憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットから一途に溺愛される~

桜城恋詠

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許嫁と過ごす日々

初夜で愛を交わし合い

「正式な発表をする前に、相手が俺であると伝えるのは避けたいだろう。それは告げなくても構わないが――気をつけろ。誰かのものになった女性ほど、手に入れたがる不届き者は多いからな」
「……不倫のお誘いを受けるかもしれないの?」
「ああ。千晴は俺が見初めた、麗しき女性だからな。誰かのものになったと知った男は、自分のほうがふさわしいと立候補しかねないだろう」
「LMMの娘だと露呈したあとなら、金目当ての不届き者が声をかけてくるかもしれないけれど……」

 複数の男を手玉に取れるほど、魅力があるとは思えない。
 杞憂だと私が告げても、航晴は安心できないみたいね。

「仕事中は絶対に指輪を外すな」

 彼から怖い顔で何度も厳命された私は、頷くしかなかった。

 
  
 結婚初夜は、甘く

「結婚おめでとう」

 ――十月上旬。
 オーダーメイドの結婚指輪は急ピッチで作成が進められ、私達はオーベルジュで挙式を上げた。

 両親は涙ぐみながら私のウエディングドレス姿を激写しては、近隣に暮らす著名人達に紹介して回る。

 CAとして培った作り笑顔を全面に押し出し、どうにか来賓の皆様に不快感を与えることなく式を終えた。

「お疲れ様」
「お母さん……」
「航晴くんと、ゆっくり休みなさい」
「……ありがとう」

 控室にやってきたお母さんは、労りの言葉をかけてくれる。

 笑顔でお礼を言えば――彼女の背中に大きな身体を隠すような姿勢で、キャプテンが申し訳無さそうに肩を落としている姿が見えた。

「千晴」

 この人が生みの親なのは間違いない。
 いい加減認めてあげなければ、かわいそうだ。

 そろそろいいんじゃないかと、航晴には何度か諭されているけれど……。

 私がLMMの娘であると明らかになる直前――あの人は不眠症であると診断を受け、パイロットとして操縦桿を握れなくなってしまった。

 お母さんとのんびり穏やかな生活をしながら社長業に専念しているうちに、だいぶ症状は改善されたようだけれど……。
 ストレスの元が断絶されない限り、完治は難しいと言われている。

 キャプテンがストレスを感じていたのは、愛する妻と子を捨て、LMMを担う後継者としての道を選び取った事実。
 私はそれが許せなくて、ずっと父と呼べないでいたのだが――。

 いつまでも、意地を張ってはいられない。
 覚悟を決めた私は、呆れた表情とともにあの人へ告げた。

「航晴はあなたのことを、プライベートではこれからお義父さんと呼ぶみたいだから……」
「あ、ああ……」
「……お父さんって、呼んであげてもいいわよ」

 少しそっけない態度になってしまったが……。
 あの人にとっては、何十年と待ち望んでいた言葉だもの。

 きっとその呼び名だけでも、満足だったのでしょうね。
 彼はひと目を憚らずに涙を流しながら、私に四角いプレゼントボックスを手渡してきた。

「結婚おめでとう、千晴……。父親として、幼少期を一緒には過ごせなかったが……これからは、あの時してやれなかった分だけ、愛を注ぐと……」
「必要ないわ。人肌恋しいときは、航晴を頼るから」
「そんな……!」

 泣き崩れたお父さんを慰めるのは、お母さんの役目だ。
 付き合っていられないと肩を竦め、航晴を連れて控室を出た。
  
 *

「はぁ……疲れた……」

 私達夫婦は両親と別れ、オーベルジュで挙式を終えた夫婦だけが宿泊可能な特別室でくつろぐ。
 ソファーの背もたれに寄りかかってため息を溢せば、隣に座って腰に手を伸ばしてきた航晴が話しかけてきた。

「顔合わせをした時に訪れた際は、露天風呂を堪能する時間もなかっただろう」
「そうね」
「一緒に入るか」

 航晴から提案されたことを話半分に聞いていた私は、どこで何をするのかを考える。

 客室には天蓋つきのキングサイズベッドがあるけれど、ここを二人で使う際は〝共に寝よう〟が誘い文句としては正解だろう。

 入るかと称される場所は、一つしかなくて――。

「べ、別々に身を清めるわ!」
「そうか。それは、今後に期待しよう」
「そんな機会は、訪れないわよ!?」
「どうだかな……」

 含みのある笑みを浮かべて、機会があれば実現したそうな空気を醸し出さないでほしい。
 一緒に露天風呂へ入りたいってことは……いろいろな意味が隠されているものね……?

「顔が赤いぞ」
「し、指摘しないで……っ!」
「かわいいな」
「もう、知らない!」

 航晴を喜ばせる結果となってしまい、私は慌てて両親が新婚祝いとしてプレゼントしてくれた入浴セットを手にとって露天風呂へ引っ込んだ。


 ――入浴したあとに、中身を確認してねと言われたけれど……。

 水気を拭ったタオルを巻いて身体を隠した私は恐る恐る、四角い箱を開封した。

「な……っ!」

 一瞬口から出た悲鳴をどうにか気合で飲み込み、箱から出てきた衣服を凝視する。

 これは……。
 セクシーランジェリー……?

 胸元に七色の蝶を象ったブラジャーに、フリルスカートと一体化した白のショーツ。水着だと思えば……どうにか彼の前へ身に着けて姿を晒せるかしら。

 全裸にタオル一枚か、両親からプレゼントされた下着を身につけ、旦那様の前に姿を見せるか……。
 究極の二択ね……。

 できればどちらも、選択したくない。
 そう結論づけた私は最終的に三つ目の選択肢を選び取り、身支度を整えると航晴の前に姿を現した。
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