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幼少期

5.猫族の族長

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 俺は練習ついでに、ミアに魔法を見せてやる。

 手のひらを伸ばし、矢のサイズの結界を高速で張り、ファイアーアロ―を使用する。
 的に向かって矢が当たり、的は燃え始めた。

 俺は次々と隣の的を燃やしていく。ちなみにほぼほぼ命中。
 その後、ウォーターで消したり、ウィンドで吹き消したりした。

「わーーー! お兄ちゃんカッコイイ!!」

 ミアは、ベターと地面に座りっており、全力で拍手をしてくれた。

「あ、そうだ」

 俺はミアに向かって魔力が弱めの水鉄砲を発射させた。

「冷たーい!」
「ハハ、気持ちいだろ?」
「うん!! 他の魔法も見せて~!」

 うーん、ミアが喜びそうな魔法は……。

「これなんかどうだ?」

 俺がミアの周囲に魔力を流し、花を沢山咲かせてやる。

「……綺麗!」


 魔力を花に宿すこどで花が人喰いの魔物になる。
 なんて言う小説も見たことがあるのだが……。

(なんないよね? 大丈夫だよね??) 

 なんて言ったってここは異世界だからな。
 人間の常識はここでは通用しないわけだ。
 常に気を張っておく必要がある。

「お兄ちゃん! はい、プレゼント!!」

 ミアが、花の冠を作ってくれていた。

 俺はしゃがみ、ミアを撫でる。

「ありがとな、兄ちゃん嬉しいよ」
「えへへ~」

 うーん、猫耳柔らかい。最高!!

「お兄ちゃん、他にもいっぱい魔法見せて!」
「飽きるまで、見せてあげるぞ」

 魔法というのは猫族にとっては見慣れない物だ。
 ミアもまだ3歳だしな。
 それ故、魔法にものすごく興味があるのだろう。


 ……ちなみに、父さんがミアに剣術を見せたことがある。
 その時、ミアは大泣きしていた。



 ――数時間後、夕方になったので、ミアを家に帰した後、また魔法の練習をしに戻って来た。

 ミアには、「まだお兄ちゃんと遊ぶの!」って泣かれてしまったわけだが。
 まったく……そんなに俺のこと好きなんだね!!
 俺も、だー好きだよ!! ぐへへへへへ。

 夜に近づくと、魔物の動きが活発化する。
 俺がついてはいるが、もしもミアに何かあったら……な。


「ん?」

 俺がいつもの連中場に戻ると、
 チャリン。
 という音が鳴り響いた。

 辺りを見渡すと、立派な木の上に、誰かが座っていた。

「ハッハッハ、本当に練習熱心な子じゃのー」
「……誰ですか?」

 歳をとっている猫族のおじさんだった。
 髪の毛は白髪となり、猫耳にはピアスが2つ。

 他の猫族の人たちとは、明らかに違う雰囲気を醸し出している。

「ずっとお前のことを見ていたよ。お前はーそうだな……」

 俺の身体をじっくり見ると、ニヤリと笑った。
 間違いない。これは相当の変態だ。

「僕に何のようですか?」
「……ほれ、魔法の練習を続けなくていいのか?」

 は、なんなんだコイツ。

「まず、貴方の名前を教えてください」
「練習――続けなくていいのか?」

 あれ、俺の質問に答える気は無い感じ?

 どうせ猫族だ。
 俺が気を緩めたところで、殺されはしないだろう。

 そう考えた俺は魔法の練習を再開した。

「ほほう……」

 その魔法を、じっくりおじさんは観察する。

「お前の魔法は普通じゃないな」
「どこがですか?」
「まず魔法を使うには体内のマナを削らなければならん。だが――」

 そう言いかけて、おじさんが高く飛び俺の目の前に着地した。

 こっわ!!!
 こんな高いジャンプ初めて見たぞ?!

「お前さんはマナを消費していない」

 ん?
 何を言っているんだこの人。

「マナの概念はこの世界には無いはずですよ」
「ふん? 概念、この世界?」

 おじさんが俺に顔をめっちゃ近づけてきた。

 し、しまった!

 あまり自分の事情は人に話すべきではない。

「何で学校で学ぶ概念を知っているのか聞きたいところじゃが、まぁ、それはおいておこう」

 そういって、おじさんは木を見上げた。

「お前さんには、意味のない話。マナが削れてないんじゃからのぉ」
「いいえ、概念を知ることは強くなるのには必要だと思います」
「……ほほお! 面白い考え方じゃ。確かにその通り」

 否定されるかと思いきや否定はされなかった。
 このおじさん。以外と柔軟な脳をお持ちだ。

「ワシは猫族の長じゃよ」
「猫族……ああ!!」

 もう会ったのは6年前だったので全く覚えていなかったわ。
 小説のストーリーにも出ていないキャラクターだったしな。

「僕をこの森林から追い出さないでくれた人ですね!」
「ふふん」

 おじさんは、こちらを見て微笑む。

 この森林を追い出されていたら俺死んでるかもしれないわけだ。
 本当に、このおじさんには感謝しかない。

「お前さんのことは評価している。挫けずやり遂げる能力もあるしの」

 こちらに近づいて来て、俺の頭に手を乗せた後、

「アドバイスじゃ、よく見てろ」

 おじさんは、ファンタジー小説ではよく見る、緑の美しい水晶がハマっている枝を起用に回した。

(うお、かっけぇぇ! 何このじじー)

「ウィンド」

 小さい魔法陣が杖の先から一つ出て、回っていた。

 おじさんから放たれた風は、土を簡単にエグった。

「すごい! ファーストクラスの魔法なのに!」
「おお、魔法の位階まで知っておるのか」

 おじさんは目を見開く。
 クラスとは、魔法の強さを表すものだ。
 当然クラスが上がれば、魔力も、難易度も上がってくる。

「お前さんの魔法はあまりにも開きすぎている。魔力をまとめなさい」

 それは、「魔力を込めろ」とか、「構え方がどうのこうの」とか。
 そういう、誰にでも指摘されるような話では無かった。
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