19 / 21
第二章 プレイヤー
19話 魔神の苦悩2
しおりを挟む
シグマは即座に魔法を発動させる。
それは無詠唱と呼ばれる高等技術のはずだが、今の彼女のスペックを以てして習得不可能な技術は皆無だ。
使用された魔法は『視覚強化』と『聴覚強化』。
情報と言うものは別に指揮官だけの特権でもメリットでもない。戦場の兵士だって情報の大小によって戦況を大きく変化させる事が出来る。彼女がそれを知らない筈もない。
先ほどまで小さな点のような何かしか見えなかった視界も、今はハッキリと細線部も見通せる。
そこには三人のプレイヤーと三体のユニットが見える。
形としては4対2、だがプランターはかなり引いた場所に位置取っている。
その位置からでは接近戦で介入する事は難しいだろう。と言っても、プランターは完全に後衛向きのユニットなのでそれも解らなくはない。
魔法でメイフォンの補助をするつもりなのだろう。
自分はプランターだけに集中していればいい。そうシグマは考える。
彼女の魔法全てをシグマが相殺した場合、戦況は単純な4対1となる。
さすがにこの戦力差で負ける程、ダルムとミコンは弱くない。
『聴覚強化』で声は聞こえないものの、爆発音や魔法をすぐに察知できるように魔法の指向性を調整する。
そうすると3人のプレイヤーのしゃべり声が微かに聞こえた。
(私ならもっと焦ると思うけど、案外メイフォンという男には余裕があるんだな)
楽観的思考という物が、好きではない彼女からすれば、その姿は仲間と二人と同等以上に異質に映った。
そして、戦いが始まる。
速度、パワー、共にメイフォンはそこに居る全プレイヤーよりも高水準だ。
1対1なら、ユニットを含めなければ、彼はこの世界で最強かも知れない。
だが、こちらにはまだ高コストのユニットが何体も残っているし、そもそも1対1で戦うことなど決してするつもりはない。
これだけの勝算があるのだ、負けるはずがない。
メイフォンは二本の短剣を召喚する。
メイフォンのデッキ構築は8割程度は把握している。
あの短剣は『窃盗刀』だろう。
それを二本装備いている。
あれは攻撃対象のステータスを微量ながら奪う効果がある。
だが、それはダルムもミコンも把握している、あの短剣と打ち合う事は避けるはずだ。
と思ったが、ダルムは剣を打ち合った。
シグマは疑問を覚えるが、接近戦闘に関してはダルムは三人の内で最強だろう。
その考えには確実な経験が刻まれている。
打ち合った二本の短剣とダルムの持つ長剣。
通常であれば、いくら耐久力の低い武器であっても一撃で破壊するにはかなりの実力差と質量差と技量の差が無ければならないだろう。
当然、ダルムとメイフォンの間にそこまでの差があるとは思えない。
経験と言う面だけで見れば、千年間という時間の差が出るだろう。
けれど、ステータスの差はそれをひっくり返す。
だが、その絶大なステータスを打ち破ったのは武器の差だった。
ダルムが持つ武器はコスト100の装備型魔法『星王剣・ノヴァ』。そのレベルは当然100であり、スキルは『不滅』が付属している。
メイフォンもクローバーが所持していたデュランダルと打ち合っていたことから似通ったスキルを所持していると思われるが、それでもコスト30の武器と100の武器の性能差は歴然と言っていい。
ダルムのこの世界での道場破りの趣味も無駄ではないのだろう。
短剣は簡単に砕け散った。
盗賊連合クラスのカードはリキャストが短い傾向にあるが、それでも即座に使用できるわけではないし、一撃で壊されるのならば、召喚しても意味はないだろう。
ここまでのリソース合戦は自分たちが圧勝している。シグマはそう考える。
その後は、決め手に欠けるのか、相手の出方をうかがっているのか、自分の身体能力だけでメイフォンは攻撃をしのぐ。
その動きはしなやかであり軽やかだ。
速度の性能がかなり高いのだろう。
『呪法師・カルマ』と『錬剣士・ソリュート』は、早くも戦力外だ。
やはり武装カードを何枚もレベル100で装備しているプレイヤーとは天地の差が存在する。
魔法で援護しようも、魔法の前進速度にメイフォンが追い付いている節がある。
回避は容易だろう。
それでもパワーと体力は共に低いはずなので、一撃でも入ればそれが決め手となるだろう。
ミコンもテンションがどんどん上がっている。精神異常者の病気が完全発症すると、数百人規模で人を殺さなければもとに戻らないのだが、メイフォンを倒せるのならその程度はお釣りがもらえる。
魔法『デーモンソウル』。デッキ内の味方ユニット一体のステータスを自分のステータスに上乗せする。
コストは対象ユニットのコストの5倍。それに加えてレベル分も倍化する。
だが、そのコストに見合う性能はあるのだ。彼女が対象に選んだのは、コスト100ユニット『王鬼・コクロウ』。
現在、彼女はレベル200相当の能力を手に入れている事になる。
それもコストは80相当のだ。
その合計ステータスは80万相当。
彼女が殴りつけるだけで暴風が発生する。
その拳に込められたエネルギーは、殴りつけた地面に蜘蛛の巣状の亀裂を生みだした。
その破壊力はシグマの位置にまで震度6以上にはなるだろう振動を運んだ。
戦況は単純明快。
メイフォンはダルムとミコンを傷つける術を持たず、こちらの攻撃は一撃でメイフォンの体力を0にできるような性能を誇っている。
「勝ち確、キタコレ」
思わず、そんな言葉が漏れる。
だがその瞬間、忘れていた事を思い出したように、1つの疑問が浮上した。
(プランターは何故何もしない?……)
プランターからすれば、戦況がよくないことなど見ていれば解る事だろう。
なのに補助も攻撃も救出もしない。
何故?
だが、シグマはそれに回答できる答えを見つけてしまう。
それを確かな物にするべく、彼女は魔法を放つ。
「究極魔術・流星!!」
前方上空の空が赤く光る。
雲が拡散するように、周囲に散る。
その中心からは巨大な岩が幾つも顔を見せる。
「多重究極魔術・超光線」
シグマの魔法に呼応するように、隕石に向けてプランターの魔法が炸裂する。
複数の光線は全ての隕石を打ち抜き、空中で破壊した。
(つまりプランターも私を抑える目的の為に動けないでいる。もしもあの3人の戦いに混ざろうものなら私をフリーにする事につながるから。それならこちらにとっては好都合か)
シグマはそう結論づけた。
戦いは激化していく。
それは無詠唱と呼ばれる高等技術のはずだが、今の彼女のスペックを以てして習得不可能な技術は皆無だ。
使用された魔法は『視覚強化』と『聴覚強化』。
情報と言うものは別に指揮官だけの特権でもメリットでもない。戦場の兵士だって情報の大小によって戦況を大きく変化させる事が出来る。彼女がそれを知らない筈もない。
先ほどまで小さな点のような何かしか見えなかった視界も、今はハッキリと細線部も見通せる。
そこには三人のプレイヤーと三体のユニットが見える。
形としては4対2、だがプランターはかなり引いた場所に位置取っている。
その位置からでは接近戦で介入する事は難しいだろう。と言っても、プランターは完全に後衛向きのユニットなのでそれも解らなくはない。
魔法でメイフォンの補助をするつもりなのだろう。
自分はプランターだけに集中していればいい。そうシグマは考える。
彼女の魔法全てをシグマが相殺した場合、戦況は単純な4対1となる。
さすがにこの戦力差で負ける程、ダルムとミコンは弱くない。
『聴覚強化』で声は聞こえないものの、爆発音や魔法をすぐに察知できるように魔法の指向性を調整する。
そうすると3人のプレイヤーのしゃべり声が微かに聞こえた。
(私ならもっと焦ると思うけど、案外メイフォンという男には余裕があるんだな)
楽観的思考という物が、好きではない彼女からすれば、その姿は仲間と二人と同等以上に異質に映った。
そして、戦いが始まる。
速度、パワー、共にメイフォンはそこに居る全プレイヤーよりも高水準だ。
1対1なら、ユニットを含めなければ、彼はこの世界で最強かも知れない。
だが、こちらにはまだ高コストのユニットが何体も残っているし、そもそも1対1で戦うことなど決してするつもりはない。
これだけの勝算があるのだ、負けるはずがない。
メイフォンは二本の短剣を召喚する。
メイフォンのデッキ構築は8割程度は把握している。
あの短剣は『窃盗刀』だろう。
それを二本装備いている。
あれは攻撃対象のステータスを微量ながら奪う効果がある。
だが、それはダルムもミコンも把握している、あの短剣と打ち合う事は避けるはずだ。
と思ったが、ダルムは剣を打ち合った。
シグマは疑問を覚えるが、接近戦闘に関してはダルムは三人の内で最強だろう。
その考えには確実な経験が刻まれている。
打ち合った二本の短剣とダルムの持つ長剣。
通常であれば、いくら耐久力の低い武器であっても一撃で破壊するにはかなりの実力差と質量差と技量の差が無ければならないだろう。
当然、ダルムとメイフォンの間にそこまでの差があるとは思えない。
経験と言う面だけで見れば、千年間という時間の差が出るだろう。
けれど、ステータスの差はそれをひっくり返す。
だが、その絶大なステータスを打ち破ったのは武器の差だった。
ダルムが持つ武器はコスト100の装備型魔法『星王剣・ノヴァ』。そのレベルは当然100であり、スキルは『不滅』が付属している。
メイフォンもクローバーが所持していたデュランダルと打ち合っていたことから似通ったスキルを所持していると思われるが、それでもコスト30の武器と100の武器の性能差は歴然と言っていい。
ダルムのこの世界での道場破りの趣味も無駄ではないのだろう。
短剣は簡単に砕け散った。
盗賊連合クラスのカードはリキャストが短い傾向にあるが、それでも即座に使用できるわけではないし、一撃で壊されるのならば、召喚しても意味はないだろう。
ここまでのリソース合戦は自分たちが圧勝している。シグマはそう考える。
その後は、決め手に欠けるのか、相手の出方をうかがっているのか、自分の身体能力だけでメイフォンは攻撃をしのぐ。
その動きはしなやかであり軽やかだ。
速度の性能がかなり高いのだろう。
『呪法師・カルマ』と『錬剣士・ソリュート』は、早くも戦力外だ。
やはり武装カードを何枚もレベル100で装備しているプレイヤーとは天地の差が存在する。
魔法で援護しようも、魔法の前進速度にメイフォンが追い付いている節がある。
回避は容易だろう。
それでもパワーと体力は共に低いはずなので、一撃でも入ればそれが決め手となるだろう。
ミコンもテンションがどんどん上がっている。精神異常者の病気が完全発症すると、数百人規模で人を殺さなければもとに戻らないのだが、メイフォンを倒せるのならその程度はお釣りがもらえる。
魔法『デーモンソウル』。デッキ内の味方ユニット一体のステータスを自分のステータスに上乗せする。
コストは対象ユニットのコストの5倍。それに加えてレベル分も倍化する。
だが、そのコストに見合う性能はあるのだ。彼女が対象に選んだのは、コスト100ユニット『王鬼・コクロウ』。
現在、彼女はレベル200相当の能力を手に入れている事になる。
それもコストは80相当のだ。
その合計ステータスは80万相当。
彼女が殴りつけるだけで暴風が発生する。
その拳に込められたエネルギーは、殴りつけた地面に蜘蛛の巣状の亀裂を生みだした。
その破壊力はシグマの位置にまで震度6以上にはなるだろう振動を運んだ。
戦況は単純明快。
メイフォンはダルムとミコンを傷つける術を持たず、こちらの攻撃は一撃でメイフォンの体力を0にできるような性能を誇っている。
「勝ち確、キタコレ」
思わず、そんな言葉が漏れる。
だがその瞬間、忘れていた事を思い出したように、1つの疑問が浮上した。
(プランターは何故何もしない?……)
プランターからすれば、戦況がよくないことなど見ていれば解る事だろう。
なのに補助も攻撃も救出もしない。
何故?
だが、シグマはそれに回答できる答えを見つけてしまう。
それを確かな物にするべく、彼女は魔法を放つ。
「究極魔術・流星!!」
前方上空の空が赤く光る。
雲が拡散するように、周囲に散る。
その中心からは巨大な岩が幾つも顔を見せる。
「多重究極魔術・超光線」
シグマの魔法に呼応するように、隕石に向けてプランターの魔法が炸裂する。
複数の光線は全ての隕石を打ち抜き、空中で破壊した。
(つまりプランターも私を抑える目的の為に動けないでいる。もしもあの3人の戦いに混ざろうものなら私をフリーにする事につながるから。それならこちらにとっては好都合か)
シグマはそう結論づけた。
戦いは激化していく。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる