31 / 53
ぶっ飛び公爵令嬢と燃える森
魔樹木移植
しおりを挟む
「ラクルスくん!」
「ぐっ…!」
スレインさんの叫び声が聞こえる。
強烈な左目の痛みに思わず声を漏らしながらも、どうにかスピカの魔石を魔樹木から引き抜く。
スレインさんが用意してくれていた魔樹木の上へ下ろし、スレインとお嬢様がこの場にいなければのたうち回っていたほどの激痛に耐え抜いた。今は痛みに震えている場合ではない。
スレインさんが自身の来ていたTシャツを脱ぎ、近くの土をかき集めて即席の苗床を作る。
魔樹木の枝を苗床に突き刺しほっと息を吐いた時だった。お嬢様の叫び声が聞こえたのは。
「木が!倒れますわよ!!!」
炎に巻かれた魔樹木はどうにかスピカの魔石から供給される魔力で形を保っていたが、魔力供給を奪われあっさりと陥落する。
グラグラと左右に揺れて左に朽ちていく魔樹木を見つめながら、俺はその場から動くことができなかった。
「繋がりは…」
左目に感じていた強烈な激しい痛みが消え、思わず左目に埋め込まれた魔石に込められた魔力を辿って、スピカとの繋がりを確かめる。
繋がりは微かではあるものの、残ったままだ。
魔樹木の移植は成功した。
あとは、俺たち3人が生きて炎が燃え盛る魔獣の森から脱出すればいいだけ。
「ラクルスくん、魔力はまだあるかい」
「ああ。もちろんだ」
「スピカの魔石に魔力を注いでほしいんだ。できる限り、絶え間なく。しっかりと苗床に根を張らせないと、スピカが死んでしまう」
「わかった」
スピカが生きるための魔力原理は後で確かめればいいことだ。
とにかく今は、言われた通りにすればいい。
スレインさんのTシャツを受け取り、クイックイーターに跨ってからしっかりと膝の上に苗床を乗せ、スピカの魔石に直接触れて魔力を最大限注ぎ込む。
猛スピードで走り始める魔獣の背で感じる快感に悶え苦しむなどどんなプレイだ。
「そんなんじゃすぐに魔力枯渇を起こしますわよ!これだから耐え症のない殿方は…っ!」
「じゃあ、どうしろって言うんだ!?」
「魔力の回復は、充分な睡眠と食事と言われているけれどーー実は、もう一つ方法がある」
「スレインさん!?」
「簡単なことだ。性的興奮を感じれば、すぐにでも魔力は回復する」
「なっ!わたくしにストリップショーをしろと言いたいんですの!?」
まずはお嬢様の身体で興奮すると思っている所から考えを改めて欲しい。
好きでもない女の身体を見たって、生理現象的な意味での興奮はするかもしれないが、魔力を回復するだけの魔力を得るためには、やはり自給自足が必要だ。
つまり、妄想力が試されている。そんなことあるか、と。
試しにスピカのあられもない姿を想像してみる。
『…あるじさま』
舌っ足らずなスピカの言葉だけで、思うことがないわけではない。
燃え盛る炎を駆け回る魔獣の背に乗り悶々と思考し続けていれば、スピカに魔力を注ぎ込んでいているにも関わらず、一向に魔力が減らないことに気づく。
なるほど、これが自給自足か。
「ちょっと!聞いていますの!?」
「…なんとなく、コツが掴めた」
「いまので!?」
「それはよかったよ」
「スレインさん、ラビユーは?助けに行かなくていいのか?」
「ごめん。ラビユーは…教会に連れ去られてしまったんだ」
「教会に?」
ラビユーって誰ですの?
お嬢様は疑問を抱いているが、今は説明する時間があったらスピカのことだけを考えて魔力回復に勤めなければ。
ーーラビユーが教会に囚われた。
ラビユーの珍しい点と言えば、やはり人間と魔獣の混血であることだろうか。
人間、ウサギ、馬の血が混ざる混血の、かろうじて人形を保つ天然物など、いかにも親父が好みそうな実験台だ。
今後意図的にそうした化け物を生み出すことに没頭しそうな程に、完成されたラビユーの境遇を考えると心が痛む。
天真爛漫なラビユーが、教会の非人道的な研究に耐えられるわけがない。
やはり教会は潰すべきだ。何を引き換えにしても。
「マスティフがそれとなくラビユーのことは影から見守ると言っていたから、死ぬような実験に巻き込まれることはないとは思う。マスティフがいないところでの実験は、防ぎ切れないかもしれないけどね…」
「ティトマスに会ったのか?」
「魔樹木に向かう前にね。ここに来る途中、ニュースバードが飛んでいるのを見た。メロディアちゃんも神託を受けてこの事態を把握していると思う。いずれ、この地には王立騎士団がやってくる」
「聖女さんが呼んだ王立騎士団が!?あいつら、火災に役立つのか?」
「何とぼけたこと言っていますの!?王立騎士団は魔術のエキスパート集団ですのよ!?魔力さえあれば火の消火作業などお茶の子さいさいですわ~!」
「なら、じっとしてればよかったじゃないか」
「スピカのこと、王立騎士団になんて説明するんだい」
「説明?」
説明義務なんてあったかと頭を悩ませれば、またお嬢様から叱咤が飛んできた。
「精霊を無許可で使役するのは違法でしてよ?」
木製椅子の使役許可はマルクス・メイホールが所持しているが、魔樹木の使役許可などラクルス・カールメイクだって保持していない。
上級精霊の使役許可…。マルクス・メイホールの名前で降りるだろうか。
「ぐっ…!」
スレインさんの叫び声が聞こえる。
強烈な左目の痛みに思わず声を漏らしながらも、どうにかスピカの魔石を魔樹木から引き抜く。
スレインさんが用意してくれていた魔樹木の上へ下ろし、スレインとお嬢様がこの場にいなければのたうち回っていたほどの激痛に耐え抜いた。今は痛みに震えている場合ではない。
スレインさんが自身の来ていたTシャツを脱ぎ、近くの土をかき集めて即席の苗床を作る。
魔樹木の枝を苗床に突き刺しほっと息を吐いた時だった。お嬢様の叫び声が聞こえたのは。
「木が!倒れますわよ!!!」
炎に巻かれた魔樹木はどうにかスピカの魔石から供給される魔力で形を保っていたが、魔力供給を奪われあっさりと陥落する。
グラグラと左右に揺れて左に朽ちていく魔樹木を見つめながら、俺はその場から動くことができなかった。
「繋がりは…」
左目に感じていた強烈な激しい痛みが消え、思わず左目に埋め込まれた魔石に込められた魔力を辿って、スピカとの繋がりを確かめる。
繋がりは微かではあるものの、残ったままだ。
魔樹木の移植は成功した。
あとは、俺たち3人が生きて炎が燃え盛る魔獣の森から脱出すればいいだけ。
「ラクルスくん、魔力はまだあるかい」
「ああ。もちろんだ」
「スピカの魔石に魔力を注いでほしいんだ。できる限り、絶え間なく。しっかりと苗床に根を張らせないと、スピカが死んでしまう」
「わかった」
スピカが生きるための魔力原理は後で確かめればいいことだ。
とにかく今は、言われた通りにすればいい。
スレインさんのTシャツを受け取り、クイックイーターに跨ってからしっかりと膝の上に苗床を乗せ、スピカの魔石に直接触れて魔力を最大限注ぎ込む。
猛スピードで走り始める魔獣の背で感じる快感に悶え苦しむなどどんなプレイだ。
「そんなんじゃすぐに魔力枯渇を起こしますわよ!これだから耐え症のない殿方は…っ!」
「じゃあ、どうしろって言うんだ!?」
「魔力の回復は、充分な睡眠と食事と言われているけれどーー実は、もう一つ方法がある」
「スレインさん!?」
「簡単なことだ。性的興奮を感じれば、すぐにでも魔力は回復する」
「なっ!わたくしにストリップショーをしろと言いたいんですの!?」
まずはお嬢様の身体で興奮すると思っている所から考えを改めて欲しい。
好きでもない女の身体を見たって、生理現象的な意味での興奮はするかもしれないが、魔力を回復するだけの魔力を得るためには、やはり自給自足が必要だ。
つまり、妄想力が試されている。そんなことあるか、と。
試しにスピカのあられもない姿を想像してみる。
『…あるじさま』
舌っ足らずなスピカの言葉だけで、思うことがないわけではない。
燃え盛る炎を駆け回る魔獣の背に乗り悶々と思考し続けていれば、スピカに魔力を注ぎ込んでいているにも関わらず、一向に魔力が減らないことに気づく。
なるほど、これが自給自足か。
「ちょっと!聞いていますの!?」
「…なんとなく、コツが掴めた」
「いまので!?」
「それはよかったよ」
「スレインさん、ラビユーは?助けに行かなくていいのか?」
「ごめん。ラビユーは…教会に連れ去られてしまったんだ」
「教会に?」
ラビユーって誰ですの?
お嬢様は疑問を抱いているが、今は説明する時間があったらスピカのことだけを考えて魔力回復に勤めなければ。
ーーラビユーが教会に囚われた。
ラビユーの珍しい点と言えば、やはり人間と魔獣の混血であることだろうか。
人間、ウサギ、馬の血が混ざる混血の、かろうじて人形を保つ天然物など、いかにも親父が好みそうな実験台だ。
今後意図的にそうした化け物を生み出すことに没頭しそうな程に、完成されたラビユーの境遇を考えると心が痛む。
天真爛漫なラビユーが、教会の非人道的な研究に耐えられるわけがない。
やはり教会は潰すべきだ。何を引き換えにしても。
「マスティフがそれとなくラビユーのことは影から見守ると言っていたから、死ぬような実験に巻き込まれることはないとは思う。マスティフがいないところでの実験は、防ぎ切れないかもしれないけどね…」
「ティトマスに会ったのか?」
「魔樹木に向かう前にね。ここに来る途中、ニュースバードが飛んでいるのを見た。メロディアちゃんも神託を受けてこの事態を把握していると思う。いずれ、この地には王立騎士団がやってくる」
「聖女さんが呼んだ王立騎士団が!?あいつら、火災に役立つのか?」
「何とぼけたこと言っていますの!?王立騎士団は魔術のエキスパート集団ですのよ!?魔力さえあれば火の消火作業などお茶の子さいさいですわ~!」
「なら、じっとしてればよかったじゃないか」
「スピカのこと、王立騎士団になんて説明するんだい」
「説明?」
説明義務なんてあったかと頭を悩ませれば、またお嬢様から叱咤が飛んできた。
「精霊を無許可で使役するのは違法でしてよ?」
木製椅子の使役許可はマルクス・メイホールが所持しているが、魔樹木の使役許可などラクルス・カールメイクだって保持していない。
上級精霊の使役許可…。マルクス・メイホールの名前で降りるだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした
黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。
死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。
絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。
これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。
しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。
絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。
一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。
これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる