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【番外編2】小話
公爵家の愛娘は翌日、雪合戦をする(後編)
「やったな!」
「集中砲火だ! やれ! カイブル!」
鍛錬場では降り積もった雪を小さく丸めて放つ、雪合戦が行われている。
護衛騎士は仲間達の後押しを受け、勢いよく敵チームに向かって雪玉を投げた。
それは相手に当たり、男性は呻き声を上げて倒れる。
「わぁ……!」
鍛え抜かれた戦士達による本気の雪合戦に幼子が混ざれば、一溜りもないとわかっていても――ロルティはワクワクとした気持ちを抑えきれない。
「おかあしゃま! おにいしゃま! わたしも! やりたい!」
「あれを……?」
「うん! 絶対、楽しいよ!」
「うーん……」
妹の提案を受けた兄は、珍しく難色を示している。
ロルティにはそれがなぜか、よくわからない。
だからこそ、その場にしゃがみ込んでさっそく行動に出た。
「冷た~い!」
土の上に降り積もる雪は両手で掬っただけでも手の感覚がなくなってしまうほどに冷たかった。
しかし、それに怯えてはいつまで経っても攻撃が成功しない。
少女は雪玉を作るのは諦め、勢いよく粉雪を掴んでジュロドへ向かって投げつけた。
「わ……っ。ロルティ……! そんな、水みたいに……!」
「きゃー!」
箸が転んでもおかしい状態の幼子は、嬉しそうな声を上げて喜んだ。
それを目にした2匹の神獣達もまた、小さな手足を使ってジュロドに雪をかける。
「むきゅ……」
「わふーん!」
「なんで僕だけを、攻撃してくるんだ!? ほかにもいるだろ!?」
最愛の妹だけに雪をぶつけられるのは笑って許せても、神獣達もとなれば黙ってはいられなかったようだ。
ジュロドは逆ギレと思しき発言をしたあと、彼らに向かって勢いよく雪をぶち撒ける。
「あらあら……」
その様子をくすくすと上品に笑い声を上げながら、ルティアーナが見つめていた。
「おい! カイブル! どこにいくんだよ!」
「あとはみなさんに、お任せいたします」
「そりゃないぜ!」
護衛騎士は室内にいたはずのロルティが姿を見せたことに気づき、もの凄い勢いで飛び交う雪玉を危なげなく避け、訓練場を抜け出る。
その後成り行きを見守っていたジェナロと合流した彼は、何を思ったのか足元にしゃがみ――小さな雪玉を作ると、それを兄に向かって投げつけた。
「うわぁっ」
「カイブル!?」
ロルティは慌てて悲鳴を上げたジュロドに雪を振り注ぐのを止め、護衛騎士を見つめる。
また喧嘩になるのではと恐れたからだ。
「やったな……!」
しかし――幼子が恐れていた事態は起きなかった。
兄は受けて立つとばかりに両手を使って雪玉を作り、カイブルに攻撃をしかけたからだ。
2人と2匹の神獣は、楽しそうに遊び始める。
「カイブルはジュロドと一緒にいるほうが、年相応に見えるな」
「アカイム卿は、必要以上に大人で居続けようとするのが癖になっているものね……」
その様子を優しい瞳で見守る夫婦の元へ、ロルティは雪をかき分けて向かった。
「おとうしゃま! おかあしゃま!」
「ロルティ。寒くはないか」
「うん! おにいしゃまのぬくもりと、おかあしゃまがくれたお洋服のおかげ!」
「よかったな」
「うん!」
先程まで近寄りがたい雰囲気を醸し出して雪合戦を眺めていたとは思えぬ程の変わりように驚きながら、ロルティは両親と微笑み合う。
ジェナロは幼子が寒さで震えないように、愛娘を優しく抱き上げた。
(寒いのは嫌だなぁって、ずっと思ってた。でも……)
雪が降り積もれば、憂鬱な日も楽しいひとときへ変わる。
それは心から信頼し合える家族や仲間達と一緒に、いろんなことを経験できるからだ。
(こう言うのも、たまにはいいよね!)
ロルティは満面の笑みを浮かべて、家族みんなで楽しいひとときを過ごした――。
「集中砲火だ! やれ! カイブル!」
鍛錬場では降り積もった雪を小さく丸めて放つ、雪合戦が行われている。
護衛騎士は仲間達の後押しを受け、勢いよく敵チームに向かって雪玉を投げた。
それは相手に当たり、男性は呻き声を上げて倒れる。
「わぁ……!」
鍛え抜かれた戦士達による本気の雪合戦に幼子が混ざれば、一溜りもないとわかっていても――ロルティはワクワクとした気持ちを抑えきれない。
「おかあしゃま! おにいしゃま! わたしも! やりたい!」
「あれを……?」
「うん! 絶対、楽しいよ!」
「うーん……」
妹の提案を受けた兄は、珍しく難色を示している。
ロルティにはそれがなぜか、よくわからない。
だからこそ、その場にしゃがみ込んでさっそく行動に出た。
「冷た~い!」
土の上に降り積もる雪は両手で掬っただけでも手の感覚がなくなってしまうほどに冷たかった。
しかし、それに怯えてはいつまで経っても攻撃が成功しない。
少女は雪玉を作るのは諦め、勢いよく粉雪を掴んでジュロドへ向かって投げつけた。
「わ……っ。ロルティ……! そんな、水みたいに……!」
「きゃー!」
箸が転んでもおかしい状態の幼子は、嬉しそうな声を上げて喜んだ。
それを目にした2匹の神獣達もまた、小さな手足を使ってジュロドに雪をかける。
「むきゅ……」
「わふーん!」
「なんで僕だけを、攻撃してくるんだ!? ほかにもいるだろ!?」
最愛の妹だけに雪をぶつけられるのは笑って許せても、神獣達もとなれば黙ってはいられなかったようだ。
ジュロドは逆ギレと思しき発言をしたあと、彼らに向かって勢いよく雪をぶち撒ける。
「あらあら……」
その様子をくすくすと上品に笑い声を上げながら、ルティアーナが見つめていた。
「おい! カイブル! どこにいくんだよ!」
「あとはみなさんに、お任せいたします」
「そりゃないぜ!」
護衛騎士は室内にいたはずのロルティが姿を見せたことに気づき、もの凄い勢いで飛び交う雪玉を危なげなく避け、訓練場を抜け出る。
その後成り行きを見守っていたジェナロと合流した彼は、何を思ったのか足元にしゃがみ――小さな雪玉を作ると、それを兄に向かって投げつけた。
「うわぁっ」
「カイブル!?」
ロルティは慌てて悲鳴を上げたジュロドに雪を振り注ぐのを止め、護衛騎士を見つめる。
また喧嘩になるのではと恐れたからだ。
「やったな……!」
しかし――幼子が恐れていた事態は起きなかった。
兄は受けて立つとばかりに両手を使って雪玉を作り、カイブルに攻撃をしかけたからだ。
2人と2匹の神獣は、楽しそうに遊び始める。
「カイブルはジュロドと一緒にいるほうが、年相応に見えるな」
「アカイム卿は、必要以上に大人で居続けようとするのが癖になっているものね……」
その様子を優しい瞳で見守る夫婦の元へ、ロルティは雪をかき分けて向かった。
「おとうしゃま! おかあしゃま!」
「ロルティ。寒くはないか」
「うん! おにいしゃまのぬくもりと、おかあしゃまがくれたお洋服のおかげ!」
「よかったな」
「うん!」
先程まで近寄りがたい雰囲気を醸し出して雪合戦を眺めていたとは思えぬ程の変わりように驚きながら、ロルティは両親と微笑み合う。
ジェナロは幼子が寒さで震えないように、愛娘を優しく抱き上げた。
(寒いのは嫌だなぁって、ずっと思ってた。でも……)
雪が降り積もれば、憂鬱な日も楽しいひとときへ変わる。
それは心から信頼し合える家族や仲間達と一緒に、いろんなことを経験できるからだ。
(こう言うのも、たまにはいいよね!)
ロルティは満面の笑みを浮かべて、家族みんなで楽しいひとときを過ごした――。
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