転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠

文字の大きさ
66 / 93
10・公爵の愛娘、悪徳養父を成敗する

姉妹・2

「な、なんでみんな……! その子の味方なの……? 誰からも愛されるべき聖女は、あたしなのに!」
「黙れ! 貴様の置かれている状況など、どうでもいい。俺の愛娘に牙を向けた。それだけで、万死に値する!」
「ちょっと待ってよ……! こんなところで殺すくらいなら、あたしを日本に返して!」

 先程までロルティに向け、強い殺意を向けていた姿はどこへやら。
 彼女は自分こそが被害者だと声高らかに宣言し、男性陣の同情を引く。

「あたしは神官の勝手な事情で、異世界に召喚されたの! 聖女様ってみんなが崇めるから! 仕方なく、望まれる通りに振る舞っていただけ……!」

 そうして彼女は、父親へ縋りつこうと試みる。
 カイブルに嫌われているなら、ジェナロに迫ればいいと考えてのことだったのかもしれない。
 だが――それをロルティが許すはずがなかった。

「おとうしゃまに近づかないで!」

 父親の危機を悟った娘は、声を張り上げてキララを威嚇した。
 すると彼女は、表情を歪めて幼子に問いかける。

「あたしの邪魔ばっかりして、楽しい?」
「おねえしゃんは、いつもそう……。自分がかわいそうな人だって言うけど。わたしは加害者にしか、見えないよ……」
「なんですって!?」
「わたし、知ってるもん。おねえしゃんが、悪い人だって」
「ああ。貴様が悪人なのは、誰がどう見ても明らかだ。大人しく抵抗を止めれば、命までは奪わん」

 愛する愛娘を援護するように、父親はキララに厳しい声を投げかけたが──。
 ロルティが言いたいのは、現時点での話ではなかった。

  (これを口にしたら、おとうしゃまやおにいしゃまから嫌われてしまうかもしれない……)

 幼子はそれが、恐ろしくて堪らなかった。
 しかし──。

  (怖がっているだけでは、駄目だよね)

 何度目かわからぬ決意を翡翠の瞳に秘めたロルティは、前世の悔いを精算するため――勇気を出して、キララの秘密を暴露する。

「元の世界に帰ったところで、おねえしゃんに居場所なんてないでしょ?」
「一体、何を根拠に……!」
「わたし、知ってるよ。だっておねえしゃんは、大嫌いな妹を……見殺しにしたんだもん」
「な……!」

 先程までは髪を振り乱しながら激昂していたはずのキララが、顔面蒼白に変化する。
 その時点で、図星をつかれたのは明らかだ。
 ロルティはできるだけ冷静でいるように務め、淡々と言葉を紡ぐ。

「おねえしゃんの妹は、信じてたんだよ。言うことを素直に聞けば、仲良しになれるって」
「うるさい……!」
「置き去りにされても、ずっと待ってた。おねえしゃんが、大好きだったから」
「黙りなさいよ!」

 何度大声で怒鳴りつけられても、言葉を止めるつもりはなかった。
 話の途中で中断したら、決意を胸に秘密を打ち明けた意味がなかったからだ。
 ロルティはどこか寂しそうに眉を伏せると、彼女に問いかける。

「だけど……。おねえしゃんは、戻って来なかった。それをなかったことにして、自分だけが幸せになろうとするんて……おかしいよね?」
「なんであんたが、知ってるの!?」
「だってわたし、瑠衣だもん」

 幼子の口からあり得ない言葉が飛び出してきた直後――キララは呆然と、幼子を凝視する。
 命を落としたはずの妹とロルティの姿を目にして、共通点を探しているのだろう。

 だが、それは無駄でしかない。
 ロルティと瑠衣の共通点は、魂だけだ。
 それ以外の要素は、似ても似つかないのだから……。

「う、嘘よ……! そんな、漫画みたいな話……!」
「わたしはずっと、覚えているよ。生まれ変わっても、何度だって。一生、忘れない」
「まさか、あたしに復讐しようって言うの!? 子どもに、何ができるっていうのよ!」

 年端もいかない子どもの抵抗など、高が知れている。
 今まではそうやって油断していたのだろうが、ロルティはもう1人ではなかった。

「──ロルティはたしかに、何も出来ないかもしれんが……。そのために、俺達がいるんだ」

 愛娘の危機を救うため、低い声で宣言したジェナロがキララの喉元へ剣の切っ先を向けた。

  (あとはわたしがおねえしゃんを、日本へ戻してあげればいいだけ……)

 神獣に跨ったままのロルティは胸元で両手を組み、祈りを捧げようとしたが――それは叶わない。

「聖女様!」

 騒ぎを聞きつけた神官達が大勢、聖女の自室に押しかけてきたからだ。

「面倒なことになったな……」

 その姿を目にしたジェナロが呟いた言葉を耳にして、ロルティは困惑の色を隠せなかった。

  (もう少しで、お姉ちゃんに罰を与えられるところだったのに……)

 神官達の話す内容を耳にしたロルティは、すぐさま状況を把握した。
  
「キララ様は聖女ではないのか?」
「ならば、本物の聖女は誰だ」
「聖女見習いが本物のわけが……」
「それが事実であれば、大変なことになるぞ」
「今まで我らは、崇めるべき聖女様を始末しようとしていたのか……?」

 彼らはキララの叫びを聞き、異世界からやってきた聖女が偽物だと認識したようだ。
 事の重要さに気づいた神官たちはヒソヒソと言葉を交わし合いながら、ある1つの答えにたどり着く。

あなたにおすすめの小説

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

追放された聖女は、辺境で狼(もふもふ)とカフェを開く

橘 あやめ
ファンタジー
――もう黙らない。追放された聖女は、もふもふの白狼と温かい居場所を見つける―― 十二年間、大聖堂で祈り続けた。 病人を癒し、呪いを祓い、飢饉のときは畑に恵みの光を降ろす。 その全てを、妹の嘘泣きひとつで奪われた。 献金横領の濡れ衣を着せられ、聖女の座を追われたアーシャ。 荷物は革鞄ひとつ。行く宛てもない。 たどり着いた辺境の町で、アーシャは小さなハーブティーのカフェを開くことに。 看板は小枝の炭で手作り。 焼き菓子は四度目でようやく成功。 常連もできて、少しずつ「自分の居場所」が生まれていく――。 そんなカフェに夜ごと現れるのは、月光のように美しい銀色の狼。 もふもふで、不愛想で、でも何かとアーシャのことを助けてくれる。 やがて、穏やかな日々を壊しに――妹が現れる。 ※追放聖女のカフェ開業もの(もふもふつき)です!ハッピーエンド!

一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません

師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。 王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。 人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。 けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。 もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。 そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。 そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。 一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。 リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。 そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。 人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。 怖い。近づきたくない。 それでも、その腕の中でしか眠れない。 またあの冬が来る。 また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。 今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。 一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。 小説家になろう様でも掲載中

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!