木製の処刑椅子が美少女に!?悪事を働く聖騎士(笑)ざまぁして何が悪い?〜処刑椅子の妻と俺が復讐を終えて幸せに暮らす方法〜

桜城恋詠

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ラストざまぁは不完全燃焼

ラクパス・カールメイク

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「それじゃ、健闘を祈るよ」

 ラクパス・カールメイクが何処に暮らしていてどのような場所で研究をしているか。
 そこまではこっちで調べておいたから、彼の処刑は君たちに任せる。

 スレインさんは王都組と共に教会に乗り込んで祭司ハネスの最期を見届けるそうだ。
 スレインさんの身体を不老不死に改造し、先代聖女リディアールの人生を狂わせた教会への恨みは計り知れない。

「スピカ、よかったのか?教会がどうなるか気になるなら…」
「スピカ、祭司より、こっちに恨みある。スピカの魔石を2つに割った。あの人許さない」
「そっか」
「あるじさま、みんなといっしょ。よかった?」
「いや、これでいい。親父を殺すのは、俺の役目だ」

 俺に力があれば。親父は自らの手で俺が殺すべきなのだろう。
 魔を吸収する魔剣を手にしたとはいえ、どれだけ使いこなせるかはぶっつけ本番だ。
 お嬢様が戦っている姿も数えるほどしか見たことがない。
 親父が手練なら最悪の場合も考えなくては。

「お嬢様。少しでも危ないと思ったら、俺とスピカを置いて逃げてくれ」
「わたくしがスピカ様を置いて一人だけ逃げるような腰抜けに見えまして!?逃げるならスピカ様と共に逃げますわ!」
「俺とスピカはエンゲージしているんだ。俺に何かがあれば、スピカも生きられないだろ」
「あるじさま、スピカ。二人で一つ。誰にも引き離せない」
「だったら、もしものことなど考えずに倒すことだけを考えてくださる?自信がないことを見抜かれると、返って危険になりましてよ」
「…そうだな」

 相打ちになった方が楽になれると考えていた気持ちをお嬢様に見透かされている。
 スピカは気づいていても指摘して来なかったのにな。
 どうにもこうにも。このお嬢様は。
 教会との一件がなければ絶対に関わり合いになることはなかった。
 教会が汚職に塗れ、俺が処刑椅子と名高いスピカと共に居なければ。
 彼女は俺に見向きもしなかっただろう。

「お嬢様」
「なんですの?」
「怖くないか」
「わたくしが恐れるものなど、この世に存在致しませんわ!」
「だろうな」

 いつだって前を見ているお嬢様に習い、いい加減俺も前を見据える時間が来たのかもしれない。
 マルクス・メイホールから、ラクルス・カールメイクに戻る時間が来た。

「さあ!正面突破と参りますわよ!」

 親父が死んだら、負債がなければこの王都の一家屋は俺のものだ。
 真正面から派手にお嬢様がウインディーネをぶちかまし、津波レベルの水流をカールメイク邸に流し込んだのを見て、俺は水が引くのを待ってからスピカの木製椅子を担いで屋敷内に侵入した。

「な、なんだ!?誰なんだお前たちは!!!」
「息子の顔も忘れたのか。最後に会ったのは15の時だもんな。7年も会ってなきゃ忘れるのも無理はねえ。そもそも、自分に息子が居るってことも忘れているんじゃないか?」
「な、息子、だと…!?」

 俺に息子なんかいない。
 息子は死んだはずだ。

「マルクス…!?生きていたのか!」
「生きていた?てめえが殺そうとしたんだろ!自分が生き残るために邪魔な妻と息子を教会に処刑させて!あんたは今まで何していた?」
「し、仕事が忙しくてっ。そうだ!珍しい魔石を見つけたんだ。マルクスにも、ほら!」
「ふざけんな!人間から抉り取った魔石だろ!?」
「…」

 さあどっちだと飲み込んだ水をゲホゲホと吐き出した親父の首元に魔剣を突き付ける。
 黒光りする魔剣は、親父から流れ出る負のオーラを吸収しては、どんどんと熱を帯びていく。

 親父が選んだのは俺が想定していた言葉。
 そのどちらでもなかった。

「俺はあんたの仕事、採掘師だと思っていたよ。誰も立ち入ることのない鉱山で魔石を見つける採掘師。俺の親父は魔石を見つける天才なんだって自慢していた幼い頃の俺を殴りつけてやりたいくらいだ!あんたはずっと、理想の魔石を生み出すため人間に埋め込まれた魔石を無理矢理奪い取って研究材料として利用したんだろ!?」
「ある時は魔石を破壊し、粉末状にして他の魔石と掛け合わせた。またある時は、2つの魔石を半分に割り、一つの魔石にしたんだ。あんたは人間に適応する魔石だけでは飽き足らず、魔獣の魔石についても研究を重ねていたんだって?」
「スピカの魔石は元々純度の高いルビーだった!てめえが魔石に魔獣の魔石や複数の失敗作を再利用するために魔石に混ぜたから、スピカの魔石は黒ずんだ!失敗作を再利用するため2つに割って俺に移植したな?なぜそんなことをした!!!」
「スピカ?ああ、被検体番号HA6486か。あの魔石はよかったなあ…。流石は聖女が惹かれるだけはあって、キラキラ輝いていた。私はあの魔石を穢したかったんだ…。キラキラしている魔石ほど、黒く濁って他のものと混ざりあったとき、キラキラが嘘のように消えてなくなるのが面白くてねええええ!」
「ラクルスさん!」

 俺がスピカの魔石をなぜ穢したのかと聞けば、親父は突然奇声を上げる。
 俺が魔剣の剣先を引くよりも早く。
 自らの喉に突きつけられた魔剣の剣先を掴みー-勢いよく喉に剣先を突き立てた。

「…っ」
「がっ…!」

 親父の顔は狂気に歪んでいた。
 魔剣に親父の魔力が流れ込む度に、両手がじんじんと熱を帯びていく。
 何度も何度も。狂ったように剣先を喉元に打ち付ける親父は魔剣に宿る魔に魅入られている。
 俺が魔に魅入られるのも時間の問題だった。
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