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その後の天倉夫妻
愛の結晶 2
「どう言うことだ」
「三木副操縦士! お、落ち着いてください! お嬢様は今、お休み中で……!」
「叩き起こせばいい」
「だ、駄目です! 乱暴なことだけは! 大事な時期なんですから……!」
「――何を言っている」
倉橋と航晴の、揉めている声が遠くで聞こえる……。
ゆっくりと意識を覚醒させれば。
彼女の静止を振り切ってソファーで眠る私の元へ、大股開きで苛立った様子の彼が顔を見せた。
「航晴……。お帰りなさい……」
「俺は離婚などしないぞ」
挨拶よりも真っ先に飛び出したのが、倉橋の想像していた通りの言葉で、私は面食らってしまう。
そんなこと、ある?
目を丸くした私を抱き潰すんじゃないかと思うくらいに強い力で引き寄せた彼は、無言で秘所へ手を伸ばす。
『妊娠初期は流産の危険性があるので、性行為は控えてください』
女医から言われた言葉を思い出した私は、慌てて航晴の手首を掴んだ。
「駄目……!」
「俺を拒絶するほど、離婚したいのか……」
「違うの! 聞いて!」
「必死になるほど……」
「できちゃったの!」
やばい。ヤられる。
唇を塞ぎながら花園を弄るのは、航晴の常套手段だ。
危機感を募らせた私は、もっとストレートに言わなきゃ伝わらないだろうと思うような言葉を叫ぶと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする彼に、小さな声で告げる。
「その……。今日、産婦人科医に見てもらって……。妊娠5週目だって……」
「俺と千晴の、子どもが……?」
「うん。だから……」
「ああ……っ! 夢のようだ……!」
私の腹部を優しく撫でつけた彼は、普段の仏頂面が嘘のように妊娠を喜んでくれた。そんなことある?
「男児ならば俺の名を、女児ならば千晴の一字を取って名づけたいと、ずっと考えていた……!」
「男の子なら航で、女の子なら千?」
「いや。晴の字だ」
「あ、そう……」
まぁ、そうよね。千なんて、古風な名前になりそうだし。
晴なら、二人の一字を取ることになる。異論はないけど……。
「まだ、気が早いから……」
「復職は、ある程度子どもが大きくなってからにしよう」
「うん。そのつもりだけど……」
「子育てが大変なら、俺も休職する」
「それはやめて! 航晴は、立派な機長になることだけを考えて」
「しかし……」
「じゃなきゃ離婚」
「わかった」
この脅し文句は、悪くないかも。
彼は先程までの獰猛さが嘘のように大人しくなると、急に狼狽え始めた。身体は冷やさない方がいいとか。そんな感じ。
「大袈裟よ」
「千晴に何かあれば、俺は生きていけない。これくらいは、させてくれ」
「だから……」
私の言葉なんて、聞く耳など持ちやしない。
まぁ、それだけ愛されてるって思えば、悪くはないのかも。
「早く、産まれてくる子に会いたいな……」
まだ宿ったばかりなのに、気が早すぎるってば。
私は航晴のぬくもりを感じながら、彼の背中に腕を回した。
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