木製の処刑椅子が美少女に!?悪事を働く聖騎士(笑)ざまぁして何が悪い?〜処刑椅子の妻と俺が復讐を終えて幸せに暮らす方法〜

桜城恋詠

文字の大きさ
19 / 53
聖女の予言で燃える村と聖なる聖騎士(本物)

事実

しおりを挟む
 スピカは魔石に溜め込まれた魔力を吸収することはあっても、魔石を食らうことはない。
 見事に復讐代行を終え、証拠となる聖騎士の体内に埋め込まれていた魔石を回収し、ゆっくりと物陰に隠れて慎重に祭司ハネスの行方を探す。
 両手を強く握りしめたハヤルウは放心状態ではあったが、「まだ終わっていないぞ」と声を掛ければ、はっと瞳に憎しみの色が灯る。
 祭司ハネスは焼け野原になった村を後にして、入口付近で誰かと立ち話をしているようだか。
 会話が聞こえる距離までゆっくり近づけば、祭司ハネスと話をする男の声に聞き覚えがあることに気づく。

「聖女様には困ったものです。私のラボを破壊した上、このような場所に神託をお告げになられるとは…」
「よいではありませんか。我々西とは真逆の場でこのようなお告げをお示しになられた神と聖女に感謝はすれど、批判など許されてはおりませんよ」
「聖女が破壊した魔石の中にはもう少しで完成する魔石が山のように存在していたんですがねえ…研究データのバックアップと、この場で大量に手に入った魔石で手を打ちましょう」
「ええ。どうぞ、お持ち帰りください。カールメイク様。新たな研究の成果を楽しみにしておりますよ」
「ええ、ご期待に応えられるよう精進致します」

 ーー親父…?

 東の村から調達したであろう魔石の山を背に祭司ハネスと会話をするのは俺の父親、ラクパス・カールメイクだった。
 聖騎士ティトマスが祭司ハネスとラクパス・カールメイクの癒着を指摘していたが、どうやら事実であったらしい。
 息子の俺やお袋に隠れて、何をこそこそやっているかと思えば…。珍しい魔石の研究など大口叩いておきながら、やっていることは人殺しに利用するための魔石研究か。笑える。

 どっちにしろ、俺に罪はなくとも家族に罪がある。スピカに罪人を食わせている限り、俺も善人ではいられそうにない。

 最終目標は教会をぶっ潰すこと。
 祭司ハネスが諸悪の根源であるならば、彼と手を組み魔石研究をする親父だって、人類の敵だ。

「マルクス先輩」
「あー…。ああ。帰ろうか。ハヤルウ」
「祭司ハネスはいいんスか?」
「今はいい。あれをどうにかするのはティトマスの役目だ」

 祭司ハネスは聖女の上司でもある。

 外野の俺がパッと出ていってあの小太り祭司を処刑するより、ティトマスや聖女が仕留めたら世のため人のためになりそうではある。

 5人もの血肉を食らい付くした木製椅子はるんたった、るんたったと軽やかに四足を地面の上で回転させて、踊るように前へ進む。
 勢い余って自動回転椅子のようにくるくる回る木製椅子はシュールであるが、ハヤルウと俺達の間には会話の一つもなく、俺たちは帰路に着いた。

「やっと帰ってきた!」

 出迎えた4人の聖騎士はハヤルウを褒め称え、四人で寄って集って胴上げを始めた。
 復習を遂行したことのお祝いでもあるが、雑用をハヤルウに任せきりだった男たちはまともな料理にありつけず、帰ってきたばかりのハヤルウを担ぎ上げて料理を作ってもらおうと必死だ。

 肩を竦めたハヤルウが料理を振る舞うとどんちゃん騒ぎを始め、それらが落ち着いた頃。

 ハヤルウは俺にある事実を打ち明けてきた。

「マルクス先輩。実は…おれ、いや、わたしはハヤルウではありません」
「…ん?わたし?」
「ハヤルウは兄の名前で、わたしはルハルウと申します。兄はいじめに絶えきれず…引きこもりになってしまって。兄の無念を晴らすため、わたしが入れ替わることになりました。彼らは言うことを聞かなればわたしを襲うと言ったので、わたしはハヤルウとして教会で暮せば、自宅にいるのはわたしであると偽った兄です。死ぬことはあっても凌辱されることはないと両親の判断もありましたが…。その、嘘をついていて、みっともない姿をみせてごめんなさい!わたしとハヤルウは、放出と貯蓄、両方の魔石を持っていてーー」
「両方?」
「わたしと兄は双子です。二卵性で…互いに生まれた魔石を一つずつ、後天的に1つの魔石を2つに割ったものを埋め込まれました」

 なるほど。だから異常なほど快楽に喘いでいたのか。
 納得はしたが、スピカの視線が痛い。さっきまでるんるん気分で小躍りしていたのに、木製椅子はその話を聞いた途端に動きを止めた。

「その、マルクス先輩。わたし、兄以外に魔力譲渡をしてもらったのは初めてで。わたしたち、とても相性がいいと思うんです。ですから、これからもーー」
「あ、いや。それは…」
「わ、わたしとお付き合いーー」
「あるじさま、うわきもの」

 違うんだスピカ。不可抗力だ。怒るなと声を出すわけにもいかず、どのようにハヤルウーー本名はルハルウと言うらしいーーを説得するか頭を悩ませていれば、はっと顔を上げてその場にしゃがみ込んだ。
 ルハルウは見覚えのない手紙を手に持っていた。はっと手にした手紙を開いたルハルウは、内容を確認すると声を張り上げる。

「聖騎士ティトマス先輩からです!聖女さまが、処刑されるって!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした

黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。 死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。 絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。 これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

処理中です...