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4章 バチェラー前の災難とターニングポイント
30話 唐突な提案
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マシューの馬車の前に王家の馬車がとまっていた。
この馬車に驚いて急停止したのだろう。
私たちが乗りこむと、マシューは自分の馬車で飛びのって、逃げた。
殿下は私の隣に座った。
居住まいを正して、殿下をまっすぐに見つめた。
「殿下には一連の行動の理由を説明する必要があると思います」
殿下はそっぽを向いた。
「こちらも思うところがあります。バチェラー中だというのに、別の男。それも、マシューのような輩と一緒になるつもりだったのですか」
殿下の語気が強くなった。
「いいえ。マシュー様は結婚を望んでいませんでした。私に領土の経営などを任せたいということでした。それに私は殿下から最初に愛されることはないと宣言されています。いまさらバチェラーのルールを守れなど、無理があるのではないですか」
声が大きくなってしまった。
「結婚すらしないだと? バカな。アニマ嬢はそれで自分が幸せになれると思っているのですか」
殿下の声に怒気がまじる。
「もう、自分の幸せを望むのは諦めていますから」
ため息をもらすと、にらまれた。
「よく、そんなことが言えましたね。自分自身によく謝ってください!」
「ええ。言えます。私のことは私が、いちばんよくわかっていますので」
語尾がしぼみ、ほとんど、消えてなくなった。
「……バーナード男爵家は火の車です。そんなところにバチェラーに招待した大切な女性が嫁ごうとしていたら、止めませんか」
「止めません! ほうっておきます!」
殿下は目をほそめ、窓の外を見た。
――はっきり言って、まったくわからん!!!!!!! なんなの!!!!!
殿下はなにを考えておいでなのか。放っておけない令嬢がいて、その子が結婚するから馬車で奪いに来るって、これは普通は好きなのでは? って相手が私じゃなかったら思う。でも、私は悪役令嬢で、顔も怖く、殿下に恐れられているし。
このままでは、殿下の魂をもらい受けることもできそうもない。本質がわからない。考えていることがわからないのだ。
ある意味、私の天敵とも言えた。
――あっ!!! そうか。あまりにもいまさら過ぎて忘れていたことがあった。すでに殿下から答えは提示されていた。
――殿下は、すべてのバチェラー参加者の令嬢を大切にしているから、他の令嬢にも私と同じように世話を焼いているのだ。ただ、それだけだった。それなら、すべての理由に辻褄が合う。
そうだ! 私は殿方から優しくされたことなどないから、殿下は私のことをもしかして、特別扱いしてくれているかと思ったが、違う。
バチェラー参加のお客様として、全員を大切に扱っている。ただ、そのなかの1人なのだ。最初に馬車でむかえに来てくださったときからおっしゃっていたではないか。
「わかったああああああああ!」
私の腹の底から出た声が、馬車に満ちて、流石に殿下もなにか言わなければいけない空気になったようだ。
「どうしたのですか?」
「殿下の謎の行動のすべてに、いま、決着がつきました」
殿下ははっとしたように、私を見つめた。
「なんですって?」
「殿下は、バチェラー参加中のすべての令嬢に優しく、世話を焼く紳士です」
殿下は私を失礼なくらい注視し、吹き出した。
首をかしげると、殿下は更に笑った。
「アニマ嬢は家族にも出立の挨拶をしたことでしょう。このまま屋敷に帰ったら気まずくありませんか」
「気まずいどころか、部屋がなくなっていて、居場所もないでしょう」
なぜかおかしくなって、途中で笑った。泣きたい場面のはずでは? いや。そうじゃない。いままで自分が家を出るなんて考えもしなかった。住む場所と仕事さえあればなんとかなるっていまなら思う。
殿下がせき払いをした。
「よかったら、王城に来ませんか?」
「えっ?」
この馬車に驚いて急停止したのだろう。
私たちが乗りこむと、マシューは自分の馬車で飛びのって、逃げた。
殿下は私の隣に座った。
居住まいを正して、殿下をまっすぐに見つめた。
「殿下には一連の行動の理由を説明する必要があると思います」
殿下はそっぽを向いた。
「こちらも思うところがあります。バチェラー中だというのに、別の男。それも、マシューのような輩と一緒になるつもりだったのですか」
殿下の語気が強くなった。
「いいえ。マシュー様は結婚を望んでいませんでした。私に領土の経営などを任せたいということでした。それに私は殿下から最初に愛されることはないと宣言されています。いまさらバチェラーのルールを守れなど、無理があるのではないですか」
声が大きくなってしまった。
「結婚すらしないだと? バカな。アニマ嬢はそれで自分が幸せになれると思っているのですか」
殿下の声に怒気がまじる。
「もう、自分の幸せを望むのは諦めていますから」
ため息をもらすと、にらまれた。
「よく、そんなことが言えましたね。自分自身によく謝ってください!」
「ええ。言えます。私のことは私が、いちばんよくわかっていますので」
語尾がしぼみ、ほとんど、消えてなくなった。
「……バーナード男爵家は火の車です。そんなところにバチェラーに招待した大切な女性が嫁ごうとしていたら、止めませんか」
「止めません! ほうっておきます!」
殿下は目をほそめ、窓の外を見た。
――はっきり言って、まったくわからん!!!!!!! なんなの!!!!!
殿下はなにを考えておいでなのか。放っておけない令嬢がいて、その子が結婚するから馬車で奪いに来るって、これは普通は好きなのでは? って相手が私じゃなかったら思う。でも、私は悪役令嬢で、顔も怖く、殿下に恐れられているし。
このままでは、殿下の魂をもらい受けることもできそうもない。本質がわからない。考えていることがわからないのだ。
ある意味、私の天敵とも言えた。
――あっ!!! そうか。あまりにもいまさら過ぎて忘れていたことがあった。すでに殿下から答えは提示されていた。
――殿下は、すべてのバチェラー参加者の令嬢を大切にしているから、他の令嬢にも私と同じように世話を焼いているのだ。ただ、それだけだった。それなら、すべての理由に辻褄が合う。
そうだ! 私は殿方から優しくされたことなどないから、殿下は私のことをもしかして、特別扱いしてくれているかと思ったが、違う。
バチェラー参加のお客様として、全員を大切に扱っている。ただ、そのなかの1人なのだ。最初に馬車でむかえに来てくださったときからおっしゃっていたではないか。
「わかったああああああああ!」
私の腹の底から出た声が、馬車に満ちて、流石に殿下もなにか言わなければいけない空気になったようだ。
「どうしたのですか?」
「殿下の謎の行動のすべてに、いま、決着がつきました」
殿下ははっとしたように、私を見つめた。
「なんですって?」
「殿下は、バチェラー参加中のすべての令嬢に優しく、世話を焼く紳士です」
殿下は私を失礼なくらい注視し、吹き出した。
首をかしげると、殿下は更に笑った。
「アニマ嬢は家族にも出立の挨拶をしたことでしょう。このまま屋敷に帰ったら気まずくありませんか」
「気まずいどころか、部屋がなくなっていて、居場所もないでしょう」
なぜかおかしくなって、途中で笑った。泣きたい場面のはずでは? いや。そうじゃない。いままで自分が家を出るなんて考えもしなかった。住む場所と仕事さえあればなんとかなるっていまなら思う。
殿下がせき払いをした。
「よかったら、王城に来ませんか?」
「えっ?」
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