私と妻の離婚のあとでさえ、ザックと繋がっていたのか。
ザックは常に研究で忙しい俺のかわりに娘の世話をしてくれていた。そのため、ザックと娘はとても仲が良かった。……関係が続いているのも、当然か。
「ははは、ま、そうだよな。こんな父親より、ザックのほうが信用できるもんな」
「そうだな、そのとおりだ」
表情を一切変えずに私の心を貫くザック。こんな真剣なザック──四年ぶりくらいだ。フッと自嘲の笑いを浮かべる。
「お前の娘からなんて便りが来たと思う?」
「……私を殺せ?」
「バカが、その程度で彼女が俺を頼るわけ無いだろ」
真面目な回答に対する真面目な反論に少ししゅんとする。まぁたしかに、ウチの娘なら私を殺す程度の目的でザックを頼るとは到底思えない。
私の娘は負けず嫌いで、凛々しくて、好きなことに真っ直ぐで、そして──大きな夢がある。そんな、いい娘だった。
……あいつ、なんでザックに手紙なんかよこしたんだ?
「『助けて』だってよ」
ザックがため息をついたあとそう告げてくる。突然流れる重々しい空気。俺は唖然としてしまった。
「助けて、だと?」
眉間にしわを寄せる。妻と娘が離婚して、別の地へ引っ越して1ヶ月近くが経った。あいつは今もなお『夢』を追いかけるために努力してるんじゃないのか?
ザックがおもむろにポケットから一枚の紙切れを取り出し、私に渡してくる。八つ折りにされた紙を開いてみると、そこには見覚えのある筆跡で、文が書かれていた。
一番下には……『助けて』の三文字。
一体、何が起きたのだ。私の娘に、何が……
「結婚するんだってよ」
「何?!」
机を大きく叩いて立ち上がる。
「どういうことだ!娘は今もなお、夢を追いかけるために学校へ通い、そして努力してるんじゃないのか?!」
驚きのあまり、おもわず大きな声を上げる。
「……多分、そうだろうな。でもお前の娘は、今いくつだ?」
「……十六だ」
「覚えているんだな」
「当然だろう」
娘の歳を覚えぬ父親など、居ない。
「……そうか、結婚、か」
腑に落ちないまま息を吐いて椅子に座る。
「良いのか」
「ああ、良いとも。もう別れた女の娘なんて───」
私は自分を隠すため、自分を騙すためにそう発言する。しかし
「嘘つけ。お前は昔から言ってただろう。『なにかに大好きを注げる人間は、全力で力になりたい』と」
「……」
ああ、確かにその通りさ。私はこんな人間だ。数学が大好きで、それ以外はどうでもいい。だからこそ、なにかを捨ててでも『なにか』に夢中になれるやつを、私は全力で応援したい。自分が、今目の前にいる、
この情が厚い男、ザックに、そうされたように。
夢を邪魔するなど……なおさら許せない。
「お前、変わっちまったな」
「……ああ、変わったとも」
「なあ。お前の、本心からの笑顔を見せてくれよ。昔みたいに」
「へ、私が笑ったことなどあるか?」
「ああ、そりゃあるさ。たとえば、数学の試験に合格したときとか、数学の大会で優勝したときとか」
「へっ、全部数学絡みじゃないか」
「そうだな、それだけお前が数学が好きだということだろ」
「それもそうだな」
フッと口角を上げて笑う。
今、思い出した。自分の想いを、胸に秘めていたものを。
ああ、この男は、いつでも俺のそばにいるんだな。
「恋は盲目、なんてよく言ったものだな」
「その恋の相手が女なら苦労しねえよな」
「皮肉か?」
「皮肉だ」
「それもそうだな」
ふたたび笑いを浮かべる。
こんなふうに。こんな感じに、本心をお互いにさらけ出しあえる関係。それこそが、私の『大好き』を開花させた。種を成長させたのは……こいつだった。
「……娘は、やはり今も、『夢』を見てるのか」
手紙に再び目を落とす。そこには力強い筆跡で書かれた一文。
『やっぱり。私は、歌手になりたい』
あいつの強い思いが、そこには形として記されていた。昔から、私に何度も言っていたその言葉を、夢を、墨で残していた。
「……お前、あいつの新居の住所知ってるか?」
「ああ。知っている……と言うよりも、そこに書いてあるぞ」
「へ?……あ、ほんとだ」
「ったく。はよいけ」
「ああ行ってくるとも」
「……行ってらっしゃい」
「ふん」
まるで妻のようなことを言うザック。
悪くは、ないのかもな。

「……やっっっと。目が覚めたか」




コンコンコン。手の甲で三回、トウヒの木材でできたドアを叩く。
心配だった。これで別れた妻が出てきたら、と思うと。しかし今日は学校は無い日である。娘が居る日は、たいてい元嫁ではなく娘が客人を迎えていた。
ドアが耳をつんざく音と共に開く。
「はい……え」
狙った通り、我が娘が出てきた。フッと少し笑う。
「なんだ、ザックかと思ったか?」
少し前、ザックがこの家に手紙を送った。『近々、そちらへ向かう。 ”ザック”』と。
困惑する娘の腕を強く掴み、外に引っ張り出す。
「ちょ、なにする───」
「どうだ、外は。暖かいだろう」
「……意味分かんない」
ぷいっと顔を背ける娘。さすが我が娘だ、かわいらしい。
「急で悪いが、今日は見せたいものがある」
「……はぁ?」
素っ頓狂すっとんきょうな声を出す。
「あのねえ、まずなんで私達を捨てたも同然のあんたが、今更私に───!」
次の瞬間真っ当な怒りをあらわにする娘。しかし私も負けじと強い視線で娘を貫く。
「その話は後だ。ついてこい」
再び強く娘の腕を掴む。
「ちょ、なにする───」
「夢を、掴みたいんだろう……!!」
静かに憤怒する。
「……ッ」
娘は俺の声に黙りこくってしまう。
そのまま言葉が流れない空気の中、徒歩と馬車を使って目的地へと向かった。
「……『theater』?」
目的地に到着すると、娘が疑問符を浮かべる。何をするつもりなのだろうと言いたいような面だ。
「入るぞ」
一人で中に入る。娘は何も言わず後ろを着いてくる。
様々な通路を通り、『2』と書かれた看板が着いているドアを静かに開ける。すると、ひとつの小さな劇場にたどり着いた。
古い木造のホールの奥の真ん中に、屋根が上に設置してある、大きめの書斎二部屋程度のステージ。
「……あそこに、立って、みたいか?」
「……」
私の問いかけに答えることを逡巡する。数瞬迷った先の娘の答えは
「……立ってみたいわ」
YES、だった。強い思いがその横顔に彫り込まれていた。
「そうか。じゃあ座れ」
自由席の長い椅子に座る。娘もそれに続いて私の隣に座る。
暫く待つと、劇が始まった。
内容は、自分をさらけ出せない、小説家になる夢を見ている女の子が、どんな自分でも受け入れ、前を向いて進んでいくことを決意するお話だった。
しかし、その過程で彼女に結婚話が持ち込まれる。
『だって、無理だもの!私は結婚する。結婚したら、家事に子作り。子供が生まれたら育児。本を書く時間なんて……』
『だったら!だったら結婚なんてしなければ良い!』
弱気な主人公に、その親友が本気で怒りを見せる。
『ッ!』
『その程度で諦めるなんて、ほんとに小説家はあんたの願いなの?!あんたは!その程度の気持ちで!夢を語っていたの!?』
絶叫する親友。ふと隣を見てみると、一人の少女が涙を流していた。
フッと笑う。
『……もういい』
それだけ言って親友ちゃんは立ち去ってしまう。
待って!、と叫んで主人公がそれを追いかけていき、舞台裏へと消えていく。
すると再び親友が現れた。
『ほんと、バカみたい……』
一人カリカリしながら歩く親友。その後ろから主人公が現れて、親友の名を叫ぶ。
『な、あんた───!』
『……あなたのおかげでわかった。私がなんで『夢』を追いかけていたのか』
『……』
『大好きだから!』
「ッ───」
『大好きだから……大好きだから、『夢』なの!』
『……わかったのね?』
不敵な笑みを浮かべる親友。私もつられて不敵な笑みを浮かべる。
『そしたら、貴女はどうやって───』
ニヤリと笑う親友に、笑顔で、元気に、力強く、主人公が応えた。
『私は────!!!!』




「どうだった」
シアターを出て真っ先に娘に問う。
「……どうだった、ね」
青空を見上げながら、娘は言った。
「……ありがとう、かしら」
「そうか」
娘に向き直る。
「さてお前はどうする?……私はお前に委ねる。ただ一つ言わせてくれ。」
できるだけ柔らかい笑みを浮かべて、私は想いを告げる。
「私は、昔みたいに笑うお前がみたい」
大きく頭を下げる。
「すまんかった……自分だけに集中して、お前らのことを蔑ろにして……」
「あーはいはい、もういいわよ」
そんな娘の投げやりな言葉に一抹の不安を抱く。しかし
「ほんとに私のことを心からどうでもいいと思ってるなら、こんなことしないでしょ」
だから、と言葉を続ける。
「……私の夢を応援してくださるかしら?お父様」
その言葉に私は頬を濡らしながら顔を上げ、
「……その言葉、待っていたぞ」
笑いながらそう言った。
彼女もまた、笑いながら──さながら昔のように──少し、泣いていたのだった。




「"Why don't you believe? It comes true."」
感動的な歌詞を透き通った声が歌い上げる。
彼女の性格に似た力強い、他を寄せ付けない歌声に酔いしれるファンたち。その圧倒的カリスマ性に、また一人。また一人と彼女の魅力に落ちていく。
歌において、この国で彼女の右に出るものはいないだろう。
その彼女の『努力の結晶』を見て、二席しか無いVIP席でのけぞりながら私はフッと笑う。
「随分と偉そうだな」
のけぞる私に冷えた視線を飛ばすザック。
「そりゃ偉い気になりもするだろう。自分が」
バックにパイプオルガンが設置してあるステージで笑顔で歌う女の子を見ながら、自信満々に言う。
「みなが夢中になるスター歌手の父親、だなんてな」
響き渡る美声を聞きながら不敵な笑みを浮かべる。
「……お前はもっと誇れることがあるだろう」
「それもそうだな」
あのあと、娘は私の元に住み始め、母親に結婚はしないという内容の文を送った。そして、『歌手になる』という夢を追いかけ続け……無事、夢を叶えた。
そして私も気持ちをあらため、証明と定理の開発に励みながら、娘を育てた。娘は容姿端麗且つ美しい声を持った、ほんとうの意味で美しい強い女性となった。
私も強い意志を持って証明に励み、そして────それに成功した。
私は一つの大きな『定理』を作り上げた。私は学会で表彰され、大きく名を挙げることとなった。
「良いよな、お前らは有名親子で」
澄ました顔で冗談を言うザック。
「そうだな。だがお前のおかげだ」
心の底から思ったことを言う。本当に、ザックには感謝している。昔から、こいつに世話になりっぱなしだ。
まあでも、こいつは俺を助けることは満更でもないといった様子のザックを見て、こいつらしいなと思う。
本当に、情が厚い男だ。ほんとうに。
「お前のおかげだぞ、こうやってあいつのステージを見られるのは」
「へっ、だからなんだ。アイナ達が頑張った賜物だろ」
「いいやそれでもザック。お前がいなかったら俺は定理を作ることすらままならなかったのかもしれない」
「ははは。ありがたい言葉だ」
少しニヤつきながら言うザック。その横顔を見て、ザックも私の成功に大きく貢献したことを誇りに思っているのだろう。
こいつめ……
「お前ほんと笑顔増えたよな」
「ん?笑っていたか?」
「ああ、それも気味の悪いな」
「笑わせるな、こんな人間にしたのもお前だろ」
「言っただろう。俺はお前が笑っているお前が好きだって」
「そうかそうか。気持ち悪い」
「ははは、面白い冗談だ」
「……目が笑ってないぞ」
「そうかそうか。はっはっは」
娘の歌が終わり、大喝采が巻き起こる。
いい汗をかいた彼女の笑顔を見て、私は力強く思う。
人生は数式では表せないし、証明もできない。
そして。証明よりも大事なものがある。それはきっと──笑顔、なのだろう。
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