33 / 53
姿を消した処刑椅子の精霊と偽聖女の噂
今後の方針
しおりを挟む
「へえ?スピカを使って、聖騎士を抹殺…ね」
「スピカは犯罪者の血肉がないと生きられないんだ。聖騎士は生きている価値もない奴らばかりだろ。ゴミ掃除のついでに。罪なき村人には手を出していない。こっちのお嬢様は画商として聖騎士の盗難品を買い取るのに嫌気が差して、聖騎士を皆殺しにしたいらしい」
「協会にはティトマスがいるだろ。皆殺しは無理かもしれないが、ティトマスや聖女さんと手を組んで、教会をぶっ潰したいと思っている。スレインさん、ティトマスと連絡を取れないか?お嬢様は王族と懇意にしていて、聖騎士が盗難品売買を行う証拠を山のように持っているみたいだ。告発して王立騎士団を動かしてもいいと言っている」
「あの、王立騎士団を…」
含みのある言い方だ。
お嬢様は「王立騎士団が絶対に動く」と確信しているようだが、スレインさんは王立騎士団に動かれると困るのか?それとも、動くわけがないと思っているのかは…判断がつかないな。
「協力してほしいんだ。スレインさんだって、教会には思うことがあるだろ」
「ーー確かに、あるよ。マスティフが教会を潰す為に動いていることも知っている。僕としては…ラビユーを人質に取られた以上、今動くのは得策ではないと思う」
「どういうことですの?人質がいるならば、襲撃チャンスでしょう?今すぐにでも告発して王立騎士団を教会に向かわせるべきですわ!」
「…聖騎士は、祭司ハネスの指示を受けて魔獣の森に火をつけた。王立騎士団が乗り込んで行った所で、祭司の口車に載せられて大した成果もなく戻ってくるのがオチだよ。実際、何十年も前に私腹を肥やした教会にお急を据えようと行動した2代前の国王は、神のご意思に歯向かう罪人として処刑された。パワーバランスだけで言えば、王家は教会よりも弱い立場にあるんだ。タイミングを間違うと、誰にも止められなくなる」
「でしたら、あなたはいつ乗り込むのが正解だと思いますの?」
「教会が新たな聖女を選定して、悪評を世に知らしめてから、かな」
「新たな聖女選定後?それでは遅すぎますわ!聖女メロリーチェが亡くなり、3年が経ちました。すぐ後にお生まれになる新たな聖女様が健やかに成長されていたとしたら、聖女さまはまだ3歳ですのよ?神の言葉を一言一句違えず知らせるには、あと2年は掛かりますわ。悠長に待つ時間はありませんの!わたくしに一体あといくつ美術品保管庫を作らせるおつもりですの!?」
スレインさんは少なく見積もってもあと2年は現状維持するべきだと言うが、お嬢様は今すぐにでも聖騎士を皆殺しにしたいと地団駄を踏む。
スピカがいれば精霊パワーで上から抑えつけるが、俺とスレインさんじゃお嬢様を説得するには力不足だ。
「盗品を勝手に売り捌くのが倫理的に問題になると二の足を踏んでいるんだよね」
「ええ」
「教会は不審死と疑われないように、死亡届を時間差で提出するよう務めている。実際はすでに亡くなっているけど、死亡届を提出せずにほとぼりが冷めるのを待っている例は、数え切れないほどあるんだよ」
「書類上は生きているけれど、実はすでに亡くなっていて、引き取り手のなくなった美術品まで…律儀に証拠として保存する必要はないんじゃないかな。少なくとも、書類上では生きていても、実際は死んでいる。引き取り手などわかるはずがない」
「どうやって把握するんですの?書類が提出されなければ、こちらは調べようなどなくてよ?」
「僕には優秀な息子がいてね。未提出と提出済。きっちり分けて把握しているはずだ。次に会うとき持ってこさせよう。身寄りがない死亡者はかなりの数に上るはずだ。教会は原則一家皆殺しだ。かなりの儲けが出ると思う。そのお金でしばらく、息子の準備に余計な口出しをしてこないでもらえるかな」
「あなたの息子が行う準備とやらを満足に終えたら、教会はぶっ壊せますの?」
「壊すよ。必ずね。僕の息子は有言実行って言葉が大好きなんだ」
お嬢様はティトマスの人となりを知らないため、本当かを判断しかねている。
ひとまず俺も「いつかは必ず教会を滅ぼす」とスレインさんの言葉を肯定した。
「スピカ様の美しいお声が再び聞けるようになるまでは、休戦と致しましょう。あなたの言葉が真実であるかどうかは、その息子とやらに聞きますわ」
お嬢様にとって何より優先するべきはスピカの言葉だ。
スピカの言葉が聞こえない以上、お嬢様は俺達に無理強いしてもどうにもならないと気づいたのだろう。
さすがお嬢様。バカではないようだ。
「そうしてくれると助かるな」
「スピカ様が美しいお姿をわたくしに見せて頂けるようになるまで、屋敷内ではご自由にお過ごしくださいませ」
「ありがとう。お嬢様」
「いい加減、お嬢様と呼ぶのはやめてくださいますかしら!わたくしの高貴なる名前を口にするのも憚られるならば、無理強いはしませんけれど」
「それは、スピカの許可が出たらな」
親密な関係になればスピカが嫉妬する。
つかず離れず距離を保ちながら、俺たちはお嬢様の屋敷で羽を休めることになった。
「スピカは犯罪者の血肉がないと生きられないんだ。聖騎士は生きている価値もない奴らばかりだろ。ゴミ掃除のついでに。罪なき村人には手を出していない。こっちのお嬢様は画商として聖騎士の盗難品を買い取るのに嫌気が差して、聖騎士を皆殺しにしたいらしい」
「協会にはティトマスがいるだろ。皆殺しは無理かもしれないが、ティトマスや聖女さんと手を組んで、教会をぶっ潰したいと思っている。スレインさん、ティトマスと連絡を取れないか?お嬢様は王族と懇意にしていて、聖騎士が盗難品売買を行う証拠を山のように持っているみたいだ。告発して王立騎士団を動かしてもいいと言っている」
「あの、王立騎士団を…」
含みのある言い方だ。
お嬢様は「王立騎士団が絶対に動く」と確信しているようだが、スレインさんは王立騎士団に動かれると困るのか?それとも、動くわけがないと思っているのかは…判断がつかないな。
「協力してほしいんだ。スレインさんだって、教会には思うことがあるだろ」
「ーー確かに、あるよ。マスティフが教会を潰す為に動いていることも知っている。僕としては…ラビユーを人質に取られた以上、今動くのは得策ではないと思う」
「どういうことですの?人質がいるならば、襲撃チャンスでしょう?今すぐにでも告発して王立騎士団を教会に向かわせるべきですわ!」
「…聖騎士は、祭司ハネスの指示を受けて魔獣の森に火をつけた。王立騎士団が乗り込んで行った所で、祭司の口車に載せられて大した成果もなく戻ってくるのがオチだよ。実際、何十年も前に私腹を肥やした教会にお急を据えようと行動した2代前の国王は、神のご意思に歯向かう罪人として処刑された。パワーバランスだけで言えば、王家は教会よりも弱い立場にあるんだ。タイミングを間違うと、誰にも止められなくなる」
「でしたら、あなたはいつ乗り込むのが正解だと思いますの?」
「教会が新たな聖女を選定して、悪評を世に知らしめてから、かな」
「新たな聖女選定後?それでは遅すぎますわ!聖女メロリーチェが亡くなり、3年が経ちました。すぐ後にお生まれになる新たな聖女様が健やかに成長されていたとしたら、聖女さまはまだ3歳ですのよ?神の言葉を一言一句違えず知らせるには、あと2年は掛かりますわ。悠長に待つ時間はありませんの!わたくしに一体あといくつ美術品保管庫を作らせるおつもりですの!?」
スレインさんは少なく見積もってもあと2年は現状維持するべきだと言うが、お嬢様は今すぐにでも聖騎士を皆殺しにしたいと地団駄を踏む。
スピカがいれば精霊パワーで上から抑えつけるが、俺とスレインさんじゃお嬢様を説得するには力不足だ。
「盗品を勝手に売り捌くのが倫理的に問題になると二の足を踏んでいるんだよね」
「ええ」
「教会は不審死と疑われないように、死亡届を時間差で提出するよう務めている。実際はすでに亡くなっているけど、死亡届を提出せずにほとぼりが冷めるのを待っている例は、数え切れないほどあるんだよ」
「書類上は生きているけれど、実はすでに亡くなっていて、引き取り手のなくなった美術品まで…律儀に証拠として保存する必要はないんじゃないかな。少なくとも、書類上では生きていても、実際は死んでいる。引き取り手などわかるはずがない」
「どうやって把握するんですの?書類が提出されなければ、こちらは調べようなどなくてよ?」
「僕には優秀な息子がいてね。未提出と提出済。きっちり分けて把握しているはずだ。次に会うとき持ってこさせよう。身寄りがない死亡者はかなりの数に上るはずだ。教会は原則一家皆殺しだ。かなりの儲けが出ると思う。そのお金でしばらく、息子の準備に余計な口出しをしてこないでもらえるかな」
「あなたの息子が行う準備とやらを満足に終えたら、教会はぶっ壊せますの?」
「壊すよ。必ずね。僕の息子は有言実行って言葉が大好きなんだ」
お嬢様はティトマスの人となりを知らないため、本当かを判断しかねている。
ひとまず俺も「いつかは必ず教会を滅ぼす」とスレインさんの言葉を肯定した。
「スピカ様の美しいお声が再び聞けるようになるまでは、休戦と致しましょう。あなたの言葉が真実であるかどうかは、その息子とやらに聞きますわ」
お嬢様にとって何より優先するべきはスピカの言葉だ。
スピカの言葉が聞こえない以上、お嬢様は俺達に無理強いしてもどうにもならないと気づいたのだろう。
さすがお嬢様。バカではないようだ。
「そうしてくれると助かるな」
「スピカ様が美しいお姿をわたくしに見せて頂けるようになるまで、屋敷内ではご自由にお過ごしくださいませ」
「ありがとう。お嬢様」
「いい加減、お嬢様と呼ぶのはやめてくださいますかしら!わたくしの高貴なる名前を口にするのも憚られるならば、無理強いはしませんけれど」
「それは、スピカの許可が出たらな」
親密な関係になればスピカが嫉妬する。
つかず離れず距離を保ちながら、俺たちはお嬢様の屋敷で羽を休めることになった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした
黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。
死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。
絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。
これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。
しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。
絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。
一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。
これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました
黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった!
これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる