木製の処刑椅子が美少女に!?悪事を働く聖騎士(笑)ざまぁして何が悪い?〜処刑椅子の妻と俺が復讐を終えて幸せに暮らす方法〜

桜城恋詠

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ぶっ飛び公爵令嬢と燃える森

助けを求める処刑椅子

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「なっ、不思議ですわ~!椅子がっ!木製の椅子がっ!踊っておりましてよ!?」

 ーーどうしてそうなるんだ。

 木製椅子の四足一本に体重を掛け、くるくると高速回転し始めたのだ。
 手品かと驚くお嬢様は瞳を輝かせてスピカの木製椅子をいろんな角度から見つめている。
 聖女さんもはじめてスピカのこと見たときこんな反応をしていたな。
 聖女さんは純粋な興味。お嬢様はーー美術品か何かと勘違いしていそうだが。

「先程まで普通の木製椅子でしたわよね!?さすが!処刑椅子ですわ~!ゼンマイでもついているのかしら…?」
「…スピカのこと、神様の信仰心が深い人にしか、見ることできない…」
「きゃあ!ねえ、見まして!?木製椅子が!可愛らしい女の子に!!!」
「見ている、見ているからくっつくな」

 いくら驚いたからって、反対側に後退ればいいだろ。
 なんで俺に抱きついてくるんだよ。
 文句を言って怒らせてはスピカの頑張りが無駄になるため、ひとまずマイルドな表現で拒絶の言葉を告げるが、「役得ですわよね!?」と逆ギレされた。
 おかしいだろ。俺にはスピカがいるのに…勘弁してくれ。

「あなたのような上半身裸で町中を彷徨く変態に触れる女性など、そう多くはありませんでしょう!?わたくしは女性の身体を堪能できてラッキー、と喜ばれることはあっても、ドン引きされる謂われはありませんわ~!」
「わかった、わかったから。今は俺よりも木製椅子が美少女になった件が大事だろ」
「はっ!そうでしたわ!わたくしの信仰心が深いから姿を見せたと言っていましたわよね?わたくし、普段は隠しているつもりなのですけれど、わかる人にはわかるのかしら…?」
「スピカ、精霊。神様の使い。エデル、神様と聖女が大好き。把握した」
「まあ!なんて聡明な精霊さんなんでしょう!このような変態さんと一緒にいるなど、社会の損失ですわ!わたくしのお家で暮らしましょう!」
「スピカ、あるじさまのもの。エデル、スピカのお願い、叶えてくれる…?」
「もちろんですわ~!可愛らしい女の子、それも滅多にお目にかかれない精霊さんのお願いなら、わたくしどんなお願い事でも叶えて差し上げましてよ~!」
「ーースピカ、教会嫌い。聖騎士の中にも、教会嫌いなひと、教会を壊そうとしている。あるじさまも同じ気持ち。エデル、スピカ達に協力してほしい」
「せっ…」

 せ?不自然に言葉を詰まらせたお嬢様は突然俺の腕にまとわりつくのをやめた。
 スカートが汚れるのも気にすることなく大きく足を前に開き、スライディングさせるような形でアスファルトに腰を降ろすと両手を組みスピカを見上げる。
 うるうると瞳を潤ませて涙を流すお嬢様は正直言って聖騎士とは違ったヤバさがある。
 完全に変な宗教にハマっている人の仕草だ。家が画商だと言うし、強ち間違いではないかもしれないが。

「精霊さんがわたくしにお願いしてくださいましたわ~!生きていてよかった…っ!わたくし、今最上級の幸せを噛み締めていましてよ~!」
「あっ、そう…」
「わたくしの答えは、イエスかはいしか存在しませんわ~!」

 スピカはお嬢様のことを「神様と聖女ガチ勢」などと表現していたが、どうやら事実であったらしい。
 涙を流しながら深々と頭を下げたお嬢様は本気でスピカを尊敬しているらしく、頭を足で抑えつけられても喜びそうな雰囲気がある。
 聖女を信仰する村人にもこうしたヤバイ奴らがいるのは知っているけど、聖騎士が腐っていると知ってもなお神聖な物を信仰し続けるやつなんているのかと驚きを隠せない。

「精霊さん…っ。いいえっ!スピカ様!どうぞなんなりと、わたくしにご命令くださいな!わたくし、たとえこの命を投げ売ってでもスピカ様のお願いを叶えてみせましてよ~!」
「あるじさまの言葉、スピカの言葉と思って」
「承知致しましたわ!」
「ところで…お二人はどういった関係ですの?はっ!精霊スピカ様の主ならば、もしや神…っ!?」
「違うから。普通の人間だぞ」
「まあ、隠さなくたっていいんですのよ?わたくし、口は硬…っ!スピカ様!?」
「うぅ…っ!」

 突然苦しみだしたスピカの身体がぐらりと揺れ、バタリと地面に倒れた。
 目の前で座り込んでいたお嬢様が慌てて身体を揺らすが、スピカは人形を保つのがやっとなようで、段々と身体が透けてきている。

「スピカ様!?ねえ、どうしたんですの!?」
「あ、るじ…っ!魔樹木…っ!魔樹木にっ!火が…っ!」
「魔樹木に火、だって?放火か!?」
「た、たすけ…っ!全部燃えたらっ!スピカ消えちゃう…っ!」
「スピカ様!?」

 絶叫と共にスピカが木製椅子の姿に変化し、人形がかき消えてしまった。
 驚いて二の句が紡げないお嬢様はこの際おいていくにしても、スピカが苦しみだしてから左目の義眼がじんじんと熱を帯び、視力がないはずなのにちらちらと燃え盛る炎が写り込んでいる。

 まさか、スピカの魔石と連動しているのか?

 スピカの魔樹木だけではなく、魔獣の森全体が燃えているように見えた。
 ここから全速力で走っても数時間は掛かる距離だ。
 その間、これだけ大きな火事なら現場に向かった所で間に合わないかもしれない。
 だが、魔樹木が消失してしまえば、スピカは消えてしまう。
 俺とスピカはエンゲージをしていることもあり、スピカの魔樹木が消失した場合、最悪俺の命も消えるかもしれない。

 エンゲージは2人が1つになる行為。死ぬときも、2人一緒だ。

「どこに行けばいいんですの!」
「…っ」
「困っているのでしょう!?現場に向かいますわよ!」

 持つべきものは金持ちの知人だ。
 お嬢様は金に物を言わせて商人の知り合いから足が速いと有名なクイックイーターを借り受けると、俺たちを載せて魔獣の森へと向かった。
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