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10・公爵の愛娘、悪徳養父を成敗する
教会の内部にて
「真正面から堂々と訪問したところで、剣の錆になるだけでしょう」
「ふん。俺が四方八方を囲まれた程度で、命を奪われる男だとでも思っているのか?」
「閣下であれば全員を退けるのは簡単でしょうが、ロルティ様を守りながらですとやはり……」
「俺の愛娘を足手纏い呼ばわりとは……。いい度胸だな」
「私と閣下が今ここで言い争いを繰り広げる必要は、あるのでしょうか」
じっと黙って一触触発な空気で会話を聞き続けていたロルティは、元気よくカイブルの質問に答えた。
「ないよ!」
「そうか。では、無駄な言い争いは止め、現実的な話をしよう」
愛娘の言葉を耳にした父親は、先程までカイブルと言い争っていたのが嘘のように真面目な表情で話題を変えた。
護衛騎士は何か言いたげにジト目で彼を見つめていたが、幼子の前でこれ以上身内同士言い争う理由はないと考えたのだろう。
ぐっと言葉を飲み込み、ジェナロの指示に従った。
「本当にここから、侵入するのか」
「ええ。人気がなく、司祭の執務室に近い場所へ出られる唯一の抜け穴です」
「司祭を捕らえ、神官へ無条件降伏を持ちかける……」
「ロルティ様は聖女ですので……。聖なる力を使う姿を彼らに見せれば、反発するものはそれほど多くはないはずです」
「うむ。流れはわかった。さっさと終わらせよう」
難色を示していたジェナロは渋々受け入れると、先頭を切って大人1人分が通れる穴の中へと飛び込んでいった。
「ロルティ様」
「うん! 行こう、わんちゃん!」
「わふ!」
小さな穴の中で芋虫のように父親が匍匐前進をしていると考えるだけで、幼子は楽しくて仕方がないのだろう。
ニコニコと笑顔を浮かべ、犬とともに穴の中へと飛び込んで行った。
(これからわたし達は、おとうしゃんに会うんだよね……?)
ワクワクと心を躍らせる幼子には、1つだけ気がかりなことがあった。
この先には、立派な聖女になるための訓練と称して自分を虐げてきた司祭がいるのだ。
(おとうしゃまとカイブルが一緒なら……。きっと大丈夫だよね……?)
1人で養父と立ち向かうなど考えるだけでも恐ろしいが、今は頼りがいのある大人達が一緒だ。
必要以上に恐怖を感じる必要などない。
(できるだけ、楽しいことを考えようっと!)
ロルティは気持ちを切り替えると、抜け穴から神殿内部の床に降り立つ。
あとからやってきたカイブルの姿を確認すると犬の背中へ飛び乗り、進むように命じた。
「わんちゃん! ゴーゴー!」
「わふ?」
ロルティはすっかり忘れていたが、この獣は神殿に初めて足を踏み入れたのだ。
当然司祭と顔を合わせたこともなければ、どこへ進めばいいのかすらもよくわかっていないのだろう。
不思議そうな鳴き声を耳にしてやっと獣が行き先を知らなかったことに気づいたロルティは、犬を労るように優しく背中を撫でつけた。
「ご、ごめんね。わんちゃん……」
「わふっ」
「案内は私に、お任せください」
「うん! よろしくね、カイブル!」
獣が「気にしてないよ」と鳴き声を上げれば、見かねた護衛騎士が率先して先頭を歩き司祭の元へ導いてくれる。
ロルティはありがたくその申し出を受け入れ、廊下を歩く。
「準備はよろしいですか」
「ああ」
ロルティが追放処分を言い渡された大広間は、迷いの森に繋がる抜け穴から50mほど先の場所にあった。
ジェナロに問いかけ同意を得た彼は、すぐさま勢いよくドアノブを捻り――室内へと侵入する。
「……あれ?」
ロルティが不思議そうな声を出すのも無理はない。
なぜならそこは、もぬけの殻だったからだ。
「カイブル。いないよ……?」
「地下に潜っているのでしょう」
「悪人にありがちな展開だな」
「少々お待ちください。隠し通路を出現させますので……」
カイブルは慣れた手付きでレンガ造りの壁を何箇所か叩いて軽快な音を奏でると、中央に置かれていた女神像が音を立てて動く。
そして、地下に繋がる階段が姿を見せた。
これにロルティは大興奮。
瞳をキラキラと輝かせ、カイブルを見つめた。
「すごーい!」
「参りましょう」
彼女に褒められても顔色1つ変えずに唇を引き結んだ彼は、迷いのない動作で階段を下り始めた。
「わふっ。わふーん」
「かこん、かつん、たたーん」
カツカツと階段を下る際に聞こえる独特な音に合わせて、ロルティと犬のハーモニーが奏でられる。
幼子は薄暗く狭い場所が、嫌いではないようだ。
「ご機嫌だな」
「うん! だっておとうしゃまとカイブルが、おとうしゃんを、やっつけてくれるんでしょ!」
「……父、だと?」
愛娘が司祭のことを父と呼んだことに、血の繋がった実父であるジェナロは怒りをいだいているようだ。
明らかに不機嫌そうな声を耳にしたロルティは、自分が間違っていないことを証明するためにカイブルに問いかける。
「ふん。俺が四方八方を囲まれた程度で、命を奪われる男だとでも思っているのか?」
「閣下であれば全員を退けるのは簡単でしょうが、ロルティ様を守りながらですとやはり……」
「俺の愛娘を足手纏い呼ばわりとは……。いい度胸だな」
「私と閣下が今ここで言い争いを繰り広げる必要は、あるのでしょうか」
じっと黙って一触触発な空気で会話を聞き続けていたロルティは、元気よくカイブルの質問に答えた。
「ないよ!」
「そうか。では、無駄な言い争いは止め、現実的な話をしよう」
愛娘の言葉を耳にした父親は、先程までカイブルと言い争っていたのが嘘のように真面目な表情で話題を変えた。
護衛騎士は何か言いたげにジト目で彼を見つめていたが、幼子の前でこれ以上身内同士言い争う理由はないと考えたのだろう。
ぐっと言葉を飲み込み、ジェナロの指示に従った。
「本当にここから、侵入するのか」
「ええ。人気がなく、司祭の執務室に近い場所へ出られる唯一の抜け穴です」
「司祭を捕らえ、神官へ無条件降伏を持ちかける……」
「ロルティ様は聖女ですので……。聖なる力を使う姿を彼らに見せれば、反発するものはそれほど多くはないはずです」
「うむ。流れはわかった。さっさと終わらせよう」
難色を示していたジェナロは渋々受け入れると、先頭を切って大人1人分が通れる穴の中へと飛び込んでいった。
「ロルティ様」
「うん! 行こう、わんちゃん!」
「わふ!」
小さな穴の中で芋虫のように父親が匍匐前進をしていると考えるだけで、幼子は楽しくて仕方がないのだろう。
ニコニコと笑顔を浮かべ、犬とともに穴の中へと飛び込んで行った。
(これからわたし達は、おとうしゃんに会うんだよね……?)
ワクワクと心を躍らせる幼子には、1つだけ気がかりなことがあった。
この先には、立派な聖女になるための訓練と称して自分を虐げてきた司祭がいるのだ。
(おとうしゃまとカイブルが一緒なら……。きっと大丈夫だよね……?)
1人で養父と立ち向かうなど考えるだけでも恐ろしいが、今は頼りがいのある大人達が一緒だ。
必要以上に恐怖を感じる必要などない。
(できるだけ、楽しいことを考えようっと!)
ロルティは気持ちを切り替えると、抜け穴から神殿内部の床に降り立つ。
あとからやってきたカイブルの姿を確認すると犬の背中へ飛び乗り、進むように命じた。
「わんちゃん! ゴーゴー!」
「わふ?」
ロルティはすっかり忘れていたが、この獣は神殿に初めて足を踏み入れたのだ。
当然司祭と顔を合わせたこともなければ、どこへ進めばいいのかすらもよくわかっていないのだろう。
不思議そうな鳴き声を耳にしてやっと獣が行き先を知らなかったことに気づいたロルティは、犬を労るように優しく背中を撫でつけた。
「ご、ごめんね。わんちゃん……」
「わふっ」
「案内は私に、お任せください」
「うん! よろしくね、カイブル!」
獣が「気にしてないよ」と鳴き声を上げれば、見かねた護衛騎士が率先して先頭を歩き司祭の元へ導いてくれる。
ロルティはありがたくその申し出を受け入れ、廊下を歩く。
「準備はよろしいですか」
「ああ」
ロルティが追放処分を言い渡された大広間は、迷いの森に繋がる抜け穴から50mほど先の場所にあった。
ジェナロに問いかけ同意を得た彼は、すぐさま勢いよくドアノブを捻り――室内へと侵入する。
「……あれ?」
ロルティが不思議そうな声を出すのも無理はない。
なぜならそこは、もぬけの殻だったからだ。
「カイブル。いないよ……?」
「地下に潜っているのでしょう」
「悪人にありがちな展開だな」
「少々お待ちください。隠し通路を出現させますので……」
カイブルは慣れた手付きでレンガ造りの壁を何箇所か叩いて軽快な音を奏でると、中央に置かれていた女神像が音を立てて動く。
そして、地下に繋がる階段が姿を見せた。
これにロルティは大興奮。
瞳をキラキラと輝かせ、カイブルを見つめた。
「すごーい!」
「参りましょう」
彼女に褒められても顔色1つ変えずに唇を引き結んだ彼は、迷いのない動作で階段を下り始めた。
「わふっ。わふーん」
「かこん、かつん、たたーん」
カツカツと階段を下る際に聞こえる独特な音に合わせて、ロルティと犬のハーモニーが奏でられる。
幼子は薄暗く狭い場所が、嫌いではないようだ。
「ご機嫌だな」
「うん! だっておとうしゃまとカイブルが、おとうしゃんを、やっつけてくれるんでしょ!」
「……父、だと?」
愛娘が司祭のことを父と呼んだことに、血の繋がった実父であるジェナロは怒りをいだいているようだ。
明らかに不機嫌そうな声を耳にしたロルティは、自分が間違っていないことを証明するためにカイブルに問いかける。
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